Copilot議事録の前に測る「見えないコスト」
公開日:2026年08月24日

代表取締役
貝出康

「Copilotで議事録を作ると早いですよ」——この話、もう珍しくなくなりました。ただ、そこで私が先に聞くのは別のことなんです。「御社は、議事録という業務に年間いくら払っていますか?」。ほぼ全員が答えられません。時間も金額も、誰も測っていない。だから削っても効果がわからないし、削らなくても誰も困らない。Copilot 議事録の話が「便利ですね」で終わって社内に残らない原因は、たぶんここにあります。
これ、担当者が怠けているわけじゃないんですよ。国も測っていないんです。
私はカンマンでAI研修とWebマーケティング支援をやっていて、徳島の中小企業の現場で毎週この話をしています。「議事録に何時間かかっていますか」と聞くと、返ってくるのは「まあ、ちょこちょこ」。この「ちょこちょこ」が、たぶん御社で一番大きな未計測コストです。
議事録の時間は、どの会社の帳簿にも載っていない
「誰かがやってくれている」から原価にならない
議事録って、発注しないんですよ。外注もしない。会議に出ていた人のうち一番若い人か、一番マメな人が、会議のあとに黙ってやる。だから請求書が出ない。請求書が出ないものは、原価計上されません。
経費で出ていかないコストは、経営会議の議題にならない。これが議事録の一番やっかいな性質です。コピー用紙代は年間いくらか言える会社が、議事録の工数は言えない。金額はもう毎月出ていっています。ただ、誰も換算していないだけなんですけどね。
しかも担当者側は困っていません。正確に言うと、困り方が経営と違う。担当者は「自分が1時間残業すれば終わる」と思っています。だから相談も上がってこない。上がってこないから経営は問題を認識しない。議事録は、社内の誰も声を上げないまま毎月消えていく時間です。
会議時間と議事録時間の公的統計は、日本に存在しない
ここ、けっこう驚かれるところなんですが。日本には「会社員が会議に何時間使っているか」「議事録に何時間かけているか」を測った公的統計がありません。
総務省の社会生活基本調査は、会議を「主な仕事」の中に一括で計上していて、会議だけを分離しません。厚生労働省の毎月勤労統計調査は労働時間の総量を調べていますが、その中身が何の作業だったかは調査していない。つまり国も、会議と議事録の時間は測っていないんです。
だから「日本企業の議事録工数は平均○時間」という数字は、原則として存在しません。ネットで見かける数字は、ほぼ全部が民間調査か、モデル試算です。ここを知らずに引用すると、自分の会社にまるで当てはまらない数字を根拠にしてしまいます。
だから民間調査を使うしかない。ただし条件付きで
それでも桁の見当はつけたい。使える民間調査は2本あります。ただ、どちらも条件付きです。
1本目。パーソル総合研究所と中原淳氏(立教大学)の共同「長時間労働に関する実態調査」(2017年9月・2018年3月実施)では、社内会議の年間時間が部長級で企業規模500人未満は313.1時間、1万人以上企業では630.0時間でした。中小企業の話をするなら、当然313.1時間側を見ます。ただこの調査はコロナ前で、オンライン会議が当たり前になる前の実態です。
2本目。キヤノンマーケティングジャパンの調査(2022年12月・n=1,000)では、議事録作成は1週間あたり平均6.13時間、20代は8.46時間、年間換算で319.6時間という数字が出ています。ただこれは「勤め先で議事録作成業務のある人」に限定した調査で、週次の実績を単純に52.14倍した年間換算です。しかも議事録DXの製品を売っている会社の調査です。
議事録の工数データを引用するときの条件
- パーソル調査:2017〜2018年実施=コロナ前。中小企業なら500人未満の313.1時間側を使う
- キヤノンMJ調査:議事録作成業務がある人に限定・週次実績の単純52.14倍・議事録DX製品を売る会社の調査
- 共通:どちらも御社の実測ではない。使えるのは「桁の見当をつける」ところまで
同じパーソルの調査には、もう一つ刺さる分析結果があります。多変量分析で「議事録文化」が有意に「ムダ会議指数」を押し上げていた、というものです。詳細すぎる議事録をつくる、作成した議事録を一度確認してから回す——こういう会議の「後工程」が会議そのものをムダにしているという指摘なんですよ。だから対策は「議事録をやめる」ではありません。後工程の負荷を下げることです。
生成AIを最初に入れる場所は議事録だと、国の白書が示している
活用も効果実感も「議事録・メール作成補助」が最多
ここが今日いちばん持ち帰ってほしいデータです。総務省『令和8年版 情報通信白書』の図表Ⅰ-2-1-7では、生成AIの業務類型別の活用状況で「議事録・メール作成補助」が約7割で最多でした。しかも、導入効果の実感も「議事録・メール作成補助」が約7割で、他の類型より顕著に高い。
使われている領域と、効果を実感できている領域が、同じ場所で一致している。これ、生成AIの用途としてはかなり珍しいことなんです。画像生成でも企画立案でも、こうはなりません。
つまり「どこからAIを入れるか」で迷う必要が、実はもうないんですよ。国の白書が、最も使われていて効果の実感も最も高い業務を名指ししてくれている。議事録です。同じ白書の図表Ⅰ-2-1-10でも、日本企業が実感している生成AIの影響は「作業時間の短縮などによる業務の効率化」が61.6%で最多でした。
中小企業のAI活用は約3割。やっていることは文書作成と要約
一方で、中小企業庁『2026年版中小企業白書』第2-2-87図によると、中小企業のAI活用の取組状況は全体で約3割です。同白書の第2-2-88図・第2-2-90図では、活用の具体的な方法はどの業種でも「文書作成、要約、校正」「業務自動化・効率化」が多い、とされています。第2-2-89図では、省力化投資でAIを活用する目的は「業務時間の節減」が8割超で最多でした。
総務省『令和8年版 情報通信白書』の図表Ⅰ-2-1-2を見ると、生成AIの活用方針(積極的に活用+領域を限定して利用)は大企業74.0%に対して中小企業58.1%。図表Ⅰ-2-1-3では「組織的な取組はない」が日本で27.0%あり、中小企業で特に高い。
差がつき始めているのは、派手な使い方の差じゃないんです。文書作成と要約という、地味で毎日ある業務を組織として押さえたかどうかの差です。
増員では解けないから、一人当たりを上げるしかない
なぜ今なのか。人が増えないからです。
国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口(令和5年推計・2023年4月26日公表)』では、生産年齢人口(15〜64歳)は2020年の75,087千人(総人口の59.5%)から、2030年に70,756千人(58.9%)、2040年には62,133千人(55.1%)まで減ります。帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」(2026年8月17日公表)では、正社員が不足していると感じる企業は51.3%で、7月としては4年連続で5割を超えました。非正社員は28.8%です。
だから採用で解こうとしても構造的に無理があります。動かせるレバーは一人当たりの生産性しかない。ところが日本生産性本部『労働生産性の国際比較2025』(2024年データ・2025年12月22日公表)では、日本の時間当たり労働生産性は60.1ドル(5,720円)でOECD加盟38カ国中28位。一人当たりは98,344ドル(935万円)で29位、主要先進7カ国では最下位です。順位の推移も2018年21位→2020年28位→2024年28位と戻っていません。
さらに中小企業白書2026の第1-1-26図には、もっとはっきりした数字が載っています。従業員一人当たりの付加価値額でみる労働生産性は、2024年度で大企業1,666.1万円、中規模企業608.5万円、小規模企業537.6万円。1990年度はそれぞれ1,158.6万円、600.8万円、551.0万円でした。大企業だけが伸びて、中小企業は30年ほぼ動いていないということです。なお白書の区分でいう大企業は資本金10億円以上、中規模企業は1千万円以上1億円未満で、資本金1億〜10億円の企業はどちらの区分にも入っていません。
しかも打ち手が偏っています。日本商工会議所・東京商工会議所の「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」(2023年7〜8月調査・n=2,121・複数回答)では、人手不足への対策として「正社員の採用活動強化」が68.5%で最多でした。一方で「業務プロセスの見直し」33.2%、「社員の能力開発」28.9%、「IT化等設備投資による生産性向上」25.2%です。複数回答なので「採用を選んでAIを選んでいない」という対立の話ではありません。ただ生産性向上側の打ち手が相対的に手つかずだとは言えます。調査時点は2023年の夏で、生成AIが広く使われ始めた初期の数字です。
AI要約の「次の壁」は、自社の様式に戻す工程
要約はできた。それでも議事録は完成しない
ここが、この記事で一番言いたいところです。
文字起こしをAIに渡して要約させる。これはもう、多くの会社ができています。うちの支援先でも「文字起こしと要約までは去年やりました」という会社が増えました。この段階の整理は文字起こしとAI要約で会議後の情報共有を早くする方法で書いたとおりです。
でも、現場の作業は終わっていないんですよ。なぜか。会社の議事録には、その会社の決まった様式があるからです。
見出しの並び順が決まっている。決定事項は箇条書きで、ToDoは担当・期限・内容の3列の表。冒頭に会議名と出席者、末尾に次回日程。フォントとインデントまで決まっている会社もあります。ところがAIが返してくるのは、たいてい「きれいだけど自社の様式ではない文章」です。だから担当者は、要約を見ながらWordの中で見出しを付け替え、表に流し込み、体裁を整え直す。この作業が毎回残ります。
「Copilot 議事録」で検索して上位に出てくる解説記事を読み比べてみたのですが、ここを扱っている記事は見つかりませんでした。要約のプロンプトは山ほどあるのに、「自社様式に戻す工程」が誰の記事にも載っていない。でも実務でしんどいのはこっちなんですよ。9月1日のセミナーが実演②に「会社フォーマットのまま流し込み(Wordサイドパネル)」を丸ごと1コマ充てているのは、そういう理由です。
今日から試せる汎用プロンプト(自社様式に寄せる版)
セミナー参加者には「議事録作成プロンプト(自社様式に合わせる手順付き)」が後日プレゼントされますが、それを待たなくても試せる汎用版を置いておきます。今日、手元の文字起こしでそのまま試せるはずです。
あなたは議事録の編集担当です。以下の【文字起こし】から、下の【出力様式】のとおりに議事録を作ってください。
【厳守事項】
1. 文字起こしに書かれていないことは、一文字も足さない
2. 判断できない箇所は「(要確認)」と書いて残す。推測で埋めない
3. 「決定したこと」と「検討中の意見」を絶対に混ぜない
4. 各項目の末尾に、根拠になった発言を「引用:」として原文のまま1文添える
【出力様式】
■ 会議名 / 日時 / 出席者
■ 決定事項(箇条書き・1項目1文)
■ 未決事項と次回までの持ち越し
■ ToDo(担当者/期限/内容 の3列の表)
■ 主要な論点の要約(3〜5行)
【文字起こし】
(ここに貼る)
ポイントは3つあります。まず【出力様式】を先に固定すること。「議事録にして」だけだと、AIは毎回違う形で返してきます。次に「引用:」で根拠の1文を毎回付けさせること。あとの検証が、これで一気に軽くなるんですよ。そして「推測で埋めない・(要確認)を残す」。空欄を残せるAIの出力だけが、実務で使えます。
【出力様式】の中身を、御社の議事録テンプレートの見出しにそのまま置き換えて使ってください。これで「自社の様式に寄った状態」から出力が返ってきます。うまくいかないときは、様式を減らしてください。見出しを5つから3つに削るだけで、精度が変わることがあります。
追加費用なしの範囲と、有償で変わること
ここは事実関係が入り組んでいるので、公式の書き方に忠実にいきます。
まず製品名から。2026年8月時点で、法人向けの現行名称は「Microsoft Copilot」「Microsoft Copilot Chat」です。「Microsoft 365 Copilot」は旧称ですが、購入画面やライセンス表記には移行期間として旧名称が残っています。だから同じものを2つの名前で見ることがあります。
Microsoft公式の説明を要約すると、こうです。Microsoft Copilot は組織のデータとWebを使い、アドオンライセンスが必要。Microsoft Copilot Chat はWebを使い、ユーザーが組織のデータを提供でき、追加ライセンスは不要。
| 論点 | 追加ライセンスなしの範囲 | 有償アドオンで変わること |
|---|---|---|
| 参照するデータ | Webを使う。組織のデータはユーザーが自分で渡す | 組織のデータとWebを使う(アドオンライセンスが必要) |
| Word等のファイル生成 | 公式に「Microsoft Copilotライセンスの有無にかかわらず利用可能」と書かれた機能がある。ただし参照範囲はWebと明示指定したファイルに限られ、社内データ横断ではない | 社内データを横断して参照できる |
| アプリ内のCopilotチャット | 組織のライセンスとテナント構成によって2通りに分かれる。アプリ内のラベルで判定する | ラベルが「M365 Copilot (Premium)」になる |
| Teams会議 | 文字起こし(トランスクリプト)の取得自体はCopilotライセンス不要。管理者のポリシー設定で決まる | AI議事録(intelligent recap)は Teams Premium または Copilot ライセンスが必須 |
よく「無料だとWordの中でCopilotは使えない」と言われますが、これは断定できません。公式には、アドオンを持っていないユーザーにも2つの状態が存在します。だから読者にとって一番実用的な答えは「Wordのパネルに出ているラベルを見てください」です。
無料と有料の線引きは、Wordのパネルのラベルで決まる
- M365 Copilot (Basic):有償アドオンなしでも、それらのアプリ内のCopilotに標準アクセスがある状態
- Copilot chat (Basic):有償アドオンなしで、Word・Excel・PowerPoint・OneNoteのCopilotチャットは使えない状態
- M365 Copilot (Premium):有償アドオンあり。組織のデータとWebを横断できる状態
どちらになるかは組織のライセンスとテナント構成次第です。だから同じ「うちは無料の範囲です」という2社で、できることが違います。料金プランそのものの比較はMicrosoft Copilotの料金を無料〜法人プランまで比較に譲ります。価格はキャンペーン中で変動するので、金額は公式ページで確認してください。
なお、Wordの参照ファイル指定の下書き機能(Draft with Copilot)には「参照は最大20アイテム」「Word・PowerPoint・PDF・TXTに対応」という公式の記載があります。ただし入力できる文字数の上限は、Microsoft公式に具体的な数値の記載がありません。だから「約1万字の文字起こしを無料の範囲で議事録にできます」とは、仕様として断定できないんですよ。9月1日のセミナーはそれを実機でその場で実演するという内容です。自分の環境でどこまでできるかは、そのラベル次第です。
検証していない議事録は、議事録じゃない
「言っていないこと」が混ざるリスクは、Microsoftが自分で書いている
議事録は、決定の記録です。契約や人事や発注の根拠になります。だから間違いの重さが、ブログ記事の誤字とは全然違う。
Microsoft公式のドキュメントには、こう書かれています。大規模言語モデルの既知のリスクは、根拠のないコンテンツ——一見正しく見えるが元資料には存在しないコンテンツ——を生成しうることである、と。そして「利用者は Microsoft Copilot の出力を使用する際、常に注意を払い、自身の最善の判断を用いるべきである」。
Word公式のFAQも同じ立場です。「WordのCopilotの提案はAIによるもので、ときに誤りを犯し、事実を誤解し、または不正確な結果を生成することがある」。PowerPoint公式のFAQはもっと直接的で、「意味を理解したり正確性を評価したりはできないので、書いたものに必ず目を通すこと」と書いてあります。
売っている側が「必ず人が確認しろ」と明記しているんです。ここを飛ばして「AIが議事録を作ってくれるから楽になりました」と言うのは、正直こわいですよ。
確認している人は4割いない
では実際、みんな確認しているのか。総務省の令和8年版情報通信白書 基礎調査 成果報告書(2026年3月・委託先はNTTデータ経営研究所)に、生成AI利用経験者への設問があります。
「生成内容が正しいか、他の方法で確認している」は日本で38.2%。「生成内容の根拠や判断理由を確認している」は27.4%。どちらも半数に届いていません。
効果のデータも、限界のデータも、同じ調査から両方見たほうがいいと思います。英国政府(Government Digital Service)は、公務員約2万人・12組織を対象に3か月間、Microsoft 365 Copilotの実証を行いました(試行2024年9〜12月・2025年6月2日公表)。その結果、参加者は1日平均26分の時間削減、年間換算で13日相当という数字が出ました。3分の1超が1日30分以上の削減、70%超が「情報検索や単調作業の時間が減り、戦略的活動の時間が増えた」と回答し、82%が導入前の働き方には戻りたくないと答えています。
ただ、この26分は参加者の自己申告です。実測ログではありません。総務省の報告書にも「(対象者による自己申告)」と明記されています。対象は英国の公務員約2万人で、日本の中小企業ではありません。だから「うちでも1人あたり26分減る」とは読めないんですよ。
そして同じ実証で、17%は明確な時間削減を認識していませんでした。複雑さやニュアンスを要する業務、データ量の多い業務では効果が限定的で、常に人間の監督が必要だとも報告されています。26分と17%は、同じ1本の実証の両面です。片方だけ引く記事は信用しないでください。
原文照合の型と、その前提になる録音品質
じゃあ何をすればいいのか。手順にします。
AIが作った議事録を人が検証する3ステップ
- 1. 決定事項だけ先に照合:決定内容・日付・担当を、文字起こしの該当箇所と1対1で突き合わせる
- 2. 数字と固有名詞を全部拾う:金額・日付・社名・型番はAIが最も間違える。原文検索で当てる
- 3. 「該当なし」を残す:原文に見つからない行は消すか(要確認)にする。黙って通さない
照合そのものもAIに手伝わせられます。ただし「合っていますか」と聞くのは最悪の質問です。だいたい「合っています」と返ってきます。こう聞いてください。
上で作った議事録の各項目について、元の【文字起こし】に同じ内容があるかを1項目ずつ照合してください。
・原文に該当箇所がある → 「該当あり」と書き、その原文を1文そのまま引用する
・原文に該当箇所が見つからない → 「該当なし」と明記する(言い換えや推測で埋めない)
最後に「該当なし」だった項目だけを一覧にしてください。
これで人が目で見る対象が、全文から「該当なし」の数行に減ります。検証する場所を絞るのが正しい設計なんですよ。全文を毎回読み直す運用は、たいてい3回目でやめてしまいます。
そして大前提が一つ。議事録の精度は、AIの性能より前に録音の質で決まります。 会議室の真ん中にスマホを置いた録音だと、離れた席の発言が落ちます。落ちた発言は文字起こしに存在せず、存在しないものは要約にも出てきません。マイクを話者の近くに置く、複数人が同時に話さない、社名や型番は口頭で言ったあとチャットにも書く。この3つだけで文字起こしの質が変わります。オンライン会議なら各自のPCマイクで拾えるので、この点は対面より有利になります。
会議の音声をAIに渡す前に、会社として決めておくこと
- 範囲:どの会議は渡してよく、どの会議はダメか(人事・与信・未公表の取引は別扱いにする)
- 経路:どのアカウントで使うか。法人向けの保護は法人アカウントでのサインインが前提
- 記録:文字起こしの原文をどこに何日残すか。議事録だけ残して原文を捨てると照合できない
「そもそも会議の発言をAIに読ませて大丈夫なのか」という質問は毎回出ます。これは設定と契約の話なので、Copilotに社内情報を学習させない設定と考え方にまとめてあります。
なぜこれを経営者が見るべきなのか
工数を金額に換算できるのは経営者だけ
ここまで時間の話をしてきました。でも社内で予算が動くのは、時間が金額になった瞬間です。
そして金額に換算する掛け算の、最後の項を持っているのは経営者だけなんですよ。
議事録のコストを出す式(単価は御社の数字を入れる)
- 式:1回の議事録にかかる時間 × 月の会議回数 × 12か月 × 御社の人件費単価(社会保険料込み)
- 注意:この単価を私が勝手に置いた時点で、出てくるのは私の仮定の数字に変わる
- 結論:単価を知っているのは経営者と経理だけ。だから測れるのも経営者だけ
この式は3つの項でできています。誰がその数字を持っているかを並べると、話がはっきりします。
| 掛け算の項 | 数字の出どころ | 社内で数字を持っている人 |
|---|---|---|
| 1回の議事録にかかる時間 | 作成担当者の実感。ストップウォッチで2回測れば出る | 議事録の担当者 |
| 月の会議回数 | 会議室の予約表・カレンダー・議事録の保存フォルダ | 総務・各部門長 |
| 人件費単価(社会保険料込み) | 給与台帳と法定福利費 | 経営者・経理 |
3つのうち2つは、現場がすでに持っています。3つ目だけが現場から見えません。
私はここに数字を入れません。入れた瞬間に、それは私の仮定の話に変わってしまうからです。よく見かける「議事録に年○百万円のロス」という記事の数字は、書いた人が置いた仮の単価で計算されています。参考にはなりますが、稟議には使えません。
担当者はこの式を持っていません。自分の人件費単価を知らないし、他部署の会議回数も知らない。だから彼らは「時間がかかる」までしか言えず、「いくら払っている」と言えない。経営が「じゃあ測って」と言わない限り、この数字は永久に出てこないんです。
30分・昼休みだから、担当者を出すのに決裁が要らない
ここが実務的に一番大きいと思っています。
社外研修に人を出すのって、地味に面倒なんですよ。半日の研修なら、その日のシフトを組み替えて、往復の時間を見て、上司の承認を取る。この手間が「今度でいいか」を生みます。
9月1日のセミナーは12:00〜16:00ではありません。12:00〜12:30の30分、オンライン、無料です。 本編25分+Q&A5分で、昼休みに収まります。移動もない。だから経営者が「これ、あなた出てみて」と言えば、それで終わりです。シフト調整も交通費精算も要りません。定員は20名で、形式はGoogle Meet。視聴URLは前日までに送られます。
30分で全部が解決するとは言いません。30分で決まるのは「自社でやるか、やらないか」だけです。でもその判断が付かないまま半年経っている会社を、私はかなりの数見てきました。
すでに払っているライセンス料が、使われないまま出ていく
もう一つ、現場では判断しようがない論点があります。埋没している原資の話です。
Microsoft 365を契約している会社は、私が回っている範囲でも徳島にかなりあります。WordとExcelとOutlookを使うために、毎月ライセンス料が出ていく。ところが研修先で挙手をお願いすると、「Copilotのパネルが出ているのに一度も開いたことがない」という方がかなりの割合で手を挙げるんですよ。
これ、機会損失というより支払済みの原資が使われないまま毎月出ていっている状態です。追加投資ゼロで取り戻せる部分がどこまでかを確定するには、自社のライセンス構成とテナント設定を見る必要があります。担当者には見えません。というより、見る権限がない。
プラン選択や全社展開まで踏み込んだ経営判断の話は、9月8日の経営者向けCopilotセミナーの記事のほうで書きました。この記事は、議事録という1業務に絞っています。
まとめ:議事録は「測ってから」削る
今週やること3つ
順番を間違えないでほしいんです。ツールの前に測定です。
まず、直近1か月の会議を数える。次に、議事録を作っている人に「1本あたり何分かかっているか」を聞く。最後に、その2つを掛けて、人件費単価を入れる。ここまでが経営の仕事です。所要時間は、たぶん30分もかかりません。
この数字が出てから、AIで削れる部分を見に行く。測る前に導入した効率化は、時間が何時間減ったのかを永久に証明できません。 逆に測っていれば、Copilotでも他のツールでも、3か月後に同じ式で引き算するだけで結果が出ます。
研修や勉強会をセットにした会社ほど、効果を実感している
ツールを入れただけでは足りない、というデータもあります。
中小企業庁『2026年版中小企業白書』の第2-2-91図では、研修会や勉強会に「取り組んでいる」事業者のほうが、取り組んでいない事業者よりAI活用の効果実感が高いという結果が出ました。白書自身も「研修会や勉強会も併せて実施することが重要」と結論づけています。同白書の第2部第2章第2節のまとめでは、省力化投資(AI活用・ITツール活用)に取り組んだ事業者が「効率的成長型」の類型に移動する傾向があり、労働生産性が向上している可能性を指摘しました。
導入と学習をセットにした会社だけが、効果を実感できている。だから30分でも、人が見て学ぶ場に出る意味があります。
9月1日のセミナーで実際に見られること
当日の実演は、カンマンAI事業部の田中健介が担当します。1時間の会議の文字起こし——約1万字——を、会社のフォーマットのままの議事録に5分で変えるところを、その場で流します。
12:03から実演①として文字起こしから議事録の中身をつくる工程(追加費用なしの範囲)、12:11から実演②として会社フォーマットのまま流し込む工程(Wordサイドパネル)、12:18から実演③として元の発言と照合する検証工程。12:23に無料と有料の線引きを整理して、12:26から自社で始める場合の案内です。この記事で書いた「様式に戻す工程」と「原文照合」が、そのまま2コマ分になっています。
参加者全員に、議事録作成プロンプト(自社様式に合わせる手順付き)が後日プレゼントされます。カメラON推奨・マイクミュート・質問はチャットで。録音録画と視聴URLの第三者共有はできません。
参考・出典
政府・公的機関
- 総務省『令和8年版 情報通信白書』(図表Ⅰ-2-1-2/Ⅰ-2-1-3/Ⅰ-2-1-6/Ⅰ-2-1-7/Ⅰ-2-1-10) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/pdf/n1210000.pdf
- 総務省 令和8年版情報通信白書 基礎調査 成果報告書(2026年3月・委託先:NTTデータ経営研究所) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/r08_02_houkoku.pdf
- 中小企業庁『2026年版中小企業白書』第2-2-87図/第2-2-88図/第2-2-89図/第2-2-90図/第2-2-91図 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2026/chusho/b2_2_2.html
- 中小企業庁『2026年版中小企業白書』第1-1-26図(財務省「法人企業統計調査年報」/付属Excel) https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2026/chusho/b1_1_4.html / https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2026/chusho/excel/b1_1_26.xlsx
- 国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口(令和5年推計)』(2023年4月26日公表) https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/db_zenkoku2023/g_tables/xls/pp2023gt0101.xlsx
- 日本生産性本部『労働生産性の国際比較2025』(2024年データ・2025年12月22日公表) https://www.jpc-net.jp/research/detail/007846.html
- 英国政府 Government Digital Service “Microsoft 365 Copilot Experiment: Cross-Government Findings Report”(試行2024年9〜12月・2025年6月2日公表) https://www.gov.uk/government/publications/microsoft-365-copilot-experiment-cross-government-findings-report/microsoft-365-copilot-experiment-cross-government-findings-report-html
民間調査
- 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」(2026年8月17日公表) https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260817-laborshortage202607/
- パーソル総合研究所・中原淳(立教大学)共同「長時間労働に関する実態調査」(2017年9月・2018年3月実施/原URLは現在参照不可のためアーカイブ版) https://web.archive.org/web/20260520161505/https://rc.persol-group.co.jp/news/201809060935
- 日本商工会議所・東京商工会議所「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」(2023年7〜8月調査・n=2,121・複数回答) https://archive.jcci.or.jp/20230928_diversity_release.pdf
- キヤノンマーケティングジャパン 議事録作成に関する調査(2022年12月・n=1,000) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000939.000013943.html
Microsoft公式ドキュメント
- Microsoft Copilot Transparency Note(根拠のないコンテンツに関する注意・製品名称の変更) https://learn.microsoft.com/en-us/copilot/microsoft-365/microsoft-365-copilot-transparency-note
- WordのCopilotに関するFAQ https://support.microsoft.com/en-US/Word/frequently-asked-questions-about-copilot-in-word
- Draft and add content with Copilot in Word(参照は最大20アイテム/対応形式) https://support.microsoft.com/en-us/word/copilot/draft-and-add-content-with-copilot-in-word
- Enterprise data protection in Microsoft Copilot and Microsoft Copilot Chat https://learn.microsoft.com/en-us/microsoft-365/copilot/enterprise-data-protection
- License Options for Microsoft Copilot(アプリ内ラベルの定義) https://learn.microsoft.com/en-us/microsoft-365/copilot/microsoft-365-copilot-licensing
よくある質問
Q. Copilot 議事録は、追加費用なしの範囲でどこまでできますか? A. 一律には決まりません。組織のライセンスとテナント構成によって変わります。判定方法は公式に案内されていて、Wordのパネルに出ているラベルを見ます。「M365 Copilot (Basic)」なら有償アドオンなしでもアプリ内のCopilotに標準アクセスがある状態、「Copilot chat (Basic)」ならWord・Excel・PowerPoint・OneNoteのCopilotチャットは使えない状態です。まずそのラベルを確認してください。
Q. Copilot 議事録の精度を上げるために、会議中にできることはありますか? A. あります。しかもAI側の設定をいじるより、こちらのほうが精度に直結します。マイクを話者の近くに置く、複数人が同時に話さない、社名・型番・金額は口頭で言ったあとチャットにも書く。この3つです。文字起こしに残らなかった発言は要約にも出てこないので、精度は録音の質で先に決まります。
Q. AIが作った議事録に、誰も言っていない内容が混ざることはありますか? A. あります。Microsoft公式が、一見正しく見えるが元資料には存在しないコンテンツを生成しうると明記していて、出力を使う際は常に注意を払い自身の判断を用いるべきだと書いています。対策は原文照合です。決定事項・数字・固有名詞を文字起こしと突き合わせ、原文に見つからない行は消すか「(要確認)」を残す。この工程を省いた議事録は、社内文書としては使えません。
Q. 9月1日のセミナーは、担当者だけ参加させれば足りますか? A. 担当者だけでも学べます。ただ、議事録の工数を金額に換算する式の最後の項——人件費単価——を持っているのは経営側です。30分・昼休み・オンラインなので、経営者ご自身が一緒に見て、その場で「自社でやるか」を決めてしまうのが一番早いと思います。定員は20名になっています。
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代表取締役
貝出康
1963年徳島市生まれ。 1999年に楽天の三木谷社長の講演を聴き、イン ターネット時代の到来を悟る。翌年、ホームペ ージ制作会社カンマン設立に参画し、これまで のキャリアで培った営業や人事のスキルを活か しての顧客開拓や社内・労務管理を実践。2019 年〜代表取締役。








