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【第6回】Excel × Copilot——データ分析を誰でもできるようにする方法

貝出康

代表取締役

貝出康

Microsoft 365 Copilot 完全攻略シリーズ

「VLOOKUPが使える人」と「使えない人」で、社内の情報格差ができている。

これ、地方の中小企業を回っていると、本当によく見る光景なんですよ。経営者が「うちのデータを分析して戦略を立てたい」と言っても、Excelで高度な数式やピボットテーブルを組めるのは総務の誰か1人だけ。その人が休んだら、月次の売上集計が止まる。そんな会社、想像以上に多いんです。

でも、ですよ。ここに来て状況がけっこう変わってきました。Microsoft 365 CopilotのExcel連携機能が、2026年になってかなり実用的なレベルに成熟してきたんです。日本語で「この売上表から前年同月比を出して」と頼むだけで、関数が組まれてセルに入る。「キャンペーンタイプ別の平均予算のピボットテーブル作って」と言えば、数クリックで完成する。

関数を覚える必要がない。マクロを書けなくていい。それで、データ分析が「特別な人のスキル」から「誰でもできる当たり前」に変わりつつあるんです。今回は、この変化の意味と、明日から現場で使える具体的なプロンプトまで、じっくり話していきますね。

そもそもExcel Copilotって何?

まず、ここが意外とモヤっとしている人が多いので整理します。

Excel Copilotっていうのは、Microsoft ExcelのリボンにAIアシスタントのボタンが追加されて、チャット形式でExcelに指示を出せる機能のこと。右側にチャットパネルが開いて、そこに日本語で「こうしたい」と書くと、Excelが実際に動くんです。「提案」じゃなくて「実行」までやってくれる。これが大きい。

たとえば、売上データの表を選んだ状態で「月別の合計を出してグラフにして」と打ち込む。すると、SUMIFを使った数式を組んで、ピボットテーブルを作って、棒グラフまで生成してくれる。私たち人間がやると15分くらいかかる作業が、30秒で終わる感覚です。

背景を少し話すと、Microsoftは2024年からCopilotをOffice製品全体に組み込んできました。最初は正直「ちょっと賢い検索窓」くらいの印象だったんですが、2025年から2026年にかけて大きく進化しています。特に話題になったのが、Excel内で直接ワークブックを編集できる「Copilot Agent Mode」の一般提供。これは、ただ回答するだけじゃなく、シートに実際に書き込んで作業を進めてくれるモードなんですよ。

料金体系もちょっと整理しておきます。個人・家庭向けのMicrosoft 365 PersonalやFamilyプランだと、基本的なCopilot機能が追加料金なしで使えます。ただし企業向けに本格的に使うならMicrosoft 365 Copilotライセンス(1ユーザーあたり月額数千円)が必要です。中小企業だと「まずは社長と経理1人で試す」くらいの規模から始めるのが現実的ですね。

あと、ひとつ注意点。「Excel App Skills」という古い機能は2026年2月末までに廃止されたので、今から始める人は新しい統合Copilot(チャットパネル+Agent Mode)を前提にしてください。ここ、古い記事を読んで混乱する人が多いポイントなので念のため。

なぜ今これが重要なのか

「便利なのは分かったけど、うちみたいな小さい会社に本当に関係あるの?」

これ、商工会議所のセミナーでめちゃくちゃ聞かれる質問です。結論から言うと、中小企業こそ効果が大きいです。理由は3つあります。

ひとつ目。中小企業は「Excelが得意な人」が圧倒的に少ない。大企業みたいに情報システム部門もデータサイエンティストもいないじゃないですか。だから「関数を知っている一人のベテラン」に依存している会社が本当に多い。その人がいなくなると、分析業務がストップする。これ、属人化のリスクとしては結構深刻なんです。Copilotは、このベテランの代わりをある程度してくれます。

ふたつ目。中小企業はデータを「持っているのに使えていない」状態がめちゃくちゃ多い。POSデータ、会計データ、顧客リスト、仕入れ台帳。材料はあるんですよ。でも、それを集計して意思決定につなげる手間が重すぎて、結局「勘と経験」で経営判断してしまう。Copilotを使うと、このハードルがガクッと下がる。「先月の粗利率を商品別に出して、低い順に並べて」と聞くだけで、数秒で答えが返ってくるわけです。

みっつ目。これは数字の話。KDDIやアクセンチュアなどが公開している導入事例を見ると、打ち合わせ・チャット・メール対応・資料作成の4項目で最大13.2%の時間削減という数字が出ています。月160時間働く人なら、21時間が浮く計算。年間で250時間ですよ。中小企業で人が足りない、採用できないという状況を考えると、これは「新しく人を採るより早い投資対効果」なんですね。

それに、意思決定のスピードが変わります。従来、月次の売上分析を経理が作成して、それを見た社長が翌月に判断する——このサイクルが1ヶ月かかっていたのが、「今日のデータを今日分析して今日決める」に変わる。これはもう、競合他社との時間差で戦う中小企業にとっては武器レベルの変化だと思っています。

具体的にどう使うか

ここからが本題。実際にどうやって使うか、プロンプト例を3つ紹介しますね。

1. 数式を自動生成させる

一番よく使うのがこれ。関数を覚えていなくても数式が作れるやつです。

たとえば売上データが A列に日付、B列に店舗名、C列に商品名、D列に売上金額で並んでいるとします。ここで、Copilotパネルに以下のように入力します。

“`
D列の売上について、B列の店舗ごとの合計をE列に出してください。
“`

そうすると、CopilotはSUMIFを使った数式を提案してきます。「この式をE2に入れますか?」と聞いてくるので、OKすれば入る。しかも、ちゃんと「なぜこの関数を使ったか」の解説もしてくれるんです。これ、学習効果としてもすごくいい。

応用編としては、「前年同月比を計算して」「移動平均を3ヶ月で出して」「異常値(平均から2σ離れた値)をハイライトして」みたいなレベルも全部いけます。ぼくが試した中で一番感動したのは「商品名から漢字部分だけを抽出してF列に出して」という複雑な処理。正規表現を使った関数を自動で組んでくれました。これ、人間がやったら30分かかるやつです。

2. ピボットテーブルを一発で作る

次にこれ。ピボットテーブルって、作り方を覚えていない人がめちゃくちゃ多いじゃないですか。行・列・値の設定で挫折する人を何十人も見てきました。

Copilotなら、日本語でこう言うだけです。

“`
この売上データから、店舗別×月別の売上合計のピボットテーブルを作ってください。
合計金額の高い店舗順に並べて、月の合計も最下段に入れてください。
“`

すると、新しいシートにピボットテーブルが生成される。行ラベル・列ラベル・値・並び替えまで全部やってくれます。さらに「このピボットテーブルを棒グラフにして、店舗ごとに色分けしてください」と追加で頼めば、視覚化まで完結します。

ピボットテーブルの真の威力って「切り口を変えて見ること」にあるんですが、Copilotならこれが神速でできる。「今度は商品カテゴリ別に集計し直して」「曜日別にまとめて」と、思考のスピードに合わせて分析を切り替えられるんです。これは発想が広がるレベルで体感が違います。

3. データのクレンジングをまとめて依頼

3つ目は地味だけど効くやつ。データ整形の自動化です。

中小企業の現場って、エクセルに手入力されたデータがバラバラなんですよね。「株式会社カンマン」「㈱カンマン」「カンマン」が混在していたり、電話番号のハイフンが入っていたり入っていなかったり。これを揃えるのに半日かかることがあります。

Copilotには、こんなふうに頼めます。

“`
A列の会社名を統一してください。
・株式会社、(株)、㈱は「株式会社」に統一
・余計なスペースは削除
・全角英数字は半角に変換
結果はB列に出してください。
“`

これで、複雑な数式を組み合わせた結果がB列に並びます。もう「SUBSTITUTEとCLEANとTRIMを組み合わせて…」とかやらなくていい。

さらに応用で「住所から都道府県だけを抽出」「郵便番号を7桁ハイフンなしに統一」「氏名を姓と名に分割」なんかも日本語で頼むだけ。地味ですが、毎月のルーチン作業が消える感覚は、一度味わうと戻れません。

よくある誤解・つまずきポイント

ここ、すごく大事なので正直に書きます。Copilotは万能じゃない。勘違いしたまま使うと痛い目を見ます。

つまずきポイント1:データの範囲が曖昧だと迷子になる。

「売上を分析して」みたいな雑な指示だと、どのセル範囲を対象にしているのか、どこから読み取ればいいのかをCopilotが判断できずに、変な答えを返してくることがあります。コツは、先にセル範囲を選択してから指示を出すこと。もしくは「A2:D200の範囲で」と明示的に指定すること。これだけで精度がガラッと上がります。

つまずきポイント2:データが「表」形式になっていないと精度が落ちる。

これは地味に重要です。1行目に見出し、2行目以降にデータ、というきれいな表になっていれば問題ないんですが、結合セルがあったり、見出しが複数行にまたがっていたり、小計が途中に入っていたりすると、Copilotが誤解します。まず「Ctrl+T」でテーブル化してからCopilotに渡すのがおすすめです。

つまずきポイント3:100%信じてはいけない。

これが一番大事。Copilotが生成した数式やピボットテーブルが「間違っていることがある」んですよ。特に、複雑な条件のSUMIFSや、複数シートをまたぐVLOOKUPだと、微妙に違う結果を出すことがある。なので、重要な数字は必ず一部をサンプリングして手計算と照合する癖をつけてください。これは生成AIを使ううえでの鉄則ですが、Excelでも同じです。

つまずきポイント4:機密データの扱い。

社外秘の顧客情報や売上データを扱う場合、Microsoft 365 Copilotの「Enterprise Data Protection」が有効なプランを使うべきです。個人向けプランだと、入力データが学習に使われる可能性が残る。中小企業でも、顧客情報を扱うなら必ず法人プランを選んでくださいね。

カンマンの現場から見えること

ここで、わたしたちカンマンの現場の話をさせてください。

うちは地方の中小企業さんを中心に、AI活用やDX支援のお手伝いをしています。その中で去年から今年にかけて、Excel Copilotを導入した会社を何社も見てきました。印象的だった事例を2つ。

ひとつ目は、従業員15人の製造業さん。毎月、社長が手書きで売上集計をExcelに打ち込んで、ピボットテーブルを作ろうとして挫折する——というのを、5年くらい繰り返していた会社です。Copilotを入れて、最初にやったのが「過去3年分の売上データから季節変動を分析して、来年の月別売上予測を出して」という依頼。これが30分で終わった。社長いわく「5年間やりたかったことが、午前中で終わった」と。

ふたつ目は、従業員8人の建設業さん。経理担当の方が1人で請求書管理をしていたんですが、「取引先別の未回収額を抽出」「支払いサイト別に集計」という作業に毎月半日かかっていた。Copilotに「このシートの請求データから、未入金で60日以上経過している取引先をリストアップして、金額の大きい順に並べて」と頼むだけで、数秒で終わるようになった。その経理担当の方、今は新規顧客向けの見積作成に時間を回せるようになっています。

共通しているのは、「高度な機能が使えるようになった」じゃなくて、「今までやりたかったけど諦めていたことが、普通にできるようになった」という変化なんですよ。これは技術の話というより、中小企業の可能性が広がる話だと思っています。

ただ、正直に言うと、うまくいかなかった会社もあります。共通点は「Copilotを入れただけで放置した会社」。結局、使う人の慣れが必要なんですね。週に1回、30分でも触る時間を確保した会社は必ず定着しています。ここは、ツール選びより運用の問題だなと、現場を見ていて強く思います。

まずやってみてほしい3つのこと

ここまで読んでくれた方に、明日から実行できる具体的な3ステップを提案します。

ひとつ目。手持ちのExcelファイルを1つ開いて、Copilotボタンを押してみてください。何でもいいです。売上表でも、顧客リストでも、在庫表でも。開いたら、最初のプロンプトはこれ一択。「このデータの特徴を3つ教えてください」。すると、Copilotがデータを眺めて、「最大値はこれ」「異常値はここ」「傾向はこう」と返してきます。これだけで「あ、本当に読んでくれるんだ」という感覚が掴めます。最初の壁は「何を聞けばいいか分からない」なので、まずこの1発で体感してください。

ふたつ目。今月の月次業務の中から、一番めんどうな集計作業を1つ選んで、それをCopilotに丸投げしてみてください。経理の締め処理でも、営業の売上集計でも、在庫の棚卸し分析でも。ポイントは「いつも1時間かけている作業」を選ぶこと。それがCopilotで15分になったら、その時間差を社内で共有してください。感覚値だと人は動かないけど、「1時間が15分になった」という数字だと、社内の空気が一気に変わります。

みっつ目。社内に「Copilotプロンプト集」を作ってください。誰かが使って良かった指示文を、共有ドライブに溜めていくんです。「前年同月比の出し方」「未入金リストの抽出」「異常値のハイライト」など、定型的なプロンプトを10個集めると、それがそのまま社内の業務マニュアルになります。これが実は一番大事で、ツールじゃなくて「使い方の資産」を会社に蓄積していく感覚なんですよ。地味ですが、1年後に大きな差になります。

最後に

Excelって、ほんとうに多くの中小企業の「主力データベース」じゃないですか。売上も、顧客情報も、在庫も、給与計算も、全部ExcelにあるっていうSaaS時代にあっても変わらない現実。

そのExcelに、日本語で指示するだけで動くAIが乗った。これ、冷静に考えるととんでもない変化です。「Excelが使える」の定義そのものが変わろうとしている。関数を覚えることじゃなくて、「何を知りたいか言語化できること」が、これからの武器になるんです。

最初は失敗します。プロンプトが曖昧で変な結果が返ってきたり、データの形が悪くて動かなかったり。でも、3回触れば慣れます。1ヶ月続ければ、もう関数を手で書く気になれません。その感覚をぜひ早めに掴んでほしい。中小企業こそ、この変化の先頭を走れるポジションにいると思っています。

次回(第7回)は『PowerPoint × Copilot——プレゼン資料を爆速で作る方法』について解説します。Excelで分析したデータを、そのまま提案資料に変換する流れを、実例ベースでお話しする予定です。お楽しみに。

https://open.spotify.com/episode/2N3IT49XUvu6MAU600v35r?si=Pgs5uNj3Q2CaBZ0JYR–Uw


【シリーズ全10回】M365 Copilot 活用ガイド

中小企業が Microsoft 365 Copilot を導入・活用するための全ステップを、実例と具体プロンプトで解説しているシリーズです。気になる回からどうぞ。

  1. 【第1回】そもそもMicrosoft 365 Copilotって何?ChatGPTとどう違うの?地方中小企業が知っておくべき全部
  2. 【第2回】Copilotの始め方——導入から最初の1週間でやること
  3. 【第3回】Word × Copilot——書く時間を半分にする方法
  4. 【第4回】Teams × Copilot——会議の生産性を3倍にする使い方
  5. 【第5回】Outlook × Copilot——メール対応時間を激減させる方法
  6. 【第6回】Excel × Copilot——データ分析を誰でもできるようにする方法
  7. 【第7回】PowerPoint × Copilot——プレゼン資料を爆速で作る方法
  8. 【第8回】Copilotのプロンプト設計——精度を上げる5つの原則
  9. 【第9回】中小企業のCopilot管理者設定——セキュリティと運用のポイント
  10. 【第10回】Copilot導入の効果測定——ROIを見える化する方法

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貝出康

代表取締役

貝出康

1963年徳島市生まれ。 1999年に楽天の三木谷社長の講演を聴き、イン ターネット時代の到来を悟る。翌年、ホームペ ージ制作会社カンマン設立に参画し、これまで のキャリアで培った営業や人事のスキルを活か しての顧客開拓や社内・労務管理を実践。2019 年〜代表取締役。