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【第8回】Copilotのプロンプト設計——精度を上げる5つの原則

貝出康

代表取締役

貝出康

「Copilotに質問したけど、なんか的外れな答えばっかり返ってくるんですよ……」

先日、徳島県内の製造業の社長さんから、こんな相談を受けました。せっかくMicrosoft 365 Copilotを導入したのに、「要約して」「メール書いて」と雑に投げても、期待したものが出てこない。結局、自分で書き直したほうが早いと感じて、使うのをやめてしまった、と。

これ、実はものすごく「あるある」なんですよ。私も最初はそうでした。

でも、ちょっと待ってほしいんです。Copilotが悪いわけでも、あなたのAIリテラシーが低いわけでもありません。たった一つ、「聞き方」を変えるだけで、出てくる答えの精度はびっくりするほど跳ね上がります。しかもこれ、コツさえ掴めば誰でも5分で身につく話なんです。

今回は、M365 Copilotの精度を劇的に上げる「プロンプト設計の5つの原則」について、地方中小企業の現場目線でお話ししていきます。前回まで7回にわたってCopilotの基本機能や導入メリットを解説してきましたが、いよいよ「本番」の使いこなし編に入ります。

そもそも「プロンプト設計」って何?

プロンプトっていう言葉、最近よく聞きますよね。でも、いまいちピンとこない方も多いんじゃないでしょうか。

プロンプトっていうのは、要するに「AIへの指示文」のことです。Copilotに向かって打ち込む、あの文字のことですね。「プロンプトエンジニアリング」とか「プロンプト設計」とか、なんだか難しそうな響きなんですが、中身は意外とシンプルで、「どうやってAIに頼んだら、ちゃんと欲しいものが返ってくるか」を考える技術のことなんです。

ここで大事なのは、Copilotはエスパーじゃない、ってことなんですよ。

たとえば新人の部下に「メール書いといて」とだけ言って、パーフェクトなメールが返ってくると思いますか?思わないですよね。誰宛なのか、何の件なのか、どんなトーンで書くのか、締切はいつか——こういう情報がないと、新人さんは手が止まってしまいます。

Copilotも同じなんです。ただ、ここが面白いところで、Copilotは「M365の中にあるあなたの情報」を全部見られるんですね。過去のメール、Teamsでの会話、OneDriveに保存されたWord・Excel・PowerPoint、予定表、そういったビジネス文脈を踏まえた上で回答を作ってくれる。これがChatGPTと決定的に違うポイントです。

つまりプロンプト設計とは、「この豊富な社内情報を、どう料理してもらうか」を指示する設計図を書くこと。料理で言えば、食材(社内データ)はもうキッチンに揃っている、あとはレシピ(プロンプト)次第で一流フレンチにも家庭料理にもなる、そんなイメージです。

なぜ今、プロンプト設計がめちゃくちゃ重要なのか

「いや、そんな細かい指示を書くくらいなら、自分で書いたほうが早くない?」

わかります。その気持ち、めっちゃわかります。でも、ちょっと驚きのデータを紹介させてください。

株式会社学情の事例なんですが、Copilot導入後わずか3ヶ月で5,004時間の業務時間削減、金額換算で1,305万円のコスト削減を実現しているんです。しかも、アクティブユーザー率は100%。日本製鉄でも、1ヶ月でTeams会議のAIメモは約2万件、メール要約は4,500件、社内ファイル検索は5万回以上活用されていて、年間で数万時間の業務効率化が見込まれています。

なぜここまで差が出るのか。答えはシンプルで、「プロンプトを設計できる人」と「できない人」で、1日あたりの時短効果が10倍以上違うからなんです。

私が現場で見ていても、Copilotを「ちょっと便利な検索ツール」程度にしか使えていない人と、「優秀なアシスタントが一人増えた」レベルで使いこなしている人で、成果物のクオリティも時間も本当に桁違いです。そして、その分水嶺は技術力でもITリテラシーでもなくて、たった一つ——プロンプトの書き方なんですよ。

特に地方の中小企業にとって、これは本当に大きな話です。人手不足で猫の手も借りたい、でも新人を採る余裕もない、育てる時間もない。そんな状況で、「指示の仕方さえ覚えれば、24時間365日働いてくれる超優秀な部下」が手に入るんです。使わない手はないじゃないですか。

しかもMicrosoftは2025年12月から従業員300人以下向けに「Microsoft 365 Copilot Business」を通常版より30%安く提供開始しました。中小企業こそ使ってくれ、という明確なメッセージです。この波に乗らない理由が、私には見当たりません。

具体的にどう使うか——精度を上げる5つの原則

さて、本題です。私がお客様企業へのCopilot導入支援の中で試行錯誤を重ね、実際に効果が出ている「Copilotプロンプト設計の5つの原則」を一気にお伝えします。

原則1:ゴール(目標)を最初に明示する

一番大事なやつです。「何を、誰のために、何のために作るのか」を最初に書く。これだけで精度は2倍変わります。

ダメな例:

議事録まとめて

良い例:

昨日のTeams会議「新工場建設プロジェクト定例」の議事録を、役員会で報告するために要約してください。決定事項と次回までの宿題が一目でわかる形にしてください。

見てください、この差。後者はCopilotが「あ、役員向けなんだな、じゃあ決定事項を上に持ってこよう」「宿題は担当者と期限をセットで書こう」と判断できるんです。

原則2:コンテキスト(背景・文脈)を渡す

これ、意外と知られてないんですが、Copilotは社内情報にアクセスできるとはいえ、「どの情報を重視すべきか」は教えてあげないとわからないんです。

添付の見積書と、先週「山田商事様」とやり取りしたメールスレッドを参考に、フォローアップメールを作成してください。先方は価格に難色を示しているので、値引き以外の価値(納期短縮、保守サポート)で魅力を伝えたい。

こんなふうに、参照すべき情報源と、相手の状況、こちらの戦略まで書くと、Copilotは本当にちゃんと「空気を読んだ」メールを書いてくれます。

原則3:アウトプット形式を具体的に指定する

「どんな形で出してほしいか」を書かないと、Copilotは無難な文章形式で返してきます。でも、表のほうが伝わる場面、箇条書きのほうが整理しやすい場面、ってあるじゃないですか。

以下の条件で出力してください:
– 冒頭3行で全体サマリー
– 中段に「決定事項」「議論事項」「宿題」の3つに分けた表
– 末尾に次回アクションを箇条書き5つ以内
– 全体でA4用紙1枚に収まる分量

ここまで書くと、もはやフォーマットの奴隷から解放されます。Copilotに頼んで、あとは微調整するだけ。

原則4:役割(ペルソナ)を与える

「あなたは○○です」と役割を付与するテクニック、これは本当に効きます。人事部長なのか、営業のエース社員なのか、社外に出す広報担当なのかで、同じ情報でも語り口がガラッと変わる。

あなたは徳島の老舗和三盆メーカーの三代目女将です。観光客向けInstagramに投稿する、和三盆干菓子の紹介文を書いてください。方言は使わず、丁寧だけど親しみのある語り口で。

これで、「ただの商品説明」が「読んで買いたくなる投稿文」に化けます。不思議なもので、役割を与えるだけで、Copilotの中の「物差し」が切り替わるんですよね。

原則5:対話を重ねて磨き上げる

最後にして最重要。1回目で完璧な答えが出ることは、ほぼありません。大事なのは、「ちょっと違うな」と思ったときに、すぐ追加指示を出すこと。

いま出してくれた文章、もう少しカジュアルに。あと専門用語「DX」を中学生でもわかる言葉に置き換えて。文字数は半分に。

こうやって3〜5回やり取りすると、自分の頭の中にあった理想像に、ぐっと近づいてきます。Copilotは対話型のパートナーなんです。「一発で完璧」を求めるのではなく、「壁打ち相手」として使う。この意識転換が、実は一番効きます。

よくある誤解・つまずきポイント

ここまで原則を紹介してきて、「よし、やってみよう!」と思ってくれた方、ありがとうございます。でも、ここで先回りして、みんながハマる落とし穴を3つお伝えしておきます。

誤解1:「プロンプトは長ければ長いほど良い」

これ、半分正解で半分間違いです。たしかに情報量が多いほど精度は上がるんですが、関係ない情報を詰め込むと、Copilotが何を優先すべきか迷ってしまう。長さより「必要十分」を意識してください。目安は3〜5文です。

誤解2:「日本語でちゃんと書けば伝わる」

いや、これもそうなんですが、「主語と目的語が曖昧な日本語」は危険です。「これを修正して」の「これ」が何を指すのか、Copilotには伝わらないこともある。「添付の見積書の3行目の単価を」みたいに、指し示す対象を明確に書く癖をつけましょう。

誤解3:「機密情報を入れちゃダメ」

逆です。M365 Copilotは、あなたのテナント内で完結する設計になっていて、入力した情報が学習データに使われることはありません。だから、むしろ社内情報をガンガン渡したほうが精度が上がるんです。ここはChatGPT無料版とまったく違うポイント。安心して「うちの部門の売上データを踏まえて」みたいに頼んでください。ただし、他社の機密情報や個人情報の取り扱いルールは社内規定に従ってくださいね。

カンマンの現場から見えること

正直に言うと、私たち株式会社カンマンの社内環境はGoogle Workspaceなんです。Microsoft 365 Copilotは使っていません。じゃあなぜCopilotの記事を書いているのかというと、徳島の企業さんからCopilot導入の相談を数多くいただいていて、導入支援の現場で得た知見を還元したいからなんですね。

自分たちがGoogle Workspace環境だからこそ、「M365に慣れていないお客様目線」で寄り添えるという強みがあると思っています。実際、カンマンではGoogle Geminiを業務にメイン活用していて、AIアシスタントとの付き合い方という意味では、今回紹介した5つの原則はGoogle Workspaceでも、ChatGPTでも、どのAIツールでも通用するものです。

さて、導入支援先の現場で印象的だった事例をいくつかご紹介します。

徳島県内のあるデザイン会社さんでは、最初「AIなんて制作には使えない」と言っていたんですが、プロンプト設計を学んでからは、クライアント向けの提案書作成時間が平均6時間→1.5時間に短縮されました。ポイントは、「過去の提案書(OneDrive内)を参照しながら、今回のクライアントの業種と課題に合わせてアレンジして」という指示が出せるようになったこと。

別の徳島の建設業のお客様では、現場監督さんがTeamsの会議メモから工程表の下書きを自動生成する使い方を定着させて、事務作業の残業が月20時間減ったそうです。地方中小企業ほど、一人あたりの業務範囲が広い。だからこそCopilotで「作業」を圧縮して、「考える時間」を作る価値が大きいんですよ。

共通しているのは、導入当初はみんな「使いこなせる気がしない」と言っていたこと。でも、プロンプトの型を覚えた瞬間、景色が一変する。ここだけは、本当にどの企業でも同じ現象が起きています。

まずやってみてほしい3つのこと

ここまで読んでくれたあなたに、今日から実行できる超具体的な3ステップを提案します。

ステップ1:自分の「よく使う業務」を3つリストアップする

まずは、毎週必ずやっている業務を3つ書き出してください。議事録、週報、見積フォロー、なんでもいいです。この3つを「Copilotに任せる候補」にします。いきなり全業務をAI化しようとすると挫折するので、スモールスタートがコツです。

ステップ2:3つそれぞれに「5原則」を当てはめたプロンプトを作る

今回紹介した①ゴール②コンテキスト③出力形式④ペルソナ⑤対話、これを意識して、3つの業務それぞれについて「テンプレプロンプト」を作ってみてください。ノートアプリでも付箋でもいいので、手元に置いておく。これが「あなただけのプロンプト資産」になります。

ステップ3:1週間、そのプロンプトを使い倒して改善する

1週間使ってみると、「この部分はいつも手直ししてる」というポイントが見えてきます。そこをプロンプトに追記していく。この「磨き込み」を繰り返すと、2週間後には自分専用の最強テンプレが完成しています。カンマンの導入支援先では、このテンプレを全社で共有する仕組みを作っている企業があり、これが生産性向上の最大のドライバーになっています。

さあ、Copilotと本気で向き合ってみませんか

プロンプト設計って、最初は「めんどくさそう」に見えるんですよね。でも、一度コツを掴むと、これほど投資対効果の高いスキルはありません。英語を覚えるより、プログラミングを学ぶより、ずっと短時間で、ずっと大きなリターンが返ってきます。

大事なのは、完璧を目指さないこと。今日紹介した5つの原則のうち、まずは「ゴールを明示する」一つだけでも意識してみてください。それだけで、Copilotが返してくる答えの質は確実に変わります。そして変化を感じたら、2つ目、3つ目と積み上げていく。この地道な積み重ねが、1年後には圧倒的な差になって返ってきます。

地方の中小企業にこそ、この武器を使いこなしてほしい。人手不足も、後継者不足も、スキル不足も、AIというパートナーを得ることで、確実に景色が変わります。私たちカンマンは、徳島からその伴走者でありたいと、本気で思っています。

まずは今日、一つだけ。あなたの今日の業務で、Copilotに「ゴールを明示したプロンプト」を投げてみてください。きっと、驚く答えが返ってきます。

次回(第9回)は『中小企業のCopilot管理者設定——セキュリティと運用のポイント』について解説します。せっかくの武器も、設定を間違えると情報漏洩リスクになります。安心して全社展開するためのツボを、じっくりお話ししますね。お楽しみに!

Microsoft 365 Copilot 完全活用ガイド・シリーズ一覧

本シリーズは全10回で、Microsoft 365 Copilotを地方中小企業が使いこなすためのノウハウを体系的にお届けしています。ぜひあわせてご覧ください。

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貝出康

代表取締役

貝出康

1963年徳島市生まれ。 1999年に楽天の三木谷社長の講演を聴き、イン ターネット時代の到来を悟る。翌年、ホームペ ージ制作会社カンマン設立に参画し、これまで のキャリアで培った営業や人事のスキルを活か しての顧客開拓や社内・労務管理を実践。2019 年〜代表取締役。