Grok Botとdotsの違いは?AIチームか専属の右腕か、中小企業はどちらを選ぶべきか【2026年10月版】
公開日:2026年10月18日

代表取締役
貝出康

「結局、Grok Botとdots、どっちを入れればいいんですか?」
この2つの違いで迷う方は、きっと多いはずです。8月にxAI(現在はSpaceXAI)が「Grok Bot」を出し、9月末にOpenAIが「dots(ドッツ)」を出しました。どちらも、仕事を任せると、自分のクラウドPCで勝手に進めてくれるAIです。質問に答えて終わるチャットとは、動き方が違います。名前も見た目も似ているので、違いが分からなくなるのは当然なんですよ。
先に言ってしまうと、この2つは「同じものの別メーカー版」とは言えません。設計の考え方が、そもそも違います。
私はdotsを発売翌日から使い、4日間の体験記も書きました。Grok Botも、9月中旬から約1か月、10体以上のBotを並べて毎日使っています。この記事は、2つとも私の実体験に、公式ドキュメントと報道の確認を重ねて書いています。
使いながら調べていく中で、「どちらが優れているか」より「自分の仕事の形がどちらに向いているか」で答えが決まる、とはっきり分かりました。中小企業の現場目線で、決め方まで書きます。
- 先に結論:役割を分けたいならGrok Bot、右腕が欲しいならdots
- そもそもGrok Botとは?名前付きのAI社員を並べる仕組み
- dotsとは?自分を覚えていく「専属の右腕」
- 実際にGrok Botを1か月使ってみた
- 6つの違いを表で整理する
- 違い1:チームで分業するか、右腕に集約するか
- 違い2:クラウドPCを共有するか、dotごとに持つか
- 違い3:覚え方が「実演」か「積み重ね」か
- 違い4:入口の料金は、3〜5倍ちがう
- 違い5:安全設計は「どちらにもある」が、考え方が違う
- 違い6:成熟度。両方とも、まだ育ち盛り
- dotsを4日間使った私の体験:任せられたことと、止まったこと
- どっちを選ぶ?場面別の決め方
- どちらを選んでも、最初にやること
- カンマンの見解:道具より先に「任せる範囲」を決める
- よくある質問(FAQ)
- まとめ:AIチームか、専属の右腕か
- 参考・出典
先に結論:役割を分けたいならGrok Bot、右腕が欲しいならdots
結論から言います。
- Grok Bot:「リサーチ担当」「文章担当」「営業担当」のように、役割ごとに名前付きのBotを何体も作り、チームとして動かす考え方
- dots:自分のことを覚えていく「専属の右腕」を1体育てる考え方(現時点では基本1体)
- 料金の入口:Grok BotはCursorの有料プランやSuperGrokに含まれ、月20〜30ドルから。dotsはChatGPT ProかBusiness Premiumに含まれ、月100ドルから
- 成熟度:Grok Botは公式がベータ版と位置づけ、dotsも発売から3週間足らずで、どちらも発展途上
一人社長や少人数の会社で、すでにChatGPTを毎日使っているなら、まずdotsが自然です。反対に、「調査」「下書き」「営業リスト作り」を並行して回したい、Cursorをすでに使っている、という会社はGrok Botが合います。私自身、Grok Botを10体以上のチームで1か月回してみて、分業の便利さと、役割が重なる難しさの、両方を体験しました。
ただし、どちらを選んでも、最初にやることは同じです。いきなり全権を渡さず、読み取りと下書きから始める。これは後半で詳しく書きます。
そもそもGrok Botとは?名前付きのAI社員を並べる仕組み
まず、Grok Botから見ていきましょう。
Grok Botは、2026年8月11日にベータ版として発表されました。開発元のxAIは、現在SpaceX傘下の「SpaceXAI」と名乗っています。公式ドキュメントの説明は、「名前と仕事と、時間とともに積み上がる文脈を持つAIチームメイト」。その特徴を、公式の言葉に沿って4つにまとめます。
- Botごとに役割がある:Botを作り、名前と仕事を与える。会話や学んだ内容はBotごとに別々に保たれる
- 1台のクラウドPCを全Botで共有する:ブラウザ、ファイル、ターミナルを持つ永続的なクラウドPCが、アカウントに1台割り当てられる
- Bot同士が連携する:複数のBotが並行して動き、互いにメッセージを送り、グループチャットで仕事を受け渡せる
- 実演で覚える:複数の手順を一度やって見せると、Botがその手順を「スキル」として保存し、スケジュールで繰り返せる
「リサーチ担当が情報を集め、ライター担当が下書きを書き、校閲担当が確認する」。こういう分業を、AIの側でやらせる発想です。公式ページには、営業向けのBotの例も載っています。夜のうちに見込み客を調べて、連絡先を点数付けして、メールの下書きまで作り、朝に確認用のリストを残す、という使い方です。
実際に使ってみた記事もあります。TECH+の記事は、調査担当のBotを作り、「毎朝、直近3日間の生成AI関連の論文を調べて、ビジネスパーソンが興味を持ちそうな3本をExcelに記録して」と頼んだ例です。作業中の画面は「Agent Computer」で見られて、ログインや権限の許可が必要になったときは人が操作を引き継げる、とのことです。
もう1点、全体の立ち位置も押さえておきます。同じTECH+の記事では、Similarwebの2026年8月のデータで、生成AIチャットボットのWeb訪問シェアは、ChatGPTが55.5%、Geminiが25.6%、Claudeが9.3%、Grokは2.4%で5位とされています。Grokは「Xの投稿を調べるAI」という印象で止まっている人も多いのですが、中身はもう統合型のAIサービスです。ここは意外と知られていないんです。
dotsとは?自分を覚えていく「専属の右腕」
次は、dotsです。
OpenAIは2026年9月29日(米国時間)にdotsを発表しました。動かしているモデルはGPT-6 Astra。公式発表では、dotは「専用のクラウドコンピューターを持ち、フィードバックから学び、目標に向けて24時間動ける」存在で、プラグインを通じて4,000以上のアプリにつながる、とされています。
つながる入口が広いのも特徴です。
- 話しかける場所が多い:ChatGPT(デスクトップ、Web、モバイル)、Slack、Microsoft Teams、音声通話から、同じdotに話せる
- 自分のPCにもつなげられる:許可すれば、手元のPCのファイルやアプリも使える(接続できるのは1台まで、という条件つき)
- 記憶がたまる:ChatGPTのメモリーと、dot自身のメモを使い、好みや「よい出来」の基準を学んでいく
- 会話は利用枠に数えられない:dotとのやり取りはChatGPTの利用上限に入らない。dotがCodexやChatGPT Workで動かす作業は、通常どおり利用枠を使う
提供対象は、ProとBusiness Premiumです。Enterpriseはベータ版で、管理者が有効にするまで使えません。Proは欧州経済領域、スイス、英国を除く地域が対象です。
dotsの考え方は、「社員を何人も雇う」というより「自分専属の秘書兼現場監督を1人つける」に近いんです。将来はdotを増やせるようにする、と公式は書いています。ただ現時点は、1人目が料金に含まれる形で、基本は1体運用です。
実際にGrok Botを1か月使ってみた
ここからは、私自身の体験です。
9月中旬から約1か月、Grok Botを「経営室」として使ってきました。秘書、参謀、経理、営業、マーケ、プロダクト、生成AIニュース、AI課金ウォッチャー、週次レポート、iPhone比較、動画制作。専門のBotを、10体以上並べています。Bot同士がメッセージで相談し、仕事を引き継ぎます。
秘書Botが、毎日の見張りを引き受けてくれる
中でも、毎日の見張りを任せているのが秘書Botです。常時のルーティンは、こんな内容です。
- MessengerとLINEの新着監視:朝7:24から夜21:54まで、30分おき。トークは開かず、既読を付けず、返信もしない。人からの新着だけ、要点を報告してもらう
- Google広告の日次監視:毎朝8:00に確認する
- SNS・動画の日次報告:毎日21:33にまとめて報告する
サーバーの重要通知の転送も、Botに任せています。Slackの非公開チャンネルに届く通知のうち、メモリ警告、証明書、メンテナンス、脆弱性などだけを判定し、私の名義で担当者にSlackのDMで転送します。1日に数件から10件ほど。お問い合わせの通知など、対象外のものは転送しません。
私的な見張りも頼んでいます。テスラのFSD日本開始の見張り(毎朝)と、テスラ公式ショップの在庫ウォッチ(1日3回。購入はしません)です。
放っておいても、毎日回る。これが、1か月使って感じた良さです。
SNS・動画の投稿も、毎日自動で回る
Xのニュース投稿(個人と公式)、Instagram(2アカウント)、YouTube Shorts、ゆっくり解説動画。この4本は、2026年10月13日から、Grok BotのクラウドPC上で毎日自動投稿しています。実は、この担当は一度引っ越しています。10月3日にMacの予約を止めてdots(OpenAI側のクラウド予約)へ移したものの、Shortsの停止やInstagramの再認証待ちなど、止まるものが出ました。そこで10月8日〜13日にかけて、Grok Botへ移し直した流れです(dots側の様子は後の節に書きます)。ゆっくり解説動画は、GCPのCloud Runでレンダリングして、1本あたり約1円です。
失敗談:2体のBotが、同じ仕事を持っていた
実際に起きた失敗も、書いておきます。
Bot2体が、同じ投稿ジョブを二重に持っていたんです。投稿に失敗すると、片方が同じ日に再実行していました。Bot同士で話し合ってもらい、10月17日に、投稿担当をGrok Botの1体に一本化しました。また、tweepyが入っていなくて投稿に失敗したこともあり、再実行を防ぐガードを追加しています。
そこで私が決めたのが、「失敗したら同日に再実行しない」「二重投稿しない」といったルールです。Botはこれを記憶して、守ってくれます。LINEの監視でも、私自身が送ったメッセージを新着と誤って報告したことがありました。この反省も記憶させて、改善しています。
- Botが増えると、役割が重なる:二重ジョブの失敗も、この一例
- ルールの設計は、人間の仕事:何を任せて、どこで止めるかは、自分で決めて伝える
外に出るものは、下書きカードで止める
メールや社外へのメッセージは、原則として下書きカードで出てきます。私が送信を押すまで、外には出ません。任せるのは下書きまで、送るのは人。この線を引いておくと、安心して任せられます。
Macのエージェントへの指示と、専用のメールアドレス
私のMacで動くCodexとClaude Codeにも、ターミナル経由で指示を出せます。実行のたびに、私の承認が必要です。この記事自体も、Grok BotからMacのClaude Codeを動かして作りました。
もう1つ、1アカウントにつき1つ、自分専用のメールアドレス(@mail.grokbot.com)を作れます。
1か月使って、良かった点と気になった点
- 放っておいても毎日回る:見張りも投稿も、私の手を離れて動く
- Bot同士で連携する:相談と引き継ぎを、Botがやってくれる
- 同じ失敗を繰り返さない:記憶して、決めたルールを守る
- Botが増えると、役割の重複が起きる:役割の分け方とルールは、人が整える必要がある
- ブラウザ操作は、遅く不安定なことがある:待たされたり、うまく進まなかったりする
- ルールの設計は、人間がやる:任せる範囲と止める場所を決めるのは、人の仕事
つまり、Grok Botは「AIの部署」として、確かに回ります。ただし、その部署を運営する部長の仕事は、人間に残ります。
6つの違いを表で整理する
ここまでの内容を、先に表にします。違いが分かりにくいと感じたら、この表だけ見てください。
| 観点 | Grok Bot | dots |
|---|---|---|
| 発表 | 2026年8月11日(ベータ版) | 2026年9月29日 |
| 基本の考え方 | 名前付きのBotを複数並べるAIチーム | 自分を覚える専属の右腕(現在は基本1体) |
| クラウドPC | アカウントに1台。全Botで共有 | dotごとに専用のクラウドPC |
| 話しかける場所 | 専用アプリ(Mac・Windows・Linux・iPhone・Android) | ChatGPT、Slack、Teams、音声通話 |
| 手順の覚え方 | 一度やって見せるとスキル化し、スケジュール実行できる | 会話とフィードバック、メモリーで好みを学ぶ |
| 料金の入口 | Cursor Pro月20ドル/SuperGrok月30ドルなど | Pro月100ドル/Business Premium月100〜125ドル |
それぞれの違いを、1つずつ掘り下げます。
違い1:チームで分業するか、右腕に集約するか
一番大きな違いは、「誰に何を任せるか」の考え方です。
Grok Botは分業です。市場調査Bot、企画立案Bot、営業Botを別々に作り、それぞれに役割と記憶を持たせます。人間は、Botのチャットに指示を出す側、つまり「小さなAI部署の部長」の役回りです。xAIの公式ページには、複数のBotを同じスレッドに入れると、Bot同士が仕事を渡し合う、という説明もあります。私の経営室でも、Bot同士が相談して仕事を引き継いでいます。ただ、Botが増えると役割の重複が起きるんです。私の場合は、2体が同じ投稿ジョブを持っていました。分業は、役割の分け方とルールを人が整えて、初めて回ります。
dotsは集約です。1体のdotが、調査も資料づくりもコードの作業も受け持ちます。仕事が増えたときは、dot自身が裏でCodexやChatGPT Workのタスクを立てて、分担させます。私の感覚では、dotsは「担当を持ち続けるChatGPT」、Grok Botは「AIの部署」です。
ASCII.jpの記事も、似た整理をしています。3つの常駐型エージェントの違いを、Meta「Muse」は個人の代理人、Grok BotはAIチーム、dotsは常駐型ChatGPTと表現していました。分かりやすい線引きだと思います。
違い2:クラウドPCを共有するか、dotごとに持つか
2つ目は、見落としやすいのですが、セキュリティの設計に直結する違いです。
Grok Botの公式ドキュメントは、はっきり書いています。「あなたのBotは、すべて同じクラウドPCを使う。ブラウザのCookieやログイン状態、ファイル、コマンドラインの認証情報は、全Botから見える」。そして、「Botを分けても、それはセキュリティの境界にはならない」とまで書いています。
これ、実はすごく大事なんです。「経理Botには経理のログインだけ渡して、営業Botには渡さない」という運用は、同じPCを共有している限り成り立ちません。別のBotが、経理Botの保存したファイルやログイン状態に触れられるからです。
- Botは分けても境界にならない:1台のPCの中身は全Botに見える。「このBotには見せたくない」ものは置かない
- ユーザー間は分離されている:公式は、別のユーザーとの間の分離は厳格だと説明している
- 削除しても残る:Botを消しても、共有PC上のファイルやブラウザのログイン状態は消えない
dotsは、dotごとに専用のクラウドPCです。ただし現時点では基本1体なので、「分けて隔離する」という使い方自体がまだ想定されていません。企業向けには、役割を限った「専門dot」の限定プレビューも始まっていて、各dotに固有のIDと認証情報を設定する、とMoney Forward社のAdmina記事が整理しています。
違い3:覚え方が「実演」か「積み重ね」か
3つ目は、仕事の教え方です。
Grok Botは、一度やって見せて覚えさせるのが売りです。公式は、複数の手順を一度案内すると、Botがその道筋をスキルとして保存し、スケジュールで再実行できる、と説明しています。毎週同じやり方でやっている「レポートを引っ張る」「トラッカーを更新する」「書き出したデータを整える」といった仕事に向いています。
私の経営室では、手順だけでなく、禁止事項も覚えさせました。「失敗したら同日に再実行しない」「二重投稿しない」といったルールは私が決め、Botが記憶して守る形です。
定期実行の仕組みは2種類。TECH+の記事によると、特定の役割を持つBotに仕事を続けて任せるなら「Routine」、ニュース収集のような独立した定期処理なら「自動化」を使うそうです。
dotsは、会話と記憶の積み重ねで、少しずつ分かってくる設計です。ChatGPTのメモリーと、dot自身のメモを使います。使うほど前置きの説明が減るのは、実際に使っていても感じるところ。一方、公式ヘルプによると、dot自身が保存した記憶を消すには「dotを削除する」しかありません。便利さと引き換えなので、記憶の扱いは慎重に見たほうがいいです。
違い4:入口の料金は、3〜5倍ちがう
4つ目は、お金の話です。ここは正直に、数字を並べます。
Grok Botは、単体では売られていません。公式ドキュメントによると、Cursorの有料個人プラン全部と、CursorのTeamsプランに含まれ、SuperGrokの個人契約をひも付けても使えます。公式サイトの掲載では、Cursor Proが月20ドル、SuperGrokが月30ドル、SuperGrok Plusが月100ドルです。ASCII.jpの記事によると、Cursor Pro+が60ドル、Ultraが200ドル、SuperGrok Heavyが300ドルです。利用枠は週ごとに更新され、超えた分はトークン費用に応じた追加料金になります。
dotsも、単体では売られていません。最初の1体は、ChatGPTのProかBusiness Premiumに追加料金なしで含まれます。ProはPro 100・Pro 200・Pro 500の3段階で、月100ドルから。Business Premiumは、年払いで1人あたり月100ドル、月払いで125ドルです。
1ドル158円で計算した目安を並べます。
| プラン | 月額(ドル) | 円の目安 |
|---|---|---|
| Cursor Pro(Grok Bot付き) | 20ドル | 約3,160円 |
| SuperGrok(Grok Bot付き) | 30ドル | 約4,740円 |
| ChatGPT Pro 100(dots付き) | 100ドル | 約15,800円 |
| ChatGPT Business Premium(dots付き・月払い) | 125ドル | 約19,750円 |
数字だけ見ると、入口はGrok Botのほうが安いです。ただし、ここに落とし穴があります。Grok Botの入口プランに含まれる利用枠は、そのまま「何をどれだけ任せられるか」を意味しません。公式は、週ごとの枠があり、超えた分は追加課金だと書いています。安いプランで複数のBotを並行して回すと、枠が先に尽きる可能性があります。ここは、自分の使い方で確かめるしかありません(要確認)。
dotsは、会話自体が利用枠に数えられない代わりに、入口が月100ドルからと高いです。個人で使い始めるには、ためらう価格だと思います。
違い5:安全設計は「どちらにもある」が、考え方が違う
5つ目は、安全面です。ここは、両方にきちんと仕組みがあります。そのうえで、考え方の違いが見えます。
Grok Botの公式ドキュメントが勧めるのは、「最小の権限から始める」ことです。必要なツールだけをつなぐ。読み取りだけの作業と下書きから始める。送信、公開、購入、削除、本番への変更は、承認の後ろに置く。この4点が柱です。自分のPC上でコマンドを実行する権限は別枠で、初期設定は「毎回確認」。特別な理由がなければ「許可しない」を選ぶよう、公式は案内しています。私の運用でも、メールや社外へのメッセージは原則として下書きカードで止めて、送信は私が押します。LINEとMessengerの監視も、返信はせず、報告だけです。
dotsは、「自動で動く範囲・承認が要る範囲・人が自分でやる範囲」を振り分ける設計です。OpenAIの発表によると、アカウントに影響する行動や情報を共有する行動の前に、「自動レビュー」が指示やカスタムルールと照らし合わせて確認してくれます。パスワードの変更のような繊細な作業は、常に人の手に残る仕様。そのうえで、カスタムルールを4段階から選べます。
- 聞かずに実行:頼まれた範囲で、確認なしに進める
- 指示されたときだけ実行:明示的に頼まれたときに限る
- 実行前に確認:送信や変更の直前で、人に聞く
- 人に任せる:dotは実行せず、人がやる
どちらも「人が引き継ぐ」入口を用意しています。Grok Botは、Agent Computerの画面から、ログインや二段階認証、CAPTCHAを人が代われる仕組み。dotsは「Take over」で、人が操作を代われます。
ここで、私が大事だと思っていることを書きます。「完了」と表示されても、成功とは限りません。 dotsの公式ヘルプは、「実行が終わったからといって、結果が相手に届いたとは限らない」という趣旨を説明しています。Grok Botも、成果物は「承認する下書き」として返ってくる設計です。どちらも、最後に人が結果を確かめる前提で作られています。
違い6:成熟度。両方とも、まだ育ち盛り
最後は、成熟度です。
Grok Botは、公式が「ベータ版」と位置づけています。発表から約2か月で、アプリの更新も頻繁です。Composioの解説も、SpaceXAIが公開しているのは実行モデルの説明までで、内部の仕組みのコードは未公開だと注意しています。実際に1か月使ってみても、ブラウザ操作が遅く、不安定になることがありました。
dotsは、発表から3週間足らずです。公式ヘルプには、「順次提供しており、アカウントに届くまで数日かかる場合がある」との記載も。Admina記事は、法人のワークスペースのデータは既定で学習に使われないものの、アプリ接続を解除しても、dotが取り込んだ文脈は残る点や、Enterpriseのモデル制御がdotsには適用されない点を、統制のポイントとして挙げています。
つまり、どちらを選んでも、「完成品を買う」より「一緒に育てる」感覚が要るんです。導入したら終わりとは考えず、最初の1か月は、毎週ログを見るくらいの覚悟があると、うまくいきます。
dotsを4日間使った私の体験:任せられたことと、止まったこと
ここで、dotsの実体験も少し書きます。詳しくは、以前の体験記にまとめています。
OpenAIの「dots」とは?4日間仕事を任せてわかった、できることと人の出番
2026年9月30日の朝9時3分に、ChatGPTを開くと、新しいdotが「Hey! I’m your dot.」と話しかけてきました。そこから10月3日までの4日間で、次のことが起きました。
- 定期投稿をMacからクラウドへ:Macで毎朝動かしていた、SNSとYouTubeの投稿予約6つを、すべてMac側で止めた。Instagram、X、YouTube Shortsはクラウド側の予約に移った
- ギャラリーサイトの公開:AIで作った動画や作品を並べたギャラリーサイトを、一般公開まで進めた。公開18作品
- 点検で見落としを発見:私が前日に組み込んだ仕組みを点検させたところ、候補スキルが53件しかなく、実際は217件登録されていたこと(164件の漏れ)を見つけてきた
一方で、止まったものもあります。YouTube Shortsは、音声の生成エラーで止まったまま。Instagramは、接続の期限が切れて、私の再認証待ちの状態です。横型の解説動画は、ライセンスの確認のために一時停止にしています。いずれも2026年10月3日時点の状況です。この投稿の担当は、その後10月8日〜13日にかけてGrok Botへ移り、10月13日からは4本ともGrok Botで回っています。10月17日には、投稿担当をGrok Botの1体に一本化しました。
ここで分かったのは、dotsは「全部を丸投げできるAI」ではないということです。ログイン、課金、公開してよいかの判断は、人の出番として残ります。反対に言えば、そこさえ人が押さえておけば、「毎朝の定型作業を、自分の手から外す」ことは、確かにできたと感じています。
Grok Botの1か月と並べると、使い心地の違いが見えてくるんです。dotsは、1人に任せた仕事が数日で動き出す手応えがありました。Grok Botは、10体以上が毎日回る手応えと、役割の重複という悩みの両方です。使った期間が違うので、単純には比べられません。それでも、「右腕は早く動き出し、チームは広がるほど設計が要る」という違いは、実感として残っています。
どっちを選ぶ?場面別の決め方
ここからが、この記事の本題です。「どちらが良いの?」に、場面別で答えます。
dotsが向いている人
- 一人社長・少人数の会社:自分の判断基準を覚えた右腕が1人いれば足りる
- ChatGPTやSlack、Teamsが仕事の中心:話しかける場所が、すでに日常の画面と同じ
- 担当を丸ごと任せたい:投稿の運用、定例の調査、サイトの更新など、続く仕事を1人に持たせたい
- 月100ドルを、人件費の一部と考えられる:入口の価格を払える
Grok Botが向いている人
- 役割を分けて並行したい:調査、下書き、営業リスト作りを別々のBotに持たせたい
- すでにCursorやSuperGrokを使っている:追加の契約なしで試せる可能性が高い
- 決まった手順の繰り返しが多い:一度やって見せて、スキルとして保存したい。私は、日次の監視や投稿を、ルールを決めてBotに任せている
- ベータ版の変化と、ルール設計に付き合える:Botが増えると役割が重なるので、役割の分け方とルールは人が整える
どちらもまだ早い人
次のような場合は、まだ急がなくていいと思います。
- 機密データをそのまま扱わせたい:顧客情報や財務データを、クラウド上のPCに置く前提で、社内ルールが決まっていない
- ルールが決まる前に、複数人で使い始める:誰がどの権限を渡したのか、後から追えなくなる
- 「全部任せれば何とかなる」と期待している:ログインや承認で、人の出番は残り続ける
どちらを選んでも、最初にやること
選んだ後の話も、短く書きます。ここが、成功と失敗を分けます。
1. 最初は「読み取り」と「下書き」だけ
つなぐアプリは、1つか2つに絞ります。メールなら、最初は「読む」と「下書きを作る」まで。送信は、人が押します。Grok Botの公式ドキュメントも、dotsの公式ヘルプも、同じ方向を勧めています。
2. 送信・公開・購入・削除は、承認の後ろに置く
「実行前に確認」を、最初から入れておきます。慣れてきたら、少しずつ緩めればいい。逆は、危ないです。
3. 認証情報は、渡す前に考える
Grok Botなら、共有PCに置いたログイン状態は、全Botが使えるものとして考えます。dotsなら、アプリの接続を解除しても取り込んだ文脈が残ることを、頭に入れておきます。
4. 毎週、ログを見る
Activityや実行履歴を、週に1回は確認します。「完了」という表示だけで安心しない。これだけで、事故の多くは防げます。
カンマンの見解:道具より先に「任せる範囲」を決める
私たちカンマンは、中小企業のAI活用と研修を支援しています。現場でよく見るのは、道具を選ぶ前に、任せる範囲が決まっていないケースです。
「AIエージェントを入れたい」と言われて、「何を任せたいですか?」と聞くと、答えが出てこない。これは、珍しくありません。だから私は、いつもこの順番で考えます。
- 1. 毎週やっている定型作業を、3つ書き出す:投稿、集計、問い合わせの一次対応など
- 2. その中で、間違えても取り返しがつくものを選ぶ:送信前に人が見られるもの、下書きで止められるもの
- 3. それを、1つのエージェントに1か月任せる:複数を同時に始めない
- 4. 結果を見て、チームにするか、右腕のままにするかを決める
最後の4が、今回のテーマに直結します。1つの仕事で手応えがあって、「別の仕事も別の担当に任せたい」と感じたら、Grok Bot型の分業が見えてきます。「同じ相手に、もっと任せたい」と感じたら、dots型の右腕が合っているはず。Grok Botを10体以上に増やして分かったのは、チームにするなら、役割の分け方とルールを決める作業が増える、ということです。任せてみた感覚で選ぶのが、一番失敗の少ない順番です。
ここで、よくある誤解も整理しておきます。
誤解1:「Grok Botは、Grokの新しいチャットのこと」
違います。Grok Botは、クラウド上のPCで仕事を進めるエージェントの製品です。Grokのチャットとは、別のアプリとして提供されています。
誤解2:「dotsは、ChatGPTの新機能の1つ」
半分正しく、半分違います。ChatGPTの中から話しかけられますが、dot専用のクラウドPCを持ち、会話の外でも動き続ける点で、通常のチャットとは仕事の単位が違います。
誤解3:「Botを分ければ、情報も分けられる」
Grok Botでは、成り立たないんです。同じクラウドPCを共有するので、公式も「Botを安全の境界にしてはいけない」と書いています。
よくある質問(FAQ)
Q1. どちらも無料で試せますか?
どちらも、無料のまま使える設計ではありません。Grok BotはCursorの有料プランかSuperGrokに含まれ、dotsはChatGPTのProかBusiness Premiumに含まれます。ただし、Grok Botは、一部の試用の枠が案内されている場合があります。最新の条件は、各公式ページで確認してください。
Q2. パソコンを閉じても、仕事は続きますか?
どちらも続きます。作業はクラウド側のPCで進むからです。Grok Botの公式ドキュメントには、アプリや端末を閉じても、バックグラウンドの作業や定期実行は止まらないとあります。dotsも、会話していない間は動き続ける設計です。
Q3. 非エンジニアでも使えますか?
どちらも、チャットで頼む形なので、プログラミングは要りません。ただし、アプリの接続や権限の設定、承認の判断は、人の仕事として残ります。ここは、研修や伴走で補うのが現実的です。
Q4. 日本語で使えますか?
私が試したdotsは、日本語で問題なく使えました。Grok Botについては、TECH+の記事で、日本語のプロンプトで調査のBotを動かした例が紹介されています。
Q5. 会社で使うとき、一番気をつけることは?
機密データの置き場所と、権限の渡し方です。クラウド上のPCに顧客情報や財務データを置いてよいか、先に社内で決めてください。決まらないうちは、機密を含まない仕事から始めるのが安全です。
まとめ:AIチームか、専属の右腕か
最後に、もう一度整理します。
- Grok Bot:役割を分けたAIチームを、1台のクラウドPCで動かす。実演で手順を覚えさせられる。入口は月20〜30ドルから。公式はベータ版。私の1か月では、毎日回る一方、Botが増えると役割が重なった
- dots:自分を覚えていく専属の右腕を、1体育てる。ChatGPTやSlack、Teamsから話しかけられる。入口は月100ドルから
- 共通の注意点:最初は読み取りと下書きから。送信・公開・購入・削除は承認の後ろ。毎週ログを見る
「どちらが良いの?」への、私の答えはこうです。どちらも使ってみた実感は、Grok Botは「回り始めると、放っておいても動く」、dotsは「1人に任せた仕事が、数日で動き出す」です。ただし、Grok Botは増やすほど役割の分け方とルールの整理が要り、dotsは止まったところで人の出番が来ます。
まだどちらも使っていないなら、いま使っているAIの延長にあるほうを、1つだけ、1か月試してください。ChatGPTが中心ならdots、Cursorが中心ならGrok Botです。どちらも、価格と仕様は、これからも動きます。
AIエージェントの導入で迷ったら、カンマンにご相談ください。「何を任せるか」の洗い出しから、権限の決め方、社内ルールづくり、研修まで、一緒に考えます。
AIに関する他のコラムは、AIカテゴリのコラム一覧から読めます。
参考・出典
この記事の情報は、2026年10月18日時点のものです。価格や仕様は変わる場合があります。最新の情報は、各公式ページで確認してください。Grok Botの体験談は、筆者の運用記録(2026年9月中旬〜10月18日)に基づきます。円の換算は、筆者が1ドル158円で計算した目安です。
- Grok Bot|SpaceXAI Docs(概要)(xAI公式)
- Approvals, security, and privacy|SpaceXAI Docs(xAI公式)
- ASCII.jp:ChatGPTが「業務委託先」に? 仕事を丸投げできるAIが続々登場
- TECH+:全部入りの統合AIサービスGrokの多彩な機能を一挙解説
- Composio:A Guide to Grok Bot
- Money Forward Admina:ChatGPT「dots」とは?常時稼働エージェントの料金・管理設定と情シスの統制ポイント
- Introducing dots|OpenAI(OpenAI公式。openai.com/index/introducing-dots)
- Getting started with your dot|OpenAI Help Center(OpenAI公式。help.openai.com の記事番号20001530)
- ChatGPT Business 概要|OpenAI Help Center(OpenAI公式。help.openai.com の記事番号8792828)
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代表取締役
貝出康
1963年徳島市生まれ。 1999年に楽天の三木谷社長の講演を聴き、イン ターネット時代の到来を悟る。翌年、ホームペ ージ制作会社カンマン設立に参画し、これまで のキャリアで培った営業や人事のスキルを活か しての顧客開拓や社内・労務管理を実践。2019 年〜代表取締役。








