【第10回】Copilot導入の効果測定——ROIを見える化する方法
公開日:2026年04月26日

代表取締役
貝出康

「Copilot入れたんですけど、正直、効果があるのかよく分からなくて……」
先日、徳島の製造業の社長さんから、ぽろっと出てきた本音です。ライセンス料だけは毎月しっかり引き落とされる。でも現場が実際どれくらい楽になってるのか、数字がない。役員会で「で、あれ、元取れてるの?」と聞かれて答えられなかった、と。
これ、めちゃくちゃ多いんですよ。
実はMicrosoftの調査でも、日経225企業の導入率は94%を超えていて、もはや「入れるか入れないか」の時代は終わっています。次のフェーズは、入れたCopilotをどう測って、どう経営に説明するか。ここでつまずく会社が本当に多い。
でも、安心してほしいんです。効果測定って、実はそんなに難しくない。正しいKPIさえ決めておけば、学情さんのように「3か月で1,305万円削減」といった数字をバシッと出せるようになります。
今回は、私たちカンマンがお客様企業のCopilot導入を支援する中で見えてきた「ROIを見える化する具体的な方法」を、現場のリアルな感覚込みでお伝えします。役員会で胸を張って報告できる状態を、この記事で作っていきましょう。
そもそも「Copilotの効果測定」って何を測るの?
まず大前提の話から。
Copilotの効果測定って、世間的にはふわっと語られがちなんですけど、実は測るべき指標は大きく3層に分かれています。ここを整理しないと、ずっと「なんとなくいい感じ」のままで終わっちゃうんですよね。
第1層:活用量(ボリューム) これは「そもそも使われてるか?」を見る層です。アクティブユーザー率、週次利用頻度、アプリ別利用回数(Teams、Word、Excel、Outlookなど)。Microsoft純正のCopilotダッシュボード(Viva Insights連携)で、このへんは全部自動で取れます。
第2層:効率化(アウトプット) 「使った結果、何が速くなったか」です。資料作成時間、会議議事録の作成時間、メール返信時間、情報検索時間——この「before/after」を数字で押さえる。JBSの事例だと、資料検索が平均15分から5分に短縮されています。これが一番インパクトがあって、経営に刺さる数字です。
第3層:事業インパクト(アウトカム) 最終的に「それで売上・コスト・顧客満足にどう効いたか」。これは一番難しいし、Copilot単独で証明しきるのは正直むずかしい。でも営業部門なら「提案書作成数」、カスタマーサポートなら「一次回答までの時間」など、KPIに紐づけることはできます。
よくある失敗は、第1層だけ見て「使われてるから成功!」と言っちゃうパターン。アクティブ率95%でも、総利用回数の8割は全体の4割のヘビーユーザーが生んでるケースもあるんです(内田洋行さんの事例)。数字の中身まで見ないと、実態は見えません。
なぜ今、効果測定が経営アジェンダになっているのか
「そんなの、感覚で分かればいいじゃん」って思う方もいるかもしれません。でも2026年のいま、効果測定は経営アジェンダになっています。理由は3つあります。
ひとつ目は、ライセンスコストが無視できない規模になってきたこと。Microsoft 365 Copilotは1ユーザーあたり月額4,497円(年額だと約5.4万円)。100人規模の会社で全社導入したら、年間540万円です。これが「なんとなく便利」では、もう予算承認が通りません。
ふたつ目は、現場の温度差が広がっていること。さっきも触れましたが、同じ会社の中でも「めちゃくちゃ使いこなす人」と「ログインすらしない人」の格差が、導入後3〜6か月で一気に開きます。効果測定なしでは、この格差に手を打てない。放置すると「一部の人だけが得してる、なんか不公平なツール」という空気になって、最悪、反対派が増えて撤退——なんて話も実際にあります。
3つ目は、Copilot自体が毎月進化してること。Copilot Agent、Copilot Studio、Copilot Tuning……機能がどんどん増えていて、去年のベストプラクティスがもう古い、みたいな世界です。測って振り返る習慣がない会社は、新機能が出ても自社に合うか判断できない。逆に、測定基盤がある会社は、新機能を試してすぐROIで判断できる。この差は1年で決定的になります。
だから、導入から半年以内に測定の仕組みを作っておかないと、あとでかなり苦労するんですよ。
具体的にどう測る?KPI設計と報告資料の作り方
ここが本題です。実際に手を動かす部分を、手順で書いていきます。
ステップ1:KPIを「業務単位」で決める
全社共通のKPIを無理に作ろうとすると、絶対に失敗します。部門ごとに業務が違うんだから、測る指標も違って当然なんです。
例えばこんな感じ。
- 営業部門:提案書ドラフト作成時間(before/after)、顧客メール返信までのリードタイム、商談前準備時間
- バックオフィス:議事録作成時間、社内問い合わせ一次回答時間、月次レポート作成工数
- 開発・技術:仕様書作成時間、コードレビュー時間、障害対応の一次切り分け時間
- マネジメント層:会議サマリ確認時間、意思決定に必要な情報収集時間
ポイントは、各部門で「一番時間を食ってる3業務」だけに絞ること。全部測ろうとすると、測ること自体が負担になって続きません。
ステップ2:プロンプト例を配って、同じ土俵で比較する
測定を正確にするために、同じ業務には同じプロンプトを使ってもらいます。ここで効いてくる具体例を3つ紹介します。
プロンプト例①:議事録作成(Teams会議後)
「この会議の議事録を、①決定事項、②ToDo(担当者と期限付き)、③次回までの論点、の3セクションで作成してください。ToDoは箇条書きで、期限が明示されていないものは『期限未定』と記載してください。」
これだけで、議事録作成が平均30分→5分になった事例があります。
プロンプト例②:顧客メールのドラフト
「以下のメール内容に対して、丁寧な日本語で返信ドラフトを3案作ってください。①結論先出し型、②共感重視型、③次のアクション提案型。いずれも200文字以内で。」
3案出させるのがコツで、担当者が「選ぶ」だけで完成するから、心理的な負担が激減します。
プロンプト例③:Excel集計と示唆
「このシートの売上データを、月別・商品カテゴリ別で集計してください。前月比・前年同月比を出したうえで、特徴的な変化が見られる項目を3つ、1行ずつコメントしてください。」
「コメントさせる」のがポイント。単なる集計じゃなくて、気づきを出させるプロンプトにすると、分析のたたき台が5分で上がってきます。
ステップ3:Copilotダッシュボード+アンケートでデータを取る
定量データはMicrosoft Copilotダッシュボード(Viva Insights)で自動取得。アプリ別利用、アクティブ率、継続率まで見られます。ただしMicrosoftも認めている通り、モニタリング機能はまだ初歩的。だから3か月に1回、現場アンケートを併用するのが正解です。
アンケートは5問だけ。「①Copilotを週何回使う?」「②一番使ってるアプリは?」「③時間が削減できたと感じる業務は?」「④削減時間の体感は?(0分/15分/30分/1時間以上)」「⑤不満・改善要望は?」。これを部門別に集計すれば、定量×定性の両輪で経営に報告できます。
ステップ4:経営報告用の1枚スライドに落とす
役員会で使うなら、この構成がおすすめ。
上段:今月のアクティブ率・利用回数・主要3アプリの利用状況
中段:部門別の削減時間(時間×平均人件費でコスト換算)
下段:成功プロンプト事例1つ+次月のアクション
金額換算は必須です。「150時間削減」より「人件費換算で月額75万円削減」のほうが、100倍刺さります。
よくある誤解・つまずきポイント
ここ、本当に大事なので正直に書きます。
誤解①:「全員に配れば勝手に使いこなす」 一番多い失敗です。アクティブ率95%の会社でも、実は4割のヘビーユーザーが全利用の8割を占めていて、残り6割は触るだけ。配布=活用じゃないんです。最初の2週間で「体験ワークショップ」を1時間だけでもやると、定着率が段違いに上がります。
誤解②:「マニュアルを完璧に作れば使われる」 これ、逆効果になることがあります。マニュアルが分厚すぎると「読んでから使う」モードになって、結局誰も読まない。キーマンズネットでも「手厚いサポートが社員のAI離れを招く」と指摘されています。マニュアルは3ページ以内、あとは社内Teamsの「Copilot質問チャンネル」で随時質問できる場を作るほうが、はるかに使われます。
誤解③:「出てきた答えを信じていい」 これが一番危ない。営業マネージャーが提案書の7割をCopilotに任せたら、見た目が整いすぎていて、内容の誤りに誰も気づかなかったという事例があります。「見た目が整ってるほど、人間の脳は『もうできてる』と錯覚する」——これ、肝に銘じてほしいです。Copilotは下書き係、最終チェックは必ず人間というルールを最初に共有してください。
誤解④:「効果が見えないから撤退」 半年見て効果が出ないなら、だいたいKPI設計かプロンプト設計が間違ってるだけ。ツール自体を捨てる前に、測り方を変えてみてください。
カンマンの現場から見えること
私たちカンマン自体は、実はGoogle Workspaceを使っていて、Microsoft Copilotは業務で日常利用していません。でも、徳島のお客様企業からMicrosoft 365 Copilotの導入支援・定着支援のご相談は、この1年ですごく増えました。
最近印象的だったのが、徳島市内のある建設会社さん。50名規模で、半年前にCopilotを全社導入したものの、経営者から「これ、使われてる実感がない」と相談をいただきました。
現場に入ってまずやったのは、利用データの可視化。Viva Insightsで見たら、アクティブ率は76%あるのに、使ってるアプリがほぼTeamsの要約機能だけ、という偏りが見えてきました。WordもExcelもPowerPointも、Copilotはほぼ未使用。
そこで、現場ヒアリングを3部署でやったんですね。そうしたら「書類仕事が多い工務部門が、Wordの下書き機能を知らない」「経理が、Excelの数式提案を知らない」ことが分かった。つまり機能を知らないから使われていない、ただそれだけだったんです。
30分のミニ研修を3部署それぞれで実施。プロンプト例を10個ずつ配って、その場で触ってもらう。これだけで、2か月後には全社平均で月あたり一人4.2時間の業務時間削減が計測できるようになりました。50名×4.2時間×時給2,500円換算で、月額52万5,000円のコスト削減。年間で630万円です。ライセンス費用を余裕で上回りました。
測定の仕組みがあれば、こうやって打ち手と効果を直接つなげられるんですよね。徳島の中小企業でも、やれば必ず成果は出ます。
まずやってみてほしい3つのこと
最後に、この記事を読んで「よし、うちも測ろう」と思った方向けに、明日から始められる3ステップを書いておきます。
1つ目:部門ごとに「一番時間を食ってる業務トップ3」を書き出す これ、各部門長に5分考えてもらうだけです。営業なら「提案書作成」「メール返信」「商談準備」とか。この3つがKPIの測定対象になります。全部署やっても1日で終わります。難しい戦略会議とかは不要。Copilot効果測定の9割は、このリストアップで決まります。
2つ目:Copilotダッシュボードを開いて、今の数字をスクリーンショットする Microsoft 365管理センターからViva Insights経由で、今月の利用状況が確認できます。アクティブ率、アプリ別利用回数、週次推移。これを「ベースライン」として記録しておく。3か月後、6か月後に比較するための、一番最初の基準値です。これなしで始めると、あとで「よくなった気がする」で終わります。
3つ目:経営報告用1枚テンプレを作って、月次で更新する PowerPointでもExcelでも、なんでもOK。「今月のアクティブ率/削減時間/コスト換算/成功事例1つ/次月アクション」の5項目だけのテンプレを作ります。これを毎月第1週に更新して、経営会議に出す。この「月次報告の習慣」が、Copilot活用を会社のアジェンダに載せ続ける、一番確実な方法です。
この3ステップ、合計しても最初のセットアップは半日で終わります。半日の投資で、年間数百万円のROI可視化ができるなら、やらない理由はないですよね。
測定を仕組み化する——週次・月次・四半期の3サイクル
ここまで読んでくださって「やることは分かった、でも続ける自信がない」と思った方、正直に言います。ほとんどの会社が、最初の3か月で測定をやめます。理由はシンプルで、「毎回手作業で集計してるから疲れる」。ここを仕組みで解決するのが、ROI可視化の最後のピースです。
弊社がお客様企業でおすすめしているのが、週次・月次・四半期の3サイクルで役割を分ける方法です。
週次:現場のモニタリング(所要15分)
各部門の担当者が、月曜朝のミーティング冒頭で15分だけ、先週の利用状況を共有します。Viva Insightsのスクリーンショット1枚と、「先週Copilotで助かった業務」を1人1つ発表するだけ。これだけで部門内のベストプラクティスが勝手に共有されて、使われない機能が自然に使われ始めます。
月次:経営への報告(所要1時間)
月初第1週に、情シスまたはDX推進担当が1枚スライドを更新して経営会議に提出。ポイントは、毎月同じフォーマット・同じKPIで積み上げること。フォーマットを変えるとトレンドが追えなくなります。前月比・前々月比を必ず入れて、折れ線グラフで推移を見せるのが効きます。
四半期:施策の見直し(所要半日)
3か月に1回、「使われていない機能/過度に期待外れだった業務/新しく試したい機能」を棚卸しします。Copilotは毎月のように新機能が出るので、この四半期レビューなしでは、いつのまにか古いやり方のまま止まってしまいます。徳島のある物流会社さんでは、この四半期レビューで Copilot Studio を使った見積書自動生成フローを追加し、四半期だけで240時間の追加削減を実現しました。
ROI計算式の型——明日の役員会で使えるテンプレ
実際の計算式まで踏み込みましょう。意外とここが曖昧な会社が多いんです。
削減コスト額=Σ(業務別削減時間×対象人数×1時間あたり人件費)
シンプルですが、3つのコツがあります。
1つ目は、1時間あたり人件費は「総人件費÷総稼働時間」で出すこと。基本給だけで計算すると実態より半分くらい低く出てしまいます。社会保険料・賞与・退職金引当まで含めた総コストで算出してください。中小企業の一般的な目安は、事務職で時給2,500〜3,000円、技術職で時給3,500〜4,500円、管理職で時給5,000円前後です。
2つ目は、削減時間は「体感」ではなく「タイマー実測」を最低1回はやること。体感は9割盛られます。逆に実測すると「自分が思ってたより早く終わってた」というケースもあるので、いずれにせよ一度は測ってください。
3つ目は、ROI=(年間削減コスト額-年間ライセンス費用)÷年間ライセンス費用で表現すること。100名規模で年間ライセンス540万円、年間削減が600万円なら、ROIは11%。これを「月額◯万円削減」ではなく「ROI◯%」で出すと、経営層の理解が一気に深まります。
成功する会社・失敗する会社の分岐点
導入支援の現場で、成功している会社と失敗している会社の差が、はっきり見えてきました。
成功する会社に共通してるのは、「測ることそのものを楽しめる文化」があること。月次報告で「先月より削減時間が増えた!」を素直に喜べるチーム、失敗プロンプトを共有して笑いあえるチーム。こういう雰囲気が作れると、Copilotは勝手に定着します。徳島県内でも、社長自らが「今月の自分のCopilot活用ベスト3」を朝礼で発表している会社があって、これが驚くほど効いています。
逆に失敗する会社は、「測定を誰か一人に丸投げ」しています。情シス部長だけが測っていて、現場は何が測られているか知らない。こうなると、測定結果が出ても誰も行動が変わらない。測定は全員参加のイベントにしないと、数字が数字のまま終わります。
もうひとつの分岐点は、「失敗を許容する空気」があるかどうか。最初の3か月は、うまくいかないプロンプトや使わない機能がたくさん出てきます。それを責めない。「試してみて合わなかった」を前向きに扱えるかどうか。ここがカルチャーとして固まっている会社は、半年後に必ず数字を出してきます。
徳島の中小企業でも、規模の大小は関係ありません。社長が「数字を見る」姿勢を示すだけで、会社の空気は変わります。
まとめ:測れない投資は、必ず消えていく
Copilotって、本当にいいツールなんです。使えば確実に業務は楽になるし、現場からは「もう戻れない」という声がしょっちゅう聞こえてきます。でも、効果を測って経営に見せない限り、どれだけ現場が喜んでいても、いつか予算削減の対象になります。
だから、導入そのものより、測定の仕組みづくりにこそ力を入れてほしい。KPIを決めて、ダッシュボードを見て、月次で経営報告する。この地味なサイクルが、Copilotを「試験導入」から「会社の資産」に変える唯一の道だと、私たちは現場で何度も見てきました。
徳島の中小企業でも、やれば必ず数字は出せます。まずは部門トップ3の業務を書き出すところから、ぜひ始めてみてください。次回は、「Copilot Agent×Copilot Studioで、自社業務を自動化する実践ガイド」をお届けする予定です。お楽しみに。
連載「中小企業のMicrosoft 365 Copilot活用ガイド」全10回
Copilotの全体像から導入、各アプリ活用、プロンプト設計、セキュリティ、効果測定まで、中小企業の視点で解説した全10回シリーズです。気になる回からお読みください。
- 【第1回】そもそもMicrosoft 365 Copilotって何?ChatGPTとどう違うの?地方中小企業が知っておくべき全部
- 【第2回】Copilotの始め方——導入から最初の1週間でやること
- 【第3回】Word × Copilot——書く時間を半分にする方法
- 【第4回】Teams × Copilot——会議の生産性を3倍にする使い方
- 【第5回】Outlook × Copilot——メール対応時間を激減させる方法
- 【第6回】Excel × Copilot——データ分析を誰でもできるようにする方法
- 【第7回】PowerPoint × Copilot——プレゼン資料を爆速で作る方法
- 【第8回】Copilotのプロンプト設計——精度を上げる5つの原則
- 【第9回】中小企業のCopilot管理者設定——セキュリティと運用のポイント
- 【第10回】Copilot導入の効果測定——ROIを見える化する方法(本記事)
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代表取締役
貝出康
1963年徳島市生まれ。 1999年に楽天の三木谷社長の講演を聴き、イン ターネット時代の到来を悟る。翌年、ホームペ ージ制作会社カンマン設立に参画し、これまで のキャリアで培った営業や人事のスキルを活か しての顧客開拓や社内・労務管理を実践。2019 年〜代表取締役。








