生成AI詐欺・なりすまし対策2026
公開日:2026年01月05日

Webディレクター兼エンジニア
田中健介

中小企業にとって2026年の生成AIリスクで一番痛いのは「情報漏えい」より先に、送金・契約・アカウントが“なりすまし”で奪われることです。生成AIは詐欺の成功率を上げるというより、詐欺の量産と精度向上を同時に進めます。
この記事は「未来予測」ではなく、社長が今日から決められる運用ルールに落とします。
この記事の要点
- “生成AIなりすまし”は、見抜くより手続きで無効化するのが正解
- 被害の中心は「緊急」「権威」「別チャネル移動」「送金先変更」
- 対策は3層(人・プロセス・技術)。特にプロセスが効く
2026年に増える「生成AI詐欺」の典型パターン

パターン1:社長・役員の音声なりすまし(CEO詐欺の強化版)
短い音声サンプルから声を合成し、「今すぐ振り込め」「外部に漏らすな」といった指示を作れます。社長視点の怖さは「声が本人っぽい」ことよりも、社内の送金手続きが“口頭の一言”で動く会社が狙われる点です。
パターン2:ビデオ通話で“公的機関”を装う(なりすまし+心理圧迫)
ビデオ通話で取調べを装い、金銭要求や脅迫に至る手口が問題になっています。生成AIの顔合成・字幕・偽書類が乗ると、現場はさらに判断が遅れます。
パターン3:取引先・士業になりすます「送金先変更メール」(BEC)
ビジネスメール詐欺(BEC)は昔からありますが、生成AIで「日本語の精度」「文体の寄せ」「業界用語」「過去メールっぽさ」が上がります。請求書PDFの口座欄だけを見て処理する会社ほど危険です。
パターン4:本人確認(KYC)突破の“偽身分証・偽顔”
金融領域では本人確認や認証を回避する目的で、偽造身分証・画像・動画が使われ得ます。中小企業でも、法人口座・カード・EC・決済、採用(本人確認)などで同型の問題が起きます。
パターン5:仮想誘拐(“証拠画像”でパニックを作る)
SNS等の写真を改変して“生存証明”のように見せ、身代金を要求する手口があります。特徴は「今すぐ払え」「分析する時間を与えない」。会社でも「社員が拘束された」「現場で事故」など、同じ“緊急演出”が起きます。
見抜こうとするほど負ける理由
結論から言うと、ディープフェイク検知を現場の判断に期待するのは危険です。検知は重要ですが、経理・総務が毎回“鑑定士”になるのは現実的ではありません。
だからこそ、個人の勘ではなく、組織の手続き(プロセス)で潰すべきです。
中小企業が持つべき「生成AI詐欺に強いルール」10個

ここからが本題です。社内ルールは難しくしません。送金・アカウント・契約の3領域だけ固めます。
1)送金は「二経路確認」を必須にする
社長の電話・チャットだけで送金しない。必ず以下をセットにします。
- 送金依頼の受領チャネルとは別チャネルで確認(例:メールで来たら電話で確認)
- “いつもの番号”へコールバック(相手が提示した番号にかけない)
2)口座変更は「確認完了まで凍結」
取引先の口座変更は、変更通知が来ても即反映しない。
- 登録済みの連絡先に折り返し
- 請求書PDFの口座欄だけで判断しない(改ざんが早い)
3)「緊急」「秘密」「今すぐ」は全部フラグ
詐欺は時間を奪って判断力を落とします。緊急を名乗る依頼ほど一段階承認を増やす、と決めておくのが安全です。
4)役員の依頼でも“例外なし”を宣言する
社長が最初に宣言すべきことはこれです。
- 「私の指示でも、手続きを飛ばすな」
これがない会社は、現場が“社長の機嫌”を優先し、詐欺が通ります。
5)合言葉(コードワード)を「社内用」に作る
送金や緊急指示の確認に使える短い合言葉を用意します。
- 定期変更する
- 共有範囲は最小にする(必要な人だけ)
6)“別アプリへ移動”要求は原則拒否
仕事の依頼で「こっちのアプリで話そう」「このリンクで確認して」は原則拒否し、既知の連絡経路で再確認します。
7)社外からの請求・見積は「発行元の真正性」から見る
最低限の整備は効きます。
- メール認証(SPF/DKIM/DMARC)の整備
- 取引先の請求書送付ドメインを事前に確認しておく
※IT担当がいない会社ほど、外部の支援会社に任せる方が事故が減ります。
8)本人確認が必要な手続きは、動画・音声だけで決めない
採用、口座、支払い、重要システムの権限付与などは、複数要素(書類+対面、既存番号への折返し等)に寄せます。
9)事故が起きた時の「初動」を1枚にする
被害を拡大させないために、最低限これだけ決めます。
- 送金済みなら即時に銀行・決済・取引先へ連絡(取り戻せる時間が短い)
- メール・チャット・通話履歴・請求書PDFを保全(削除しない)
- 社内の報告窓口を一本化(現場がバラバラに動かない)
10)年2回、5分のロールプレイを回す
大掛かりにせず、次の2本だけで十分です。
- 「社長を名乗る緊急送金」シナリオ
- 「取引先の口座変更」シナリオ
生成AI詐欺を前提にした社内フロー例
緊急送金が来た時の手順
- 依頼内容をテキスト化(誰が、いくら、いつまで、振込先)
- 依頼チャネルとは別チャネルで、登録済み連絡先にコールバック
- 合言葉確認(失敗なら中止)
- 金額しきい値で承認追加(例:10万円以上は2名承認)
- 実行前に送金先口座名義を再確認
- 記録を残す(後で揉めるのはここ)
口座変更メールが来た時の手順
- 変更依頼は即反映しない(最低でも当日処理禁止)
- 既知の番号で確認、変更理由と発行書類の整合性を確認
- 次回の少額テスト送金(可能なら)
- 取引先マスタ更新は1名が行い、別の1名がレビュー
どこまでやれば十分か(現実的な落とし所)
結論は、「検知」より「プロセス固定」です。中小企業がまず守るべきは次の3点だけでも効果が大きいです。
- 送金の二経路確認(コールバック)
- 口座変更の凍結+登録先確認
- 合言葉(社内版)
この3点は、AI音声・AI動画・文章の巧さに関係なく、詐欺を成立しにくくできます。
まとめ:2026は「なりすまし前提」で経営を守る

生成AIが絡む詐欺は、今後「人の弱点(緊急・権威・恐怖)」を突く方向に伸びます。社長がやるべきことは「見抜けるか」ではなく、見抜けなくても被害が起きない手続きを作ることです。
もし「うちは口頭で送金が動く」「口座変更がメールだけで通る」と感じたら、まずは現状フローの棚卸しから着手してください。
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Webディレクター兼エンジニア
田中健介
2023年に株式会社カンマンへ入社。
フロントエンジニアとしてサイト構築に携わった後、Webディレクターとして様々な案件に携わる。
また、専門学校の非常勤講師としても活動。










