非エンジニアの私がGPT-6 Astra×Codexで3Dバイクレースゲームを作ったら|2行の指示から5車種・6コース・公開URLまで、指示23回・実作業8時間の全記録
公開日:2026年09月15日

代表取締役
貝出康

「最高のオートバイのレースゲームを作ってほしい」。
私がAIに送った最初の指示は、これだけです。文章にして2行。車種も、コースの数も、操作方法も、画面の色も、何も書いていません。
指示を送ってから27時間後には、URLを開いたその場で遊べる3Dのバイクレースゲームの第1版が公開されていました。ログインは要りません。そして5日目には、選べる車種は5つ、コースは6つ、ライダーは5人、難易度は5段階になっていました。ドラッグで車体を回して眺められるガレージがあって、走り出せば順位・ラップタイム・ギア・速度・バンク角がリアルタイムで表示されます。私はコードを1行も書いていません。 ウェブ制作会社の代表ではありますが、プログラムは書けない、正真正銘の非エンジニアです。
前回の記事では、GPT-6 Astraに指示を1回送って席を立ち、45分後にウェブサイトが公開されていた話を書きました。今回は、その続きです。ただ、前回とは違う点が2つあります。
1つは、指示が1回で終わらなかったこと。私が送った指示は全部で23回。5日間で実作業は約8時間かかりました。もう1つは、途中でAIが止まり、私が手を動かす場面があったこと。つまり今回は「魔法みたいだった」という話ではありません。非エンジニアがAIと一緒にモノを作るとき、実際に何が起きるのかを、指示の全文とログの時刻つきで全部書きます。
実物はこちらです。ログイン不要で、今も遊べます。
何をやったのか:Codexに2行だけ送った
使ったのは、OpenAIのコーディングエージェント Codex(デスクトップアプリ)です。中で動いていたモデルは GPT-6 Astra。OpenAIが2026年9月3日に発表した最新モデルで、公式の発表文では、コンピュータ操作・ブラウジング・ソフトウェア開発などで最先端の性能だと説明されています。同じ発表文には、Sitesという公開機能と組み合わせると、ウェブサイト・ウェブアプリ・ゲームを指示から直接作って、ホストして、共有できるとも書かれています。今回は、その「ゲーム」の部分を本気で試した形です。
推論の深さは、いちばん深く考える設定にしました。Codexの作業ログには、モデル名として gpt-6-astra、推論設定として ultra が記録されています(この記事の時刻や回数は、すべてこのログから取っています)。
送った指示の全文がこれです。
▼ 私がCodexに送った最初の指示(全文)
GPT-6 Astra の性能を実感できるような、最高のゲームを作成してほしいです。
リアルなオートバイのレーシングゲームで、オートバイも実際のモデルをリアルに模写したグラフィックにしてください。
▲ 指示はここまで
前回のウェブサイトの記事で、私は「要件定義書のように、誰のために何ができないと困るかを書いた」のがうまくいった理由だと書きました。今回は、あえて逆をやっています。ほぼ丸投げです。「最高の」「リアルな」という、人によって受け取り方が違う言葉しか渡していない。AIがこれをどう解釈して、何を勝手に決めるのかを見たかったんです。
できあがったもの:5車種・6コース・5ライダー・難易度5段階
まず、今公開されている版(バージョン2.4)の中身から。

これがガレージ画面です。左に3Dの車体、右にマシン・ライダー・難易度の選択、下にサーキットの選択が並びます。車体はドラッグで回転、スクロールで拡大。「車体を鑑賞」を押すとパネルが消えて、車体だけを眺められます。
| 選べるもの | 内容 |
|---|---|
| マシン | Ducati Panigale V4/Yamaha YZF-R1/Honda CBR1000RR-R/BMW S 1000 RR/Kawasaki Ninja ZX-10R(各3色) |
| サーキット | 6コース。Riviera Circuit 1.89 km、Alpine Pass 2.31 km、Sakura Technical 1.88 km。Dunes Grand Prix 2.27 km、Harbor Ring 2.42 km、Forest Flow 1.94 km。すべて架空 |
| ライダー | 蓮 TAKAHASHI(#07)/Sofia MORETTI(#21)/Kai MORGAN(#44)/Luna VEGA(#93)/Alex LAURENT(#12)※架空。配色・ゼッケン・姿勢が変わる |
| 難易度 | 入門/初級/中級/上級/最上級(減速補助の強さとライバルの速さが変わる) |
| セッション | ライバル3台との3周レース/タイムアタック/フリーライド |
| 操舵 | 補助あり/手動操舵。視点は追走・車載・ワイドの3種類 |
| 操作 | キーボード。画面幅が狭いときはタッチボタン。ゲームパッドにも対応する実装(実機は未検証) |
走り出すと、こうなります。

車体を倒してコーナーへ。画面右下に回転数・ギア・速度・バンク角、左上に順位とラップ、左下にコース図と現在位置。画面上部には「減速補助 作動中」と出ています。難易度1〜3ではコーナー手前でゲームが自動で減速してくれるので、私のような下手でも最初から周回できるんです。

車載視点に切り替えると、ハンドルとメーターの向こうにコースが流れていく。この視点で走っていると、ちゃんとメーターの数字が動く。細かいですが、こういうところで「作り込まれている感」が出るんですよね。

3周走り切ると、こういう結果画面が出ます。難易度2・補助ありで、アクセルだけを押し続けて3周走らせた結果です。減速補助がコーナー手前で速度を落としてくれるので、それでも完走できました。総合タイム2分39秒、ベストラップ51秒。
「選択肢」が生えていった順番
ここからが本題です。今の画面には選択肢が並んでいますが、最初からあったわけではありません。私の1行の指示に対して、1つずつ生えていったんです。順番に書きます。
| 段階 | 公開/完成の時刻 | きっかけになった私の指示 | 生まれたもの |
|---|---|---|---|
| v1.0 | 9/7 15:03 | 最初の2行+「続けてください」×2 | 車種1(Ducati)・コース1・ライバル3台・車載視点・エンジン音・ラップ計測 |
| v1.1 | 9/8 00:02 | 「バイクの種類を選択できるようにしたい。ヤマハ、ホンダを入れたい。」 | 車種選択(3車種×3色)・選択の保存 |
| 初公開 | 9/8 00:20 | 「このゲームを公開できますか?」 | ログイン不要で遊べる公開URL |
| v2 | 9/8 10:13 | 「サーキット6種類・マシン5種類・ライダー5人・難易度5段階」 | コース選択・ライダー選択・難易度が一気に |
| v2.1 | 9/10 00:37 | 「超リアルにすることは可能ですか?」「実物そっくりにしたい」 | Ducatiを実データの精密モデルへ。鑑賞モード |
| v2.2 | 9/10 12:28 | 「他の車種なども進めてください。」 | ライダーの造形、路面・草・空を実写由来の素材へ |
| v2.3〜2.4 | 9/10 18:10 | Sketchfabの手作業+「サイトを更新してください。」 | 全5車種が精密モデルに。公開版を更新 |
1日目:2行の指示から26分で「骨格」ができた
9月6日の21時28分に指示を送りました。ログを見ると、2分以内にCodexが自分でサブエージェントを2体起動しています。 名前は「motorcycle(車体担当)」と「world(コース担当)」。私は「分担して」とも「サブエージェントを使って」とも言っていません。車体とコースは別の人に作らせた方が速い、と自分で判断したわけです。
21時48分には、こんな中間報告が来ました。
スタート前から押していたアクセルが発進時に切れる不具合を見つけたので修正します。
私はまだ何も触っていません。自分でテストして、自分でバグを見つけて、自分で直すという流れが、最初の20分ですでに回っています。

これは、指示から19分後の21時47分に、Codexが検証用に自分で撮ったガレージ画面です(私が撮ったものではありません)。赤いバイクがいますが、よく見るとカウルがぷっくりしていて、おもちゃのようです。この時点の車体は、球や円柱を組み合わせてプログラムで描いた自作の形でした。ここは覚えておいてください。あとで大事になります。

同じく21時49分の走行画面。この段階で順位表、ラップタイム、ギア、速度、バンク角の表示まで入っています。この日の作業はここまでで、26分。私は「続けてください」と1回送っただけです。
2日目:「続けてください」の一言で完成報告が来た
翌日の14時55分に「続けてください」と送ると、8分後の15時03分にこう返ってきました。
「APEX RIDER」完成です。Panigale V4を参考にした3D車体、ライバル3台とのレース、車載視点、エンジン音、ラップ計測を実装しました。完走・操作・オフライン起動を確認済みです。
ゲームの名前も、Codexが勝手に決めています。指示の中に「APEX」も「RIDER」も出てきません。エンジン音は、その場で合成した音です(実車の録音は使っていません)。配布形式は、追加インストールなしで開ける1つのHTMLファイル。「最高のゲームを作って」の解釈を、全部AIが埋めた形です。
「ヤマハ、ホンダを入れたい」の1行で、車種選択が生えた
遊んでみて、最初に思ったのが「車種を選びたい」でした。23時40分に送った指示がこれです。
バイクの種類を選択できるようにしたい。ヤマハ、ホンダを入れたい。
これだけ。どこに選択ボタンを置くか、何色を用意するか、選んだ内容を保存するか、何も言っていません。22分後の0時02分にできていたのは、次のものでした。
- 選択UI:ガレージに DUCATI/YAMAHA/HONDA のボタンが並び、選んだ車種がそのままレースに出る
- 3車種×3色:Yamaha YZF-R1、Honda CBR1000RR-R を追加し、各車に3色のカラーを用意
- 保存:選んだ車種と色は、ブラウザを閉じても残る
- 記録の分離:自己ベストを車種ごとに分けて保存し、それまでのDucatiの記録も引き継ぐ
- 画面の修正:縦長の画面で車体と説明文が重なる問題を、ついでに直している
仕様書は書いていません。「〜したい」の1行から、周辺のことまで含めて実装が返ってくる。この感覚は、実際にやってみないと分からないと思います。
「左右キーを逆にして」——AIが間違いを認めて、説明も訂正した
ただ、遊んでいて気になったことがありました。左キーを押すと右に倒れる。逆なんです。23時55分に「バンク操作の左右キーを逆にしてください。」と送ると、返ってきた報告がこれでした。
追走画面で確認すると、従来はキーと車体が傾く向きが逆になっていました。今回の反転で、←/Aが画面左、→/Dが画面右になります。先ほどお伝えした左右の説明を訂正し、ガイドも実際の動きに合わせます。
注目してほしいのは「先ほどお伝えした左右の説明を訂正し」の部分です。実装が逆だったこと、そして自分の説明も間違っていたことを、両方認めている。 そのうえで、左右のキーを押した状態の画面をそれぞれ撮って比較する検証を12項目やり直しています。
ついでに書いておくと、私の環境ではAIが作業を終える前に日本語の品質検査が自動で走る設定にしてあります。このとき説明書で9件の指摘が出て、Codexが書き直して0件にしていました。人間の作業と同じで、「できました」の前に検品を挟む仕組みがあると、出てくるものの質が変わります。
「公開できますか?」——逆に質問された
0時09分に「このゲームを公開できますか?」と送ります。すると、すぐには公開せず、こんな質問が返ってきました。
公開範囲はどちらにしますか? Sitesの初期設定は本人のみ閲覧できるため、ログイン不要で公開するかを確認しています。
私が「ログイン不要」の方を選ぶと、9分後の0時20分には公開が終わっていました。「公開できますか?」と聞いてから11分です。Codexは公開したあとに、ログインしていない状態でURLに到達できるか、公開されたファイルが手元のものと一致するか、実際にブラウザでレースを始めて一時停止できるかまで確認して、記録を残しています。
ここまでで、暦の上では最初の指示から26時間52分。ただし、Codexが実際に動いていた時間を足すと 約1時間15分 です。1時間15分で、URLを配ればログインなしで遊べる3Dバイクゲームが公開された。これが第1段階の実測値です。
2回目の大きな指示で「6コース・5車種・5ライダー・難易度5段階」
翌朝、公開されたURLを貼って、新しく指示を送りました。
▼ 9月8日 9時34分に送った指示(全文)
https://apex-rider.yasushi-kaide.chatgpt.site/
こいつのバージョンアップ版を作成してください。
具体的な追加・変更内容は以下の通りです:
1.選択機能の拡張(以下を随時選択できるようにする):
• サーキット:6種類
• マシン:5種類
• ライダー:5人
2.難易度設定:5段階程度で設定できるようにする
3.モーターサイクルのリアリティを向上させる
▲ 指示はここまで
23分後の9時57分に、こう返ってきました。
APEX RIDER 2 を作成し、Sitesにバージョン2として保存しました。6サーキット・5マシン・5ライダー・難易度5段階。走行中も設定変更可能。車体形状、ライダーの体重移動、制動時の前沈み、変速・グリップ挙動を改良。物理テスト12件+ブラウザー確認61件に合格。
途中の9時47分には「独立レビューで、減速補助が弱くなる重複処理と、再スタート時に直前の姿勢が残る問題が見つかったため、修正しました」という報告も入っています。実装したエージェントとは別のエージェントにレビューさせて、そこで見つかったバグを直してから報告してくる。 前回のウェブサイトでも見た流れですが、今回も同じでした。
そして公開の前に、また確認が来ます。「現在のURLへ、この完成版を一般公開で反映してよいですか?」。私が「公開してください。」と送って、v2が公開されました。

6つのコースは、名前も地形もぜんぶ架空です。海沿いの高速コース、高低差のある山岳、桜の並木を抜ける連続S字、砂漠のロングストレート、港湾のストップ&ゴー、森の高速スイーパー。コースの選択ボタンには、それぞれのコース形状が小さく描かれています。これも私は頼んでいません。

ライダーを変えると、スーツとヘルメットの配色、ゼッケン、伏せ姿勢が変わります。この画面は紫のスーツの「#93 Luna VEGA」がKawasakiでAlpine Passのスタートに並んだところ。ライダー5人に走行性能の差はなく、見た目と姿勢だけが変わる設計です。ここも、Codexが自分で決めたルールでした。
「超リアルにできますか?」——AIの正直な答えと、実車モデルへの置き換え
さて、ここまでのバイクは、最初に書いたとおり「球と円柱でプログラムが描いた形」でした。遠目には赤いスーパーバイクに見えますが、近くで見るとおもちゃです。私の最初の指示には「実際のモデルをリアルに模写した」と書いてあったので、9月9日の夜、率直に聞いてみました。
このバイクレースのゲームのオートバイとか人間とかサーキットの周辺とか、これを超リアルにすることは可能ですか?
特にオートバイのグラフィックは実物そっくりにしたいです
4分後に返ってきた答えが、私はかなり好きです。
はい。特にオートバイは、実車にかなり近い見た目を目指せます。ただし、今の車体モデルを作り替える規模の改修になります。現在は球や円柱などを組み合わせた車体なので……
そのあとに3段階の改善案が並び、最後にこう付いていました。
利用できるデータの品質と実機での描画性能を確認するまでは、「写真と見分けがつかない」とまでは約束できません。
できることと、約束できないことを分けて言う。 そして「まずPanigale V4を1台、近くで眺めても実車らしい品質に仕上げ、走行中の軽さも確認する」という進め方を提案してきました。私は「実行してください。」の一言で返しています。
実車の3Dデータを「借りてくる」という判断
50分後、Ducatiが別物になっていました。

Codexがやったのは、自分で形を描き直すことではありません。Sketchfab(3Dモデルの共有サイト)で、作者がCC BY 4.0のライセンスで公開しているDucati Panigale V4のモデルを探してきて、ゲームに組み込んだんです。CC BY 4.0は、作者名とライセンスを表示し、変更した場合はその旨を示せば、改変も商用利用も含めて使える、という国際的なライセンスです。
ここで感心したのが、権利まわりの扱いでした。
- ライセンスの確認:候補のモデルごとに、ダウンロード可能かとライセンスの種類を確認したうえで採用を判断
- 条件外は不採用:別の配布元(フライトシミュレーター向けの素材集)で見つけたモデルは、ライセンスの条件が合わないとして使わなかった
- クレジット表示:ゲーム内の「車体について」に、作者名・出典リンク・ライセンス・ゲーム用に何を調整したかを表示
- 表示の自動検査:公開前のテストに「5人の作者名がすべてクレジットに含まれているか」を確かめる項目を自分で入れた

これがゲーム内のクレジット画面です。5車種の作者と出典、背景素材の出典(Poly Havenという、CC0=著作権を放棄した素材を配布しているサイト)、Three.jsという3Dライブラリのライセンス、そして最後に「Made with GPT-6 Astra.」。ここに書かれている「メーカー公式のCAD・公認モデルではありません」という免責も、Codexが自分で書いたものです。
翌日の12時28分には、ライダーの造形と、路面・草・空の素材も実写由来のものに置き換わりました(v2.2)。このとき独立レビューが「草が地形から浮いている。最大で4.769m」という問題を見つけて修正しています。4.7m浮いた草、見たかった気もしますが。
止まりかけた4時間半:AIにできなかったこと
ここから、記事のいちばん正直な部分です。
Ducatiはうまくいきました。残り4車種も同じ手順で、と思ったら、止まりました。11時43分の報告がこれです。
4車種の候補調査を保存しました。現時点ではモデル本体 0件取得、GLB追加なしです。公式ダウンロードは通常の認証を要求し、HTTP 401 を返しました。
Sketchfabからモデルをダウンロードするには、アカウントでログインする必要がある。そしてCodexは、こう明記していました。
取得制限の回避やビューア用assetの抽出は行っていません。
つまり、裏口からデータを抜くようなことはしない、と自分で線を引いたわけです。ここは、AIに仕事を任せる立場としては安心できる振る舞いでした。同時に、私の出番でもありました。
そこからの流れを、私の指示だけ並べます。
| 時刻 | 私が送った内容 |
|---|---|
| 13:22 | 「Sketchfabのログインページを開いてください。」 |
| 13:23 | 「ログインしました。」 |
| 13:32 | 「アカウント作成しました。」 |
| 13:59 | 「ダウンロードしました。」 |
| 14:09 | 「Chromeにブロックされました。」 |
| 14:16 | (エラー画面のスクリーンショットを添付) |
| 14:42 | 「Honda・BMW・Kawasakiも進めてください。」 |
| 14:51 | 「Chromeです。R1は手作業でダウンロードができました。」 |
| 16:07 | 「ダウンロード完了しました。デスクトップに保存しました。」 |
私がやったのは、Sketchfabのアカウントを作ること、ログインすること、そして「Download」ボタンを自分の手で押して、ファイルをデスクトップに保存することです。途中でChromeがダウンロードをブロックして、そのスクリーンショットを貼ったら、Codexは「この表示だけでは原因を特定できません」と正直に言ってきました。原因が分からないことを分からないと言う。ここも大事です。
15時38分、Codexは残る3車種の候補を表にして「手動で保存してください」と依頼してきました。Honda 9MB、BMW 97MB、Kawasaki 38MB。私が保存して「完了しました」と送ると、44分後の16時51分に全5車種が精密モデルになった版(v2.4)ができていました。報告には「機能確認127項目・接地検証240条件に合格」とあります。接地検証というのは、3つのコースの上り坂や下り坂で、バンク角や加速の条件を変えながら、タイヤが路面から浮いたりめり込んだりしていないかを車種ごとに80条件ずつ数値で確かめたものだそうです。

こうしてできたKawasaki Ninja ZX-10Rです。ガレージで回して眺められます。
11時43分の「取得できない」という報告から、私がダウンロードを終えた16時07分までは、4時間24分。この間に進んだのはライダーと背景の改良(v2.2)とYamaha 1車種の追加(v2.3)で、残りの時間の大半はモデルの取得待ちでした。AIが止まったのは、技術の限界というより「他人のサイトのアカウント」「ログイン」「ダウンロードの権限」という、人間の権限の領域だったということです。
- アカウントとログイン:他社サービスのアカウント作成・ログインは人がやる。AIは代行しない
- ファイルの取得:ライセンスで許されていても、ダウンロードの操作そのものは人の手が要る場面がある
- 権利の最終判断:AIはライセンス表記を確認してくれるが、「この用途で使ってよいか」を決めるのは人
- 公開の承認:AIは「公開してよいですか」と聞いてくる。答えるのは人
公開直前に出た制限:146MBのゲームと、1ファイル25MiB
17時28分、「サイトを更新してください。」と送りました。ここで最後の問題が出ます。
5車種の精密モデルを埋め込んだ単一HTMLは146.2MBになっていました。ところが公開先の配信基盤には、1ファイル25MiBの上限がある。Codexは17時34分にこれに気づき、対策を自分で設計しています。
現HTML:146.2 MB。埋込データを除くHTML・JS・CSSは約0.8 MB。Kawasaki:20 MiB+18.34 MiBの2片になり、両方上限内。公開用全体:約111 MB。
いちばん大きいKawasakiのモデルを2つに分割して、読み込むときにブラウザ側で結合する方式に変えたわけです。そして別のエージェントに「結合後のデータが元のファイルと完全に一致するか」を検査させて、合格を確認してから公開しています。18時10分、公開版が更新されました。報告には「初回読み込みは確認環境で約25秒」とあります。
最後の質問:「知らない人が遊ぶと、私のトークンは減る?」
18時30分、私は最後にこう聞きました。
外部公開で第3者が使うと、私のトークンなどに影響しますか?
非エンジニアなら、たぶん最初に気になるところだと思います。答えはこうでした。
今回のゲームは、第三者が遊んでも、あなたのChatGPT/CodexのAIトークンを消費しない構成です。公開用コードを確認し、AI APIの呼び出しやAPIキーの埋め込みがないことを確認しました。
ゲームの中で生成AI(言語モデル)は動いていない。ライバルの3台を走らせているのはゲーム内の単純なプログラムで、私のChatGPTの利用枠とは無関係です。だから誰が遊んでも私のAI利用枠は減らない。ただし、サイトの配信量には影響するし、公開機能(ChatGPT Sites)は2026年9月時点でパブリックベータでプランごとの上限がある、という補足も付いていました。「影響しません」で終わらせず、影響する部分を分けて答える。 5日間で、いちばん人間らしい応答だったかもしれません。
数字で見る5日間
ログから取った実測値をまとめます。
| 項目 | 実測値 |
|---|---|
| 期間 | 2026年9月6日〜10日(暦日で5日) |
| 実作業時間 | 約8.0時間(AIが動いていた時間を、10分以上の空白で区切って合計) |
| 最初の指示から初公開まで | 26時間52分(うち実作業 約1時間15分) |
| 私の指示 | 23回(機能の要求6・「続けてください」5・公開の依頼3・手作業の報告7・操作の依頼1・質問1) |
| Codexの応答 | 146回(サブエージェントの分を含めると328回) |
| サブエージェント | 8体(車体・コース・レビュー・車種追加・リアル化の調査・素材の組み込み・ライダー・統合) |
| コードの量 | ゲーム本体 約3,200行、モデルの変換・検査ツール 約2,300行 |
| 検証 | 最終版で機能確認127項目、接地検証240条件 |
| 私が書いたコード | 0行 |
23回の指示のうち、新しい機能や作り替えを頼んだ指示は、私の数え方で6回です(最初の2行、車種選択、左右キーの修正、v2の拡張、超リアル化の相談2回)。残りの17回は「続けてください」「公開してください」「ダウンロードしました」のような、一言の返事でした。
プロとして見た、足りないところ
ウェブ制作を仕事にしている立場で、良かった話だけでは終わらせません。
1. 重い
初回の読み込みで、私の実測では約110MBのデータが降りてきます。5車種の3Dモデルだけで約97MB。前回のウェブサイトが約6.9MBで「重い」と書いた私としては、桁が違います。光回線の私の環境で20秒前後、Codexの確認環境でも約25秒かかっていて、スマホの回線で開くゲームとしては現実的ではありません。ゲーム内でも、ライバルの3台は精密モデル化の前の軽い造形のままです。Codexが書いた説明書には「描画負荷を抑えるため」と理由が添えられています。
2. 「実車そっくり」の中身は、個人作者のモデル
5車種の3Dモデルは、Sketchfabで個人の作者が公開しているものです。メーカーの公式データではありませんし、年式も作者の記載どおりです。Codexが残した説明書と動作確認記録にも「年式や全寸法・外観の実車との照合は未実施」「BMWは左右非対称ヘッドライトの世代、Kawasakiは2011年世代に近い外観」と明記されています。作者のこだわりのおかげで見た目はリアルですが、「メーカー監修」とは別の話です。
| マシン | 作者 | 三角形数 | ライセンス |
|---|---|---|---|
| Ducati Panigale V4 | ROY | 約37.4万 | CC BY 4.0 |
| Yamaha R1 | ejsnowy | 約9.3万 | CC BY 4.0 |
| Honda CBR1000RR-R SP | Farcry180024(alsr) | 約9.5万 | CC BY 4.0 |
| BMW S1000RR | zuckerbaer | 約340万 | CC BY 4.0 |
| Kawasaki ZX10R | Oxenci(FREEZLER) | 約34万 | CC BY 4.0 |
3. 商用には、そのまま出せない
CC BY 4.0のモデル自体は商用利用も許されています。でも、実在のメーカー名と車名を使ったゲームを商品として出すのは、商標の観点でまったく別の問題です。今回は私個人の技術検証として公開していますが、もしお客様の案件でやるなら、架空のメーカー名に置き換えるか、メーカーの許諾を取るかのどちらかです。ここはAIが判断してくれる領域ではありません。
4. 未検証の環境がある
Codexの記録によると、動作確認はmacOSのChromeで行っていて、Safari・Firefox・スマートフォンの実機・ゲームパッドの実機は未検証です。物理挙動も「遊びやすさに合わせたゲーム用の調整」で、実車の再現ではありません。
非エンジニアが学んだ、AIに作らせる5つのコツ
今回いちばん学びが多かったのは、ゲームそのものより「指示の出し方」でした。
- 2行でも動く。ただし中身はAIの解釈になる:名前も、コース名も、ライダーの国籍も、全部AIが決めた。それでいいなら丸投げは速い
- 「〜したい」の1行で機能が生える:仕様書は要らなかった。代わりに、出てきたものを見て次の1行を書く
- 「できますか?」と聞くと、限界を正直に言う:「約束できません」と言われてから進めた方が、期待値のズレが起きない
- AIが止まるのは、人の権限の領域:アカウント、ログイン、ダウンロード。ここは最初から「自分の仕事」と思っておく
- AIは承認を求めてくる:公開範囲、一般公開への反映。答えを用意しておくと、流れが止まらない
特に3つ目です。前回の記事では「指示に条件を書く」ことの効果を書きました。今回は「質問する」ことの効果でした。「超リアルにできますか?」と聞いたから、「球と円柱でできています」という現状と、「写真と見分けがつかないとは約束できません」という限界を、先に知ることができた。これを聞かずに「もっとリアルにして」と命令だけしていたら、たぶん期待と結果がズレていたと思います。
ウェブ制作会社の代表として思うこと
前回、GPT-6 Astraが45分でウェブサイトを公開したとき、私は「制作の仕事は、作ることから判断と運用へ移る」と書きました。今回のゲームで、その範囲がもう一段広がったと感じています。
ウェブサイトの制作会社にとって、3Dゲームは長いあいだ「専門のスタジオに頼むもの」でした。企画で「サイトにミニゲームを置きたい」というアイデアが出ても、見積もりの段階で消えるのが普通です。今回は、非エンジニアの私が5日間、しかも実作業8時間で、公開まで持っていけました。
だとすると、こういう使い方が現実になります。
- 採用サイト:会社の仕事内容を体験できるミニゲームを1本置く
- 展示会・イベント:ブースの大型モニターで来場者に遊んでもらう体験コンテンツ
- 地域や観光のPR:架空のコースの代わりに、地元の景観をモチーフにしたコースを走る
- 研修教材:手順や判断を「読む」代わりに「操作して覚える」形にする
一方で、変わらないものもはっきりしました。何を作るかを決めること。素材の権利を判断すること。出てきたものを検品すること。そして、公開したものに責任を持つこと。 今回、AIが止まった4時間半は、まさにこの領域でした。ログインし、ダウンロードし、権利を確かめ、公開の可否を答えたのは私です。
カンマンでは、徳島を中心に生成AIの研修と活用支援をしています。今回のような「まず自分で作ってみて、どこでAIが止まり、どこに人が要るかを体で知る」という進め方は、研修でも一番反応が大きい部分です。自社で試してみたい、研修で扱ってほしいという方は、お問い合わせからご相談ください。AIに関する他の記事はAIカテゴリーにまとめています。
よくある質問
Q. 本当にコードを1行も書いていないんですか? はい。私が入力したのは日本語の指示23回と、Codexの選択式の質問への回答1回です。コードの編集画面は一度も開いていません。ただし、Sketchfabのアカウント作成とファイルのダウンロードは私の手作業です。
Q. 5日間ずっと付きっきりだったんですか? いいえ。AIが動いていた時間の合計は約8時間で、夜の1時間、朝の30分、というように分かれています。いちばん長かったのは9月10日で、モデルの取得待ちを含めて午後の約4時間20分です。
Q. 無料でできますか? できません。CodexでGPT-6 Astraを使うには、2026年9月時点でChatGPTの有料プランが必要です。公開に使ったChatGPT Sitesも、Plus・Pro・Business・Enterprise・Eduの各プランで提供されているパブリックベータの機能です(無料プランとGoプランは対象外)。提供状況はプランや地域で変わるので、最新は公式のヘルプで確認してください。
Q. 遊ぶ側にログインは要りますか? 要りません。URLを開けば、ログインしていない人もそのまま遊べます。遊ぶ人が増えても、私のAIの利用枠は消費されません(サイトの配信量には影響します)。
Q. バイクのデータはメーカーのものですか? 違います。Sketchfabで個人の作者がCC BY 4.0で公開しているモデルで、ゲーム内のクレジットに作者名と出典を表示しています。メーカーの公認は受けておらず、年式や寸法の実車照合もしていません。
Q. スマホで遊べますか? 画面幅が狭いときにタッチ操作のボタンが出る実装は入っていますが、スマートフォンの実機では未検証です。データ量も約110MBあるので、Wi-Fi環境のPCで開くのをおすすめします。
Q. 自分の会社でも同じことができますか? ゲームの規模を小さくすれば、十分できると思います。ただし今回の記事で書いたとおり、AIが止まる場面は今回のように出てきます。誰が権利を確認し、誰が公開を承認するかを先に決めておくと、スムーズです。
参考・出典
- APEX RIDER(今回作ったゲーム)
- GPT-6 Astra: A new generation of intelligence(OpenAI・2026年9月3日)
- GPT-6 Astra System Card(OpenAI Deployment Safety Hub)
- ChatGPT Sites の公式ドキュメント(learn.chatgpt.com)
- Codex のサブエージェントに関する公式ドキュメント
- Three.js(3D描画ライブラリ・MITライセンス)
- クリエイティブ・コモンズ CC BY 4.0 ライセンス
- Poly Haven のライセンス(CC0)
- 3Dモデルの出典(Sketchfab・CC BY 4.0):Ducati Panigale V4(ROY)
- Yamaha R1(ejsnowy)
- Honda CBR1000RR-R SP 2025(Farcry180024)
- BMW S1000RR(zuckerbaer)
- Kawasaki ZX10R(Oxenci)
- 前回の記事:AIが45分でウェブサイトを公開した日|GPT-6 Astraに架空フェスの公式サイトを作らせて、制作会社の代表が全機能を検証してみた
記事中の時刻・回数・作業時間は、Codexが保存している作業ログ(2026年9月6日〜10日)から取得した実測値です。ゲーム内の性能メーターはゲーム内の相対値で、実車の性能を示すものではありません。サーキット名とライダー名はすべて架空です。
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代表取締役
貝出康
1963年徳島市生まれ。 1999年に楽天の三木谷社長の講演を聴き、イン ターネット時代の到来を悟る。翌年、ホームペ ージ制作会社カンマン設立に参画し、これまで のキャリアで培った営業や人事のスキルを活か しての顧客開拓や社内・労務管理を実践。2019 年〜代表取締役。








