営業日報をAIで分析する方法|Copilot×Excelで改善点を抽出
公開日:2026年05月28日

ディレクター / 生成AIコンサルタント
田中健介

「今日のAI活用、何に使っていますか?」と中小企業の現場でうかがうと、いちばん多い答えのひとつが「日報を書くのが楽になった」です。たしかに、メモを箇条書きで渡せばCopilotがきれいな文章に整えてくれる。これは便利です。
でも、正直に申し上げます。それだけだと、いちばんおいしいところを捨てています。
営業日報は、現場のリアルが毎日積み上がっていく「会社の一次情報の宝庫」です。本当に価値が出るのは、日報を速く書くことではなく、溜まった日報をまとめて分析すること。失注が増えている理由、現場が共通してつまずいている壁、好調なメンバーがやっていること——こうした「次の一手につながる気づき」は、1枚ずつ読んでいては見えません。この記事では、Microsoft 365 Copilotを使って、溜まった営業日報から改善のヒントを引き出す具体的な手順を、生成AI研修の現場目線で解説します。
営業日報はAIに「書かせる」だけでは半分。溜まった日報をCopilotで分析すれば、失注の傾向・現場の課題・次の一手が数分で見えます。鍵は「問いの設計」と「結果の検証」です。
「日報を書く効率化」で止まるともったいない理由
結論から言うと、日報の価値の大半は「書く」より「読み解く」側にあるからです。
いま世の中のAI活用記事の多くは、「日報を速く書く」「定型文を自動生成する」という”作成の時短”に寄っています。これはこれで正しい。1日5分の入力が1分になれば、年間で見れば大きな時短です。
ただ、ここで立ち止まってしまうと、こういう状態が続きます。
- 日報は毎日提出されるが、上司は流し読みするだけ
- 月末に「なんとなく調子が悪い」と感じても、理由を言語化できない
- 失注やクレームの予兆が日報には書いてあったのに、誰も拾えていない
日報という一次情報が、書かれた瞬間から「読まれない在庫」として積み上がっていく。これは、せっかく仕入れた材料を冷蔵庫で腐らせているのと同じです。
AIが本当に効くのは、人間が「量が多すぎて読み切れない」「傾向を把握しきれない」と感じる場面です。1ヶ月分・数十人分の日報を横断して傾向を出す——これこそ、人間が苦手でAIが得意な領域です。

「書く効率化」と「分析」は何が違うのか
ひとことで言えば、前者は”作業を減らす”、後者は”判断を助ける”です。同じ「日報×AI」でも、得られるものがまったく違います。
| 観点 | 日報を「書く」効率化 | 日報を「分析」する活用 |
|---|---|---|
| 目的 | 入力・作成の時短 | 意思決定・改善のヒント抽出 |
| 使う場面 | 提出する本人 | マネージャー・経営層 |
| AIへの指示 | 「箇条書きを文章にして」 | 「30人分の日報から共通の課題を抽出して」 |
| 得られるもの | 整った文章 | 傾向・予兆・打ち手 |
| 効果の大きさ | 1人あたり数分の時短 | 組織全体の改善・失注防止 |
| 競合(他社)の対応 | 多くの記事・ツールが対応済み | まだ手薄 |
「書く」も「分析」も価値はあります。でも、研修や経営の現場でインパクトが大きいのは圧倒的に「分析」です。そして「分析」に取り組んでいる会社はまだ少ない。だからこそ、ここを押さえた会社が一歩抜けます。
営業日報をCopilotで分析する5ステップ
結論:「集める → 整える → 問いを設計する → 分析させる → 検証する」の5ステップで進めます。順番に見ていきましょう。

ステップ1:日報を1か所に集める
まず、分析したい期間の日報を1か所にまとめます。営業日報は、SFA(営業支援ツール)・Excel・メール・チャットなど、バラバラの場所にあることが多いはずです。
- Excelに集約する場合:1行=1件の日報になるように貼り付ける(日付・担当者・内容の列を作る)
- Microsoft 365 Copilot(チャット)を使う場合:WordやメールなどCopilotが読み取れる場所に置く
Excelの表形式データの集計・分析は「Copilot in Excel」、文章主体の日報の読み解きは「Microsoft 365 Copilot(チャット)」が得意です。日報は自由記述が多いので、まずはチャット型のCopilotに読み解かせるのがおすすめです。Excelの基本操作は【第6回】Excel × Copilot——データ分析を誰でもできるようにする方法で解説しています。
ステップ2:分析できる形に「整える」
AIは、ぐちゃぐちゃのデータからでもある程度は読み取りますが、整っているほど精度が上がります。最低限、次を揃えます。
- 日付・担当者名(社外秘・個人情報の扱いは後述)
- 訪問先・案件・結果(受注/継続/失注 など)が分かる記述
ステップ3:「問い」を設計する(ここが最重要)
Copilot分析の成否の9割は、ここで決まります。「この日報を分析して」だけでは、当たり障りのない要約しか返ってきません。何を知りたいのかを具体的に指示します。
(プロンプトの考え方の例)
以下は当社の営業日報◯件です。次の観点で分析し、それぞれ箇条書きで示してください。
1. 失注・停滞している案件に共通する理由
2. 顧客から繰り返し出ている要望・不満
3. 担当者が共通してつまずいているポイント
※根拠となった日報の記述も併せて示してください。
ポイントは、「分類の軸」と「根拠の提示」を指示に入れることです。軸が曖昧だと結果がぶれます。プロンプト設計の詳しい原則は【第8回】Copilotのプロンプト設計——精度を上げる5つの原則を参照してください。
ステップ4:Copilotに分析させる
設計した問いをCopilotに投げます。1回で完璧な答えは返りません。「ここをもっと詳しく」「失注理由を件数の多い順に」と追加で対話して掘り下げるのがコツです。
【要・一次情報①】実演スクショ 田中さんが実際にCopilot(またはセミナー実演)で日報を分析した画面キャプチャをここに差し込む。担当者名・顧客名・社名はマスキング。
ステップ5:必ず「検証」する
Copilotは、もっともらしい嘘(ハルシネーション)を返すことがあります。抽出された傾向が、本当に元の日報に書いてあるかを必ず数件サンプリングして確認してください。AIの答えを「たたき台」として扱い、最終判断は人が行う——これが鉄則です。
Copilotで日報から引き出せる4つの示唆
結論:日報分析で取りに行くべきは、次の4つです。単なる要約で終わらせないために、狙いを定めて問いを投げます。

失注・顧客の不満の「傾向」
1件の失注はただの結果ですが、30件を横断するとパターンが見えます。「価格で負けている」「導入後のサポート不安で止まっている」など、対策すべき本丸が浮かび上がります。
現場が共通してつまずく「壁」
複数の担当者が同じところで止まっているなら、それは個人のスキルではなく仕組みの問題です。トークスクリプトや資料を直すべきサインを、日報の束が教えてくれます。
好調メンバーの「勝ちパターン」
成績の良い担当者の日報には、再現可能なコツが埋もれています。Copilotに「受注に至った案件の進め方に共通点はあるか」と聞けば、横展開できる型を言語化できます。
マネージャーが打つべき「次の一手」
上記3つを踏まえ、「では来月、何を変えるべきか」までCopilotに提案させます。あくまで提案ですが、会議の議論のたたき台として有効です。
1か月分の営業日報をCopilotで分析してみた
この記事の核心、実際にやってみた結果です。
サンプルとして1か月分・22件の営業日報を用意し、Microsoft 365 Copilot に「失注理由・勝ちパターン・共通のつまずき・繰り返しの要望」を分析させました。投げたプロンプトはこちらです。

数分待たずに、構造化された示唆が返ってきました。


返ってきた中身を要約すると——
- 失注理由は「価格・コスト面」と「導入後のサポート不安」の2軸に集中。バラバラに見えた失注6件が、実は2つの原因にまとまっていることが瞬時に可視化された
- 受注に至ったケースに共通するのは「業界事例の提示」と「無料トライアル/PoCの提案」。属人的な勝ちパターンが、再現可能な”型”として言語化された
- 担当者全体が共通してつまずいているのは「決裁者・上層部に話が届かない」というアプローチの壁。これは個人のスキル不足ではなく、組織として補強すべき仕組みの問題だと分かる
- 顧客から繰り返し出ている要望は「レポート機能の弱さ」など、商品改善のヒントにも直結する
22件を1枚ずつ読んで、人間がここまで構造化された示唆を引き出すには、私の感覚で数時間は必要です。今回 Copilot が要した時間は約30秒でした。
使うときの注意点(精度とセキュリティ)
便利な一方で、外してはいけない注意点が2つあります。

精度:AIの答えを鵜呑みにしない
前述のとおり、Copilotは事実にない内容を生成することがあります。重要な判断に使う数値や傾向は、必ず元データと突き合わせて検証してください。
セキュリティ:日報は機密情報のかたまり
営業日報には、顧客名・取引条件・個人名など社外秘や個人情報が大量に含まれます。これを安全に扱うには、データの取り扱い範囲が守られた法人向けのMicrosoft 365 Copilotを使うのが原則です。個人向けの無料AIに社外秘を貼り付けるのは避けてください。法人での安全な設定は【第9回】中小企業のCopilot管理者設定——セキュリティと運用のポイントで解説しています。
よくある質問
Q1. Excelの「Copilot in Excel」と、チャットのCopilotはどちらを使えばいいですか? A. 数字の集計はExcel、自由記述の日報の読み解きはチャット型のCopilotが得意です。日報分析はまずチャット型がおすすめです。
Q2. 無料版のCopilotでも日報分析はできますか? A. 簡単な要約は可能ですが、社外秘を含む日報には法人向けの有料版(Microsoft 365 Copilot)の利用を強くおすすめします。
Q3. 何件くらいの日報から分析する意味がありますか? A. 20〜30件あれば傾向が見え始めます。月単位・チーム単位でまとめると精度が上がります。
Q4. 分析結果が毎回ぶれるのですが、なぜですか? A. 「分類の軸」と「件数の多い順」など条件を指示に明記すると安定します。曖昧な問いがぶれの原因です。
Q5. AIの分析結果はそのまま信じていいですか? A. いいえ。たたき台として扱い、重要な傾向は必ず元の日報と照合して検証してください。
Q6. SFAやkintoneに入っている日報も分析できますか? A. 一度Excelやテキストに書き出せば分析できます。連携を組めば定期的な自動分析も可能です。
Q7. 導入のために、まず何から始めればいいですか? A. 1ヶ月分の日報をExcelに集め、本記事ステップ3の問いをCopilotに投げてみるのが最短です。
まとめ:日報は「書く」より「分析する」と化ける
要点を振り返ります。
- 日報AI活用を「書く時短」で止めるのはもったいない。価値の大半は分析側にある
- Copilot分析は 集める→整える→問いを設計→分析→検証 の5ステップ
- 狙うのは 失注の傾向・共通の壁・勝ちパターン・次の一手 の4つ
- 問いの設計と結果の検証、そしてセキュリティが成否を分ける
まずは手元の1ヶ月分の日報で、ステップ3の問いを1つ投げてみてください。「読まれない在庫」だった日報が、明日の打ち手に変わります。
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ディレクター / 生成AIコンサルタント
田中健介
2023年に株式会社カンマンへ入社。Webエンジニア、Webディレクターを経て、現在は生成AIコンサルタント/ディレクターとして活動。会計事務所・建設・リフォーム・自動車整備など多様な業種で生成AI研修を担当し、セミナー講師としても10回以上、累計300社以上の方にご参加いただきました。









