ChatGPT Workとは?発表から2か月で変わった点|GPT-6 Astra時代の中小企業向け実践ガイド
公開日:2026年09月21日

代表取締役
貝出康

こんにちは。徳島で中小企業のAI活用を支援している、カンマンの貝出です。
2026年7月9日にOpenAIが「ChatGPT Work」を出したとき、私は「AIの役割が回答から仕事の完了へ近づいた」と書きました。あれから2か月が経ちました。
この2か月、公式ドキュメントはかなり書き換わっています。看板のモデルはGPT-5.6からGPT-6 Astraへ交代しました。Workは、社内の資料を集めて成果物を作るところから、ログインが必要なサイトに入って作業するところまで広がりました。API料金は4つのモデルすべてで下がりました。7月に「できません」と書かれていた機能が、8月には「できます」に変わっています。
そこでこの記事では、2026年9月14日時点の公式情報をもとに、ChatGPT Workで今なにができて、なにがまだできないのかを整理します。発表直後の解説ではなく、2か月分の更新をふまえた実務向けの内容です。中小企業が試すならどこからか、というところまで書きます。
結論:2か月で変わったのは「AIの賢さ」より「任せられる範囲」
最初に結論です。この2か月でいちばん変わったのは、モデルの性能ではありません。AIに任せられる仕事の範囲が、社内から社外へ広がったことです。ここが実務にとっては大きい変化なんですよ。
Chat・Work・Codexの使い分けは変わっていない
まず、変わっていないところから確認します。OpenAIの公式ヘルプによる3つの使い分けは、7月の発表時から変わっていません。判断の軸は、どれが最も賢いかではなく、仕事をどこまで進めたいかです。
| 選択肢 | 向いている仕事 | 代表的な頼み方 |
|---|---|---|
| Chat | 質問、検索、相談、発想、短い下書き | 「この用語を説明して」「案を3つ出して」 |
| Work | 調査、分析、文書、表、資料、レポート、Site | 「この資料群から経営会議用レポートを作って」 |
| Codex | コード、テスト、コマンド、リポジトリ作業 | 「この不具合を調べて修正し、テストして」 |
相談して考えが整理できれば終わりならChatです。複数の情報を集めて、共有できる成果物まで作るならWork。ソフトウェアを変更して動作確認まで行うならCodexという分け方になります。この軸は今も有効です。
変わったのは、Workが社外のサイトへ出られるようになったこと
7月時点のWorkは、基本的に「社内の情報を集めて、成果物にまとめる」道具でした。公式ヘルプにも、クラウドブラウザは公開されているWebページを対象にしていて、サイトへのログインや決済には対応していないと書かれていました。
その制限が、8月25日に外れました。今のWorkは、ログインが必要なサイトに入って作業できます。さらに9月9日にはDeep Researchが使えるようになり、8月25日からはGmailやSlackの動きをきっかけに自動で動き出す定期タスクも作れます。つまり、人が見ていない時間にも仕事が進む設計に変わりました。
- 7月:社内の資料を集めて、文書・表・資料を作る
- 9月:それに加えて、ログインが必要なサイトでの作業、横断調査、自動起動する定期タスク
- つまり:任せられる範囲が広がったぶん、人が確認すべき場所も増えた
中小企業にとっての価値は、やはり「下ごしらえ」
ただ、範囲が広がっても、私がすすめる使い方は7月から変えていません。Workを「社員の代わり」と考えると話が大きくなりすぎます。現実的なのは、仕事の下ごしらえを任せることです。資料を探し、違いを並べ、初稿を作り、抜けを見つけ、決められた形に整えてもらう。ここまでなら、任せる範囲も確認する場所も見えやすいでしょう。
人間は、その結果を見て判断し、責任を持ちます。この分担なら小さく試せて、間違いがあっても公開前に止められます。機能が増えたときほど、この線引きを先に決めておくほうが安全なんです。
2026年9月時点のモデル:GPT-6 AstraとGPT-5.6
7月の記事を読んだ方には「GPT-5.6の話ではないの?」と思われるかもしれません。ここが2か月でいちばん動いたところです。
GPT-6 Astraとは:9月3日に登場した現在の最上位モデル
OpenAIは2026年9月3日、GPT-6 Astraを発表しました。コーディング、調査、コンピュータ操作、そして複数の手順を踏む長い仕事での改善が案内されています。公式の説明で実務に効くのは次の一文です。
Astraは、あなたのテンプレートと指示に従って文書、表計算、プレゼンテーションを作成でき、要件が追加されたり方向が変わったりしても対応します。
「テンプレートに従う」「途中で要件が増えても対応する」。これはまさに、社内資料づくりで起きることですよね。
提供状況は、プランによってかなり違います。2026年9月14日時点の公式ヘルプでは、次のように案内されています。
| プラン | GPT-6 Astraの扱い | 利用枠 |
|---|---|---|
| Pro(100ドル)/Pro(200ドル) | GPT-6 Pro(Astra駆動)が利用可 | 既存の枠をフルにAstraへ使える |
| Business | GPT-6 Proが利用可 | Premiumシートはフル/Standardシートは限定的+追加クレジット |
| Enterprise | GPT-6 Proが利用可。ワークスペースのモデル権限設定にも依存する | — |
| Plus | WorkとCodexでAstraを利用可 | 限定的+追加クレジット |
| Free・Go | 公式にAstra提供の記載はない | — |
表の読み方について、2点だけ補足します。ひとつはFree・Goの扱いです。公式ヘルプにはAstraを提供しないとは書かれていませんが、そもそもChatGPT Work自体がFree・Goを除く有料プラン向けです。Astraの提供先としてもこの2プランは挙がっていません。使えないと考えるのが自然ですが、これは明示ではなく、条件から導いた判断です。
もうひとつはBusinessのシート種別です。公式ヘルプは、GPT-6 Proが使えるかどうかをプラン単位で案内し、枠の話だけをPremiumシートとStandardシートで分けています。つまり「Standardシートでもモデル自体は選べるのか」までは書かれていません。Businessの契約でシート構成を検討している場合は、ここを販売元に確認してください。
なお9月3日の発表時点では「一部の組織への限定的な提供で、一般提供ではない」と案内されていました。その後も段階的に広がっている途中です。公式ヘルプにも、ChatGPT Work自体が対象アカウントへ順次展開中で、まだ表示されない場合があると書かれています。
使うための条件もあります。Codex CLIはバージョン0.153.0以降が必要で、デスクトップアプリは最新版への更新が要ります。自動更新の通知が出た後でも、メニューから「アップデートを確認」を実行するよう案内されています。画面にAstraが出てこないときは、まずアプリの更新を疑ってください。
もうひとつ、Astraには追加の安全監視が付いています。エージェントが指示を正しく解釈していない可能性を検知すると、会話が一時停止または停止されることがあります。念のため人が確認する仕組みです。長い仕事を任せるほど、こうした停止は意味を持ちます。
いちばん大事な注意点:Astraは枠の減りが速い
ここが、中小企業にとって最も判断に効くところだと思います。公式ヘルプにはっきり書かれています。
AstraはGPT-5.6 Solよりも、あなたの利用枠を速く消費することがあります。
AstraはChatGPTのプランに含まれるWork・Codexの利用枠を使います。どれだけ使えるかは、仕事の内容、入力と出力の大きさ、推論の設定、そしてFast modeの利用で変わります。
- Pro(100ドル・200ドル)とBusiness Premiumシート:既存の枠をそのまま全部Astraに使える
- PlusとBusiness Standardシート:Astraの利用は限定的。超えた分はクレジットを追加する形になる
- 枠が足りなくなったら、個人プランのクレジット料金、またはBusiness・Enterprise・Edu向けのレート表が適用される
だから私は、中小企業に「とりあえず一番強いモデルを選んでおけば安心」とは言いません。毎週の定型作業までAstraで回すと、本当に重要な仕事に枠を残せなくなる可能性があります。難しい調査や重要な提案書にAstra、繰り返しの定型作業にはGPT-5.6 Sol、という使い分けのほうが現実的です。
幸い、2026年8月7日からサイドバーで残りのWork利用量を確認できるようになりました(個人プランとBusinessが対象)。導入したら、まずここを見る習慣をつけてください。
API料金はこの2か月で下がった
APIを使う場合の料金も、7月から変わっています。しかも全部、値下がりです。
| モデル | 入力(100万トークン) | 出力(100万トークン) | キャッシュ入力 | 位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| GPT-6 Astra | 10.00ドル | 50.00ドル | 1.00ドル | 現在の最上位 |
| GPT-5.6 Sol | 4.00ドル ※販促価格・2026年11月21日まで少なくとも継続 | 20.00ドル ※同上 | 0.40ドル | 旗艦(無印相当) |
| GPT-5.6 Terra | 2.00ドル | 12.00ドル | 0.20ドル | バランス型(mini相当) |
| GPT-5.6 Luna | 0.20ドル | 1.20ドル | 0.02ドル | 低価格・大量処理向け(nano相当) |
料金は2026年9月14日に公式のモデルページで確認した値です。7月の発表直後はSolが入力5ドル・出力30ドル、Lunaが入力1ドル・出力6ドルでした。Lunaにいたっては、2か月で5分の1近くまで下がっています。
ここで注意したいのは、Solの価格が販促価格だという点です。公式ページには「少なくとも2026年11月21日まで」と書かれています。年末以降の予算を組むときに、この表の数字をそのまま使うと合わなくなる可能性があります。
そのほか、費用を見積もるときに知っておきたい条件を挙げておきます。
- この金額はAPIの従量課金です。ChatGPTの月額プラン料金とは別に考えてください
- 4モデルとも105万トークンのコンテキスト、最大12万8,000トークンの出力に対応します
- Astraは入力が27万2,000トークンを超えると、そのリクエスト全体で入力とキャッシュが2倍、出力が1.5倍になります
- BatchとFlexは標準の50%、Fast modeは2倍の料金です
- GPT-5.6の3モデルは推論の深さに none も指定できますが、Astraは none を指定できません(low/medium/high/xhigh/max)
容量が大きいことと、何でも詰め込んでよいことは別です。古い資料、重複した資料、下書き、確定版が混ざると、AIはどれを正本として扱うべきか迷います。しかもAstraでは、27万2,000トークンを超えた時点で料金の条件まで変わります。入れる資料を選ぶことが、そのまま費用の管理になったということです。
この2か月でWorkに増えたもの
ここからは、7月の発表以降にWorkへ追加された機能のうち、中小企業の実務に関係しそうなものを4つ紹介します。
1. Deep Research:調べものが「出典付きの文書」で返ってくる(9月9日)
2026年9月9日から、Deep ResearchがWorkとCodexで使えるようになりました。Web、自社のファイル、接続したアプリを横断して複雑な問いを調べ、その結果を出典付きの編集可能なドキュメントにする機能です。
使い方は簡単で、Workの中で「@Deep Research」と入力するか、明示的にdeep researchを依頼します。調査の途中で方向を変えることもできます。出力は、使えるツールに応じて文書、プレゼンテーション、表計算、Siteから選べます。
- 対象:Plus、Pro、Business、Enterprise、Edu(Workが使えるアカウント)
- 対応:Web、デスクトップ、iOS、Android
- 消費:既存のWork・Codexの枠またはクレジットを使う。Chat側のDeep Researchの上限は変わらない
業界動向の調査や、競合サービスの比較表づくりのように「調べて、まとめて、根拠を残す」仕事に向いています。出典が付いて返ってくるので、人が検証しやすいのも実務的です。
2. ログインが必要なサイトでも作業できるようになった(8月25日)
これが2か月でいちばん大きな変化だと思います。7月の公式ヘルプでは、クラウドブラウザは公開Webページが対象で、ログインもパスワード管理ツールの利用も決済もできないと明記されていました。それが8月25日から変わりました。
今は、ChatGPTがログイン画面にたどり着くと、いったん止まって、あなたにサインインを求めます。安全なサインインフォームにIDとパスワードを入力し、必要なら二段階認証のコードも入れます。その後、ChatGPTはログイン済みの状態で作業を再開します。
- 入力した認証情報はリモートブラウザへ直接送られ、モデルからは見えません。ChatGPTはサインイン情報を保存もしません
- 認証は期限が来るまで保持されるので、次回から毎回ログインし直す必要はありません
- 予約の確定や支払いなど、取り消しにくい行為やお金・契約が動く行為の前には、チャットで確認を求める設計になっています
- クラウドブラウザは手元のブラウザとは別物です。あなたの開いているタブ、閲覧履歴、保存済みパスワード、Cookie、拡張機能、既存のログインは一切使いません
対象はPlusとProのプランです。クラウドブラウザはOpenAI側のコンピュータで動くため、パソコンを閉じても、スマートフォンの電源を切っても作業は続きます。情報の入力やサインイン、確認が必要になったところで止まる仕組みです。
中小企業なら、契約中のサービスの管理画面から請求情報を集める、公的な申請サイトで必要書類と締切を調べる、といった使い方が考えられます。ただし、次の章で触れるとおり、ここは慎重に設計すべきところでもあります。
3. テンプレート機能:毎回フォーマットを説明しなくてよくなった
7月の記事では「テンプレートがなくても成果物は作れます」と書きました。それは今も本当ですが、テンプレートそのものが正式な機能として整理されました。ここは実務でかなり効きます。
公式ヘルプの定義では、テンプレートは「参照ファイル+再利用できる指示」のセットです。週報、案件概要、収支モデルのように繰り返す仕事で、毎回フォーマットを説明しなくて済むようにするものです。
- 作る:入力欄で「@Template-Creator」を選び、参照ファイルを1つ添付します。.docx、.xlsx、.pptx のほか、Googleドキュメントやスプレッドシートやスライドのリンクでもかまいません
- 使う:「@Documents」「@Spreadsheets」「@Presentations」でテンプレートギャラリーを開いて選びます。選んだだけでは実行されません。プロンプトを確認してから送信します
- 配る:作ったテンプレートは個人のものです。社内で共有するにはプラグインとしてまとめ、管理者にワークスペースへ公開してもらいます。デスクトップではZIPファイルでの共有もできます
注意点も2つあります。ひとつは、Web版で作ったテンプレートと、Codexがローカルに保存したテンプレートは自動では同期しないこと。もうひとつは、テンプレートを共有しても、その参照先のGoogleドキュメントの権限までは変わらないことです。受け取った人は、リンク先のファイルや接続サービスへのアクセス権を自分で持っている必要があります。
単発の依頼なら、参考ファイルを1つ渡すだけで十分です。同じ仕事を繰り返すならテンプレートにする。この使い分けが公式の推奨でもあります。
4. 定期タスクが「時刻」だけでなく「できごと」で動くようになった
2026年8月25日から、Workの定期タスクがWebhookに対応しました。決まった時刻に動くだけでなく、連携アプリで何かが起きたときに動き出すタスクを作れます。
- 対応するできごと:新着のGmail、Slackチャンネルへの投稿、GitHubのプルリクエストの動き
- 対象:Plus、Pro、Business、Enterprise、Edu、Healthcare(Web・iOS・Android)。Free・Goは作成できません
- Slackを監視する場合、対象チャンネルすべてに @ChatGPT を追加する必要があります
- 承認が必要な操作は、あなたが確認するまで停止して待ちます
- デスクトップアプリは既存タスクの表示はできますが、トリガー条件の作成・編集はできません
たとえば「取引先からSlackで修正依頼が届いたら、内容を整理して対応案を下書きする」といった動き方になります。ここまで来ると、AIは道具というより当番に近い存在です。だからこそ、承認をどこに置くかの設計が要ります。
あわせて、データ側も広がりました。2026年9月10日にはDataプラグインが追加され、接続した業務データに対して「@Data」で質問し、変化を調べたり、対話型のダッシュボードやレポートを作ったりできるようになっています。同じ日に、ライブラリで扱えるサービスにBox、Dropbox、SharePointが加わりました(8月13日に追加されたGoogle Driveに続くものです)。Google Driveについては、権限があれば元のファイルを直接更新できると案内されています。
7月の解説から変わった3点(古い記事を読むときの注意)
私自身、2026年7月11日に GPT-5.6とChatGPT Workの登場について記事 を書いています。あの時点の公式ヘルプに沿った内容でしたが、その後ドキュメント側が更新されました。ネットには7月の情報がそのまま残っているので、いま読むときに気をつけたい3点を挙げておきます。
変更1:クラウドとデスクトップのWorkは同期するようになった
7月の発表時点では、クラウド側で作ったWorkの会話と、デスクトップ側のWorkスレッドは統合されていないと案内されていました。ところがその4日後、2026年7月16日のデスクトップアプリ刷新で同期するようになりました。
現在の公式ヘルプでは、クラウドのWorkチャットはWeb・モバイル・デスクトップで同期すると明記されています。Webやモバイルで始めた作業はデスクトップアプリに表示され、デスクトップで始めたクラウドのWorkチャットもWebやモバイルで続けられます。
- 同期するのはクラウドで動いているWorkチャットです。ローカル実行のチャットはそのパソコンに残ります
- ただし公式ヘルプには「ローカルで実行していても、メッセージとタスクの文脈がクラウドに保存されることがあります」と書かれています。ここは社内規程を作るときに確認してください
- Web・モバイルのWorkがパソコンのファイルに直接アクセスできない点は変わっていません
変更2:クラウドブラウザはログインできるようになった
前の章で詳しく書いたとおりです。7月時点で「対応していません」と案内されていたログイン、パスワード管理ツールの利用、決済は、8月25日以降は条件つきでできるようになりました。「AIはログインが必要なページには入れないから安全」という前提で社内ルールを作っていた場合は、見直しが必要です。
変更3:Free・Goの既定モデルはGPT-5.6 Lunaになった
7月11日時点の公式ヘルプでは、日常的な速い応答の標準はGPT-5.5 Instantのままで、TerraとLunaは通常のChat画面で選ぶモデルではないと案内されていました。これも変わりました。
2026年8月6日のリリースノートでは、GPT-5.6 LunaがFreeとGoの既定モデルになると発表されています。あわせてFree・Goには無制限のテキストチャットと、難しい質問向けの「Think」ボタンも提供されました。PlusとProには、事実の信頼性を高めた更新版のGPT-5.6 Solと、考える量を選べるスライダーが入っています。
ただし、この更新はChatの体験に対するものです。公式リリースノートには「WorkとCodexはこのリリースでは変更されません」と明記されています。Chatの話とWorkの話を混ぜないよう気をつけてください。
- 公式ヘルプは数週間単位で書き換わります。この記事の内容も2026年9月14日時点のものです
- 社内マニュアルや研修資料に機能の説明を書くときは、確認した日付を添えてください
- 「できない」と書かれていた機能ほど、後から変わる可能性があります。禁止ルールの根拠にする場合は特に注意が必要です
中小企業で試しやすい4つの業務
ここからは実務に落とします。私が中小企業のAI導入でいちばん重視しているのは、すごいデモより、毎週繰り返せる仕事になるかどうかです。以下は公式に案内されている機能をもとにした想定ワークフローで、カンマンで導入済みだと装った事例ではありません。自社で試すときの設計例として見てください。
1. 経営会議の週次レポート
最初に試しやすいのは、定期的なレポートです。用意するものは、今週の売上表、目標値、前回の議事録、過去の良いレポートです。そのうえで、成果物の条件を次のように決めましょう。
- 前週比と前年同期比を分ける
- 変化の大きい項目を3つ示す
- 未完了の課題と担当者を整理する
- 数値の出典となるシート名とセルを付ける
- 推測は「仮説」と明記する
AIには、集計、比較、初稿、体裁調整まで任せます。人間は、数式、出典セル、重要な解釈が正しいかを確認します。任せる範囲と確認する範囲を混ぜないことがポイントです。
3回続けて品質が安定したら、過去の良いレポートをテンプレートとして登録してください。毎回フォーマットを説明する手間がなくなります。最初から自動配布まで任せる必要はありません。まずは下書きを指定フォルダに作るところで止め、人がどこを直したかも記録しておきます。
2. 営業・マーケティング資料の初稿
商談メモ、サービス資料、過去の提案書、ブランドのテンプレートをもとに、提案書の初稿を作る仕事も向いています。ここで大事なのは、「良い感じに作って」だけで任せないことです。たとえば、次のように条件を渡します。
- 読み手は経営者で、10分で説明できる枚数にする
- 顧客から確認できた課題と、こちらの仮説を分ける
- 料金や納期は元資料の数字を変えない
- 未確認の競合情報を断定しない
- 最後に次の打ち合わせで確認する質問を付ける
成果物がきれいでも、顧客理解が間違っていれば意味がありません。だからAIには文章と構成の下ごしらえを任せ、提案の判断と約束は人が担います。この境界をチームで共有しておくと、レビューも速くなります。
3. 社内マニュアルと研修資料の更新
意外と効くのが、既存資料の更新です。手順が変わったのにマニュアルが古いまま、という状態は多くの会社にあります。新しい手順のメモと現行マニュアルを渡して、変更点の反映と、記述が矛盾している箇所の指摘を頼みます。
ポイントは、全文の書き直しを頼まないことです。変更点だけを直してもらい、どこを変えたかを一覧で出してもらいます。そうすれば、担当者の確認が現実的な量に収まります。ここでもテンプレート機能が使えます。
4. 定期調査と変化の監視
4つ目は、今回いちばん進化した領域です。7月時点では「毎週決まった時刻に調べる」までが現実的でしたが、今はできごとをきっかけに動くタスクを作れます。
- 時刻で動かす例:毎週月曜の朝に、業界の主要ニュースと競合サイトの更新を調べ、変化があった項目だけを一覧にする
- できごとで動かす例:問い合わせ用のSlackチャンネルに投稿があったら、内容を分類して、過去の類似案件と対応方針の候補を添える
- 調査を深める例:Deep Researchで、補助金や法改正の情報を出典付きの文書にまとめる
ただし監視系は、通知が多すぎると読まれなくなります。「変化がなければ何も出さない」という条件を入れてください。そして、承認が必要な操作には人の確認を挟む設定にしておきます。
導入前に解いておきたい4つの誤解
誤解1:最新モデルなら、数字も事実も自動的に正しい
違います。モデルが賢くなっても、渡した資料が古ければ古い答えが返ります。数字の正本がどれかを決めるのは人間の仕事です。
AIに任せるときは、根拠にするファイルを明示し、出典のシート名とセルまで書かせてください。そのうえで人が確認します。GPT-6 Astraには指示の解釈違いを検知する安全監視が付きましたが、これは内容の正しさを保証する仕組みではありません。
誤解2:アプリを接続すると、社内情報を全部読める
これも違います。接続したあとも、操作できる範囲には境界があります。使える操作は、プラン、ファイル形式、接続設定、管理者設定、そして本人の権限によって変わります。
たとえばDataプラグインの場合、公式ヘルプには「クエリは接続したアカウントの既存の権限を使う」と書かれています。AIが権限を追加してくれるわけではありません。逆に言えば、権限設計がそのまま安全設計になります。
誤解3:ログインできるようになったから、何を任せても大丈夫
ここは特に気をつけてください。クラウドブラウザがログインに対応したことで、便利さと同時に注意点も増えました。OpenAIの公式ヘルプには、利用者向けに次のように明記されています。
パスワード、セキュリティコード、支払い情報を会話欄に貼り付けないでください。認証情報には安全なサインインフローを使ってください。
この一文は、社員に使ってもらう前に伝えておいてください。安全なサインインフォームに入力した情報はモデルから見えませんが、チャット欄に打ち込んだ文字はふつうの会話として扱われます。ここを混同すると、せっかくの安全設計が意味を失います。
あわせて、次のことも決めておきましょう。
- どのサイトへのアクセスを許可するか(許可するサイトは利用者が管理できます)
- 予約や支払いのように後戻りしにくい操作を、そもそも任せるのか。ChatGPTは実行前に確認を求めますが、確認画面を読まずに承認すれば同じことです
- 認証済みセッションは期限まで残るため、共用端末での運用をどうするか
- 作業が終わったサイトのブラウザデータを、いつ消すか(設定から削除でき、削除するとログアウトされます)
誤解4:全プランで、今すぐ同じ機能を使える
これは今回の2か月でむしろ複雑になりました。機能ごとに対象プランが違います。
| 機能 | 使えるプラン |
|---|---|
| ChatGPT Work | Free・Goを除く有料プラン(順次展開中) |
| GPT-6 Astra | Plus(Work・Codexで)、Pro、Business、Enterprise |
| Deep Research in Work | Plus、Pro、Business、Enterprise、Edu |
| クラウドブラウザでのログイン | Plus、Pro |
| Webhookで動く定期タスク | Plus、Pro、Business、Enterprise、Edu、Healthcare |
| 定期タスクの共有 | Free、Go、Plus、Pro |
さらに、EnterpriseとEduではWorkの利用にEnterprise Key Management(EKM)が必要で、管理者の設定にも左右されます。「知り合いの会社でできた」が自社でできるとは限りません。契約前に、自社のプランで実際に動くかを確認してください。
ChatGPT Workの使い方:7日間で小さく試す
では、どう始めるか。私がすすめているのは、7日間の小さな試行です。
1〜2日目:仕事と「任せない範囲」を決める
まず、毎週決まって発生する仕事を1つ選びます。週報、提案書の初稿、議事録の整理あたりが向いています。次に、その仕事の中でAIに任せない部分を決めます。金額の確定、顧客への約束、最終承認などです。
このとき、使う機能も絞ってください。いきなりWebhookタスクやクラウドブラウザまで広げると、どこで問題が起きたのか分からなくなります。最初は資料を渡して成果物を作るところだけで十分です。
3〜5日目:良い見本と合格条件を渡す
過去にできの良かった成果物を1つ選び、参考ファイルとして渡します。あわせて合格条件を文章で書きます。「数字は元資料から変えない」「1ページに収める」「未確認の情報は仮説と書く」といった具合です。
3回ほど回して品質が安定したら、その組み合わせをテンプレートとして登録します。ここまで来ると、次回から指示が一行で済むようになります。
6〜7日目:時間だけでなく、修正量と使った枠を測る
最後に効果を測ります。ここで時間だけを見るのは不十分です。次の3つを記録してください。
- かかった時間:人が作業した時間と、待っていた時間を分ける
- 修正量:出てきた成果物のうち、人がどれだけ直したか。ここが減らないなら指示の設計に問題があります
- 使った利用枠:サイドバーで残量を確認できます。この成果物1本にどれだけ枠を使ったかを記録しておくと、どの仕事に向くかが見えてきます
3つ目は、Astraが登場して重要度が上がりました。「速くなったけれど、枠を使いすぎて月末に足りない」では続きません。効果と消費量を並べて記録してください。
カンマンの見解:AI導入の主役は、やはり業務設計
モデル差より、社内の「正本」が効く
2か月見てきて、考えは変わりませんでした。むしろ強まっています。
どのモデルを選ぶかより、どの資料を正本として信頼させるかのほうが、成果物の質に効きます。確定版と参考資料が混ざったフォルダを渡せば、賢いモデルほど丁寧に間違えます。しかもAstraでは、入れる資料の量が料金の条件まで左右するようになりました。
- 「確定版」「参考」「過去版」を分ける
- 数字の正本となるファイルを1つ決める
- 更新日と担当者を付ける
- 使ってはいけない資料を外す
- 成果物のテンプレートを1つ見せる
管理者設定が、そのまま業務設計になってきた
これは2か月で新しく見えてきたことです。今のChatGPTは、管理者が決められる範囲がかなり広くなりました。
- ワークスペース設定の「権限とロール」で、Work Cloud、Work Local、Codex Localを個別に許可・禁止できます
- ワークスペース設定の「モデル」で、Work・Codexの開始モデル、推論レベル、速度、Fast Modeの可否、新規チャットの挙動を既定値として決められます。これはChatの既定とは別に設定します
- Enterprise・Edu・Healthcareでは、管理者が許可しない限りWebhookタスクを作れません
つまり、「どのモデルで、どこまで自動で動いてよいか」を会社として決められるということです。これは設定作業のように見えて、実質的には業務設計です。情報システム担当がいない中小企業ほど、ここを決めないまま配ってしまいがちなので、最初に話し合っておくことをすすめます。
カンマンの 生成AI研修 でも、画面の使い方だけでなく、課題のヒアリング、実務プロンプト、業務自動化、効果測定、安全設定まで扱っています。最新機能を知るだけで終わらず、自社の仕事へ落とし込むところが大切です。
まず1つの成果物を、一緒に分解しよう
おすすめは、毎週作っている成果物を1つだけ選ぶことです。週報でも、提案書でも、会議資料でもかまいません。その成果物が、どの情報から作られ、誰が何を判断し、どこで承認されるのかを紙に書いてみてください。
そこまで見えれば、Workに任せる場所が分かります。逆に、仕事の流れが見えないままアカウントだけ配っても、「便利な人だけが使う道具」で終わりやすいです。AIは導入した瞬間に会社を変えるわけではありません。
この2か月で、AIに任せられる範囲は確実に広がりました。でも、どこへ向かうかを決めるのは人間です。まずは定型で、低リスクで、確認しやすい仕事を1つ選んでください。7日間だけ試し、時間、修正量、使った枠、安全性を測ります。その結果を見てから、次に任せる仕事を考えれば十分です。
関連記事として、中小企業のAI業務自動化はどこまでできるのか と 中小企業向けAIツールの選び方 もあわせてどうぞ。
ChatGPT Workのよくある質問
Q1. ChatGPT Workの利用枠はCodexと別ですか?
別ではありません。公式ヘルプでは、WorkはCodexと同じ利用構造に従うと説明されています。含まれる利用量や追加クレジットの考え方は、Codexの料金ページで案内されています。ただし、そこに載る例はコーディング作業を基準にしているため、その数字をWorkへそのまま当てはめることはできません。
2026年9月時点で追加された論点として、GPT-6 Astraは同じ枠をGPT-5.6 Solより速く消費します。PlusとBusiness Standardシートでは、Astraの利用が限定的で、超えた分はクレジットの追加になります。運用を始めたら、成果物ごとの利用量と得られた効果を一緒に記録してください。
Q2. WorkはPowerPointを直接編集できますか?
プレゼンテーションの作成はできますが、既存のPowerPointファイルを直接編集する用途では制限があります。公式ヘルプには、WorkのデスクトップフローにPowerPointは含まれていないと書かれています。
一方で、テンプレートの参照ファイルとしては .pptx を使えます。Google Workspaceの対応アプリが有効なら、Googleスライドをネイティブ形式で扱えます。Microsoft Excelを直接更新したい場合は、ChatGPTデスクトップアプリのCodexと「ChatGPT for Excel」アドインを使う別の流れが案内されています。
Q3. テンプレートがなくても成果物を作れますか?
はい、作れます。指示だけでもファイルを作成できますし、参考ファイルを1つ渡すだけでも構いません。公式ヘルプも「単発の依頼なら参照ファイルで十分」としています。
ただし2026年9月時点では、テンプレートが正式な機能として整理されました。同じ仕事を繰り返すなら、テンプレートにしたほうが品質が安定します。「@Template-Creator」で作成し、「@Documents」「@Spreadsheets」「@Presentations」から呼び出します。社内で配るにはプラグイン化して管理者に公開してもらう流れになります。初回の成果物を人が直し、その修正版をテンプレートの参照ファイルにする方法が有効です。
Q4. 2026年7月に出た解説記事と、この記事は何が違いますか?
7月11日の GPT-5.6とChatGPT Workの登場についての記事 は、発表当日の情報にもとづいた内容です。あの時点の公式ヘルプに沿って書いています。
この記事は、そこから2か月分の更新をふまえた2026年9月14日時点の内容です。主な違いは5点あります。看板モデルがGPT-6 Astraへ交代したこと。API料金が4モデルすべてで下がったこと。クラウドブラウザがログインに対応したこと。クラウドとデスクトップのWorkが同期するようになったこと。そして、テンプレート機能とDeep ResearchがWorkに加わったことです。
公式情報・参考資料
この記事の機能、提供条件、料金の説明は、すべてOpenAIの公式発表とヘルプにもとづいています。内容は2026年9月14日に確認したものです。この2か月で何度も更新されている領域なので、導入を決める前に最新ページを確認してください。
- OpenAI「GPT-6 Astra: A new generation of intelligence」(2026年9月3日)
- GPT-6 Astra モデル仕様・API料金
- GPT-5.6 Sol モデル仕様・API料金
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代表取締役
貝出康
1963年徳島市生まれ。 1999年に楽天の三木谷社長の講演を聴き、イン ターネット時代の到来を悟る。翌年、ホームペ ージ制作会社カンマン設立に参画し、これまで のキャリアで培った営業や人事のスキルを活か しての顧客開拓や社内・労務管理を実践。2019 年〜代表取締役。








