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AIが自社仕様になる時代がきた。Skillsという仕組みの話

貝出康

代表取締役

貝出康

最近、AI界隈でSkillsという言葉をやたらと見かけるようになった。

Xのタイムラインを眺めていると、エンジニアたちがSkillsすごい、Skills作った、Skillsで業務が変わったと盛り上がっている。でも正直なところ、で、それって何なの、という人のほうがずっと多いと思う。

僕自身、徳島で中小企業の経営者さんと話す機会がけっこうあるんだけど、ChatGPTは触ったことがあってもClaudeすら知らない方がまだまだいる。ましてやSkillsなんて、という状態だ。

ただ、これ、中小企業こそ恩恵を受ける仕組みなんですよね。

今日はそのあたりを、なるべく噛み砕いて書いてみる。技術的な話は最小限にして、で、うちの会社にどう関係あるの、というところに絞ります。

Skillsって何か

ものすごくざっくり言うと、AIへの仕事の教え方をファイルにまとめたもの。

たとえば、あなたの会社に新人が入ってきたとする。頭はめちゃくちゃいい。でも、あなたの会社の業務は何も知らない。

そこで、マニュアルを渡しますよね。うちの見積書はこのフォーマットで作って。お客様への報告書はこの順番で書いて。請求書の計算はこのルールで。

Skillsは、それのAI版だ。

AIに渡す業務マニュアルをフォルダにまとめて置いておく。するとAIは必要なときにそのマニュアルを読んで、あなたの会社のやり方に合わせて仕事してくれる。毎回うちはこういうフォーマットでねと説明し直す必要がなくなる。

技術的に言えば、SKILL.mdというファイルにAIへの指示を書いて、テンプレートや参考資料を同じフォルダに入れておく。それだけの仕組みだ。

もう一つ、よくできてるなと思うのが読み込みの仕組み。AIは全部のSkillsを常に読んでいるわけじゃない。普段はSkillsの名前と説明文だけを把握していて、ユーザーの依頼に関係ありそうなものだけを、そのとき読み込む。Anthropicはこれをプログレッシブ・ディスクロージャーと呼んでいる。

つまり、Skillsを100個入れても200個入れても、処理が遅くなったりはしない。必要なものだけ、必要なときに、自動で選んで使ってくれる。部署ごとにどんどん増やしていっても問題ない。営業部用、経理部用、製造部用と分けて作っておけば、それぞれの担当者がAIに話しかけたとき、その人の仕事に関係するSkillsだけが呼び出される。

なぜ今、話題なのか

Skillsという機能自体は、2025年10月にAnthropic社がリリースした。Claudeを作っているAIスタートアップだ。数ヶ月前の話になる。

でも爆発的に注目されたのは2025年12月。

何が起きたか。AnthropicがSkillsの仕様をオープンスタンダードとして公開した。agentskills.ioというサイトで、誰でも仕様を読めるようにした。

これがなぜ大きいかというと、Claude専用の機能じゃなくなったからだ。

OpenAIのCodex、GitHubのCopilot、Cursor、VS Code。主要なAIツールが次々とこの規格に対応した。一度作ったSkillsが、どのAIツールでもそのまま動く。MCPというAIのツール接続規格がオープン化されて業界標準になった流れと、まったく同じパターンだ。

Anthropicは囲い込みをしない。自社だけが得をする機能ではなく、業界全体で使える共通インフラを作る。MCPに続いてSkillsでも同じ戦略を打った。結果として、2026年2月の時点で、Skillsのマーケットプレイスには7万以上が登録されている。半年足らずでこの数字だ。

MCPを知らない方のために書いておくと、MCPはAIが外部のツールやサービスとつながるための規格だ。AIがSlackのメッセージを読んだり、Googleカレンダーに予定を入れたりできるようにするもの。これもAnthropicが作ってオープン化し、今やAI業界のデファクトスタンダードになっている。

MCPがAIの手足を増やす仕組みだとすれば、SkillsはAIの頭の中に専門知識を入れる仕組み。役割が違う。二つを組み合わせると、AIは外部サービスと連携しつつ、あなたの会社のやり方で仕事をしてくれるようになる。たとえばMCPでGoogleスプレッドシートに接続し、Skillsで自社の集計ルールに従って処理する。そんな使い方ができる。

地方の中小企業に関係する話

ここからが、僕が一番書きたかったところだ。

徳島に限った話じゃないけど、地方の中小企業にはAIを導入したけど使いこなせていないという悩みがすごく多い。

ChatGPTを契約した。社員に使っていいよと言った。でも使っているのは一部の人だけ。その人たちも、ちょっとした文章の下書きに使うくらいで止まっている。

これ、AIの能力が足りないわけじゃない。会社固有の文脈をAIに伝える手段がなかった。ただそれだけのことだ。

考えてみてほしい。どんなに優秀な汎用AIでも、あなたの会社の見積書のフォーマットは知らない。お客様への報告書でどんな言い回しを使うか、知らない。月次の売上レポートでどの数字をどう集計するか、知らない。

だから毎回、長いプロンプトで一から説明するか、出てきたものを手直しするか、結局自分でやるか。三択になる。毎回同じ説明をコピペするのも面倒だ。こうなるとAIを使ったほうが逆に手間、みたいな本末転倒に陥る。AIを契約したのに使われていない、というのはだいたいこのパターンだと思う。

Skillsは、会社固有の文脈を一度ファイルに書いておけば自動で適用される。これだけのことなんだけど、現場では大きく効く。

たとえばこういう場面で使える。

月末の営業日報。これまで30分かけてExcelに数字を打ち込んで、体裁を整えて、上長に送っていた。Skillsを設定しておけば、今月の営業日報を作ってと一言言うだけで、CSVから数字を引っ張って、いつものフォーマットで、送れる状態のファイルが出てくる。

建設会社なら見積書。このフォーマット、この計算方法、この言い回し。一度設定すれば、案件名と数量を伝えるだけで見積書ができあがる。

税理士事務所なら月次報告書。決算データを読み込ませれば、いつもの体裁、いつもの分析観点で、下書きが出てくる。

旅館業なら予約確認メール。お客様の名前と日程を入れるだけで、季節に合わせた挨拶文とチェックイン案内を含んだメールの下書きが出る。

食品製造業なら原材料表示ラベル。食品表示法のルールに沿ったフォーマットで、成分と含有量を入力すれば正しい表記のラベルデータが出力される。

一度作れば、ずっと使い回せる。新しく入った社員にもそのまま適用できる。そしてプログラミングの知識がなくても作れる。ここが大事なので、もう少し掘り下げる。

プログラミング不要で作れる

SKILL.mdとかフォルダ構造とか、それってエンジニアの仕事でしょ。そう思うのは自然だ。その気持ちはわかる。

でも実は、Skillsを作るためのSkillsが存在する。skill-creatorという名前で、Claudeに標準搭載されている。

Claudeにうちの見積書作成を手伝うSkillsを作ってと頼めば、対話しながら作ってくれる。どんな項目が必要ですか、計算のルールはどうなっていますか、とClaudeが聞いてくるので、それに答えていくだけでSkillsのファイルが完成する。

もちろん、自社の業務を一番よく知っているのは自分たちだ。どんな項目があるか、どう計算しているか、どんな言い回しを使うか。そういう情報は伝える必要がある。でも、それをSKILL.mdの形式に整えるのはClaude側がやってくれる。

情シスの方がいればその方が窓口になるのが理想だけど、専任がいなくても、ちょっとパソコンに詳しい人なら十分に作れるレベルだ。

Skillsの中身は日本語で書ける。見積書を作成するときは以下のフォーマットに従う。金額は税抜きで計算し消費税は10%で加算する。備考欄には納期と支払条件を必ず記載する。こんな感じだ。コードを書く必要はない。日本語で業務のやり方を説明するだけでいい。

属人化の解消

中小企業の経営者とAIの話をすると、効率化とかコスト削減の方向に行きがちだ。それも大事なんだけど、僕はSkillsの一番の価値は属人化の解消だと思っている。

徳島でも全国でも、中小企業にはあの人がいないと回らないという業務がたくさんある。

経理の山田さんが休むと月末処理が止まる。営業の田中さんしか知らない取引先対応がある。製造の佐藤さんの頭にしかない品質チェック基準がある。

いわゆる暗黙知だ。本来はマニュアル化すべきだけど、忙しくてできない。マニュアルを作る時間があったら目の前の仕事を片付けたい。そうやって先送りしているうちに、その人が辞めたら大混乱になるリスクだけが膨らんでいく。

Skillsは、この暗黙知をAIが使える形で記録する。

山田さんの月末処理をSkillsにする。田中さんの取引先対応ノウハウをSkillsにする。佐藤さんの品質チェック基準をSkillsにする。

AIがそのやり方を再現できるだけじゃなく、Skillsのファイル自体が生きたマニュアルになる。新人が入ってきたときの教育資料にもなるし、引き継ぎも楽になる。マニュアルを作ること自体が面倒だったのに、AIに仕事を教えるついでにマニュアルができてしまう。一石二鳥だ。

Skillsはファイルベースだから、Gitで変更履歴を追える。去年の4月時点ではどういうやり方だったかが全部残る。

ISO認証を取得している企業には特に刺さる話だと思う。業務手順の文書化と変更管理が、Skillsを整備するだけで自然とできてしまう。ISOの審査でうちの業務手順はどこに記録されていますかと聞かれたら、Skillsのフォルダを見せればいい。

ベンダーロックインしない

先ほど触れたとおり、Skillsはオープンスタンダードだ。

今Claudeで使っているSkillsを、将来ChatGPTに乗り換えたくなったとしても、そのまま持っていける。

中小企業がITツールを入れるとき一番怖いのは、このサービスが終わったらどうなるか、値上げされたら困る、もっといいものが出たとき乗り換えられるか、ということだろう。

Skillsはファイルの集まりでしかない。特定のサービスに依存しない。Claude、OpenAI Codex、GitHub Copilot、Cursor、対応ツールなら何でも使える。業務ノウハウが特定のベンダーに人質にとられない。

これまでの業務システムでありがちだった、乗り換えたいけど移行コストが大きすぎて動けない、という問題が起きない。Skillsはテキストファイルだから、コピーするだけで済む。経営判断として、ここは大きい。

今のところ対応AIツールの多くは開発者向けだけど、Claudeのデスクトップアプリにあるcoworkモードなら開発者でなくても直接Skillsを使える。パソコンのフォルダを選ぶだけでAIがファイルを読み書きしてくれる機能で、Skillsとの相性がいい。非エンジニア向けツールの対応は今後増えていくだろう。

何から始めるか

明日から何をすればいいか。

まずClaudeを使ったことがなければ、claude.aiでアカウントを作る。無料でも基本機能は使える。Proプランに入れば月額20ドルでSkillsをフルに使える。日本円だと3,000円くらい。

次に、自社の業務で毎回同じことを説明しているものを一つ選ぶ。

この書類は毎月このフォーマットで作っている。お客様への返信はいつもこんな感じで書いている。この集計作業は毎回同じ手順でやっている。そういうものがSkills化の第一候補だ。

Claudeにこの業務をSkillsにしたいんだけどと相談してみてほしい。skill-creatorが対話しながらファイルを作ってくれる。

最初から完璧なものを作ろうとしなくていい。使いながら直せばいい。ただのテキストファイルだから、いつでも書き換えられる。ここが金額の大きなシステム導入と根本的に違うところだ。試して、調整して、また試す。そのサイクルを気軽に回せる。

他社が作ったSkillsも使える

自前で作るだけでなく、すでに多くの企業がSkillsを公開している。

Anthropicの公式ディレクトリには、Atlassian、Canva、Cloudflare、Figma、Notion、Sentry、Stripeなどが連携用のSkillsを出している。

Canvaのskillsを使えば、この内容でプレゼン資料を作ってと頼むだけでCanvaのテンプレートから資料ができる。Notionと連携すれば、社内ナレッジベースをAIが参照しながら仕事する。

コミュニティが作った汎用Skillsも大量にある。議事録作成、データ分析、ドキュメント翻訳、メール文面の作成。業種を問わず使えるものが揃っている。全部を自分で作る必要はない。すでにあるものを拾ってきて、自社に合わない部分だけ手直しする。それでも十分に機能する。

SkillsMP.comという独立系のマーケットプレイスもあって、GitHubに公開されているSkillsを一覧検索できる。accountingで検索すれば経理系が出てくるし、marketingならマーケティング系が見つかる。誰かが作ったものを自社向けに少し手直しするだけでも十分使える。

情シス担当の方へ

会社の情シス担当として読んでいるなら、Skillsは社内AI活用を標準化するための有力な手段だ。

今、多くの会社で起きているのは、社員がバラバラにAIを使っている状態。ある人はChatGPT、ある人はClaude、ある人はGemini。プロンプトの書き方も人それぞれ。出力の品質が安定しない。

Skillsを入れれば、業務ごとにAIの使い方を揃えられる。見積作成にはこのSkillsを使う、報告書にはこれを使うと決めてしまえば、誰がやっても同じ品質で出てくる。プロンプトの書き方を個人に任せている限り、品質のばらつきは避けられない。Skillsはそこを仕組みで解決する。

Enterprise版なら管理者が組織全体でどのSkillsを有効にするか一元管理できる。Team版でもプロジェクトの.claude/skills/フォルダにSkillsを入れてリポジトリで共有すれば、全員が同じ環境になる。

セキュリティ面も触れておく。Skillsはローカルのファイルだ。中身はAIへの指示書であって、顧客データや機密情報を入れるものではない。APIキーなどの認証情報はSkillsに直接書かず環境変数を使う。外部からダウンロードしたSkillsは、スクリプトが含まれていないか確認してから使う。基本的な対策はそれくらいだ。

Enterprise版では管理者が組織内で使えるSkillsを管理できるので、勝手に変なSkillsが入る心配も抑えられる。社内のAI利用ポリシーとの整合がとりやすい設計になっている。

2026年、この先どうなるか

Skillsはファイルベースのマニュアルにとどまらず、AIエージェントの能力モジュールとして進化しつつある。

2026年1月のアップデートで、Skillsをサブエージェントとして実行できるようになった。一つのタスクを複数の専門AIが分担して並列処理する、ということだ。

月次レポートを頼んだときに、売上集計を担当するSkills、競合分析を担当するSkills、グラフ作成を担当するSkillsが同時に動いて、最後に一つのレポートにまとまる。一人の社員に頼んだら半日かかるような仕事が数分で終わる。そんなことが実際に可能になりつつある。

Gartnerは2026年までに企業の80%が何らかの形で生成AIをソフトウェアエンジニアリングに使うと予測している。やるかやらないかの段階はもう過ぎた。どう使いこなすか、だ。

地方の中小企業だからといって乗り遅れる理由はない。むしろ人手不足が深刻な地方だからこそ、AIを自社仕様にカスタマイズして使い倒す価値は高い。

徳島は人口減少が全国でも特に進んでいる県の一つだ。採用が難しい。人が辞めたら補充できない。その現実に多くの経営者が直面している。だからこそ、一人ひとりの生産性を底上げするSkillsみたいな仕組みが生きてくる。

Skillsはそのための、現時点で最も実用的な手段だと僕は思う。大がかりなシステム投資じゃない。テキストファイルに業務のやり方を書くだけ。それだけで、AIが自社のやり方を覚えてくれる。

料金

気になる人も多いだろうから、料金の話もしておく。

Skills自体に追加費用はかからない。ClaudeのProプランで月額20ドル。日本円で約3,000円だ。これに入っていればSkillsは使える。Maxプランなら月額100ドルか200ドルで、さらに多くのSkillsを同時に使える。

API経由の場合は通常のAPI料金がかかるけど、Skills自体の上乗せはない。Skillsの数に応じた課金もない。

Team版は一人あたり月額30ドル、Enterprise版は要問い合わせ。中小企業ならまずProプランで始めて、社内で広げるタイミングでTeam版を検討するのが現実的だろう。一人月3,000円で業務効率が上がるなら、投資対効果としてはかなり高い。

おわりに

AIに自社のやり方を覚えさせる仕組み、それがSkills。ファイルにまとめて置くだけで、AIが必要なときに自動で読み込む。プログラミング不要。オープンスタンダードだから特定のサービスに縛られない。

華やかな話じゃないかもしれない。AIが絵を描いたとか動画を作ったとか、そういう派手さはない。でも仕事の現場で地味に効くのは、こういう仕組みだったりする。

自社で一番繰り返している作業を一つ、Skillsにしてみてほしい。最初の一つがうまくいけば、次はあれもSkillsにできるんじゃないか、と社内で広がっていく。それだけでAIってこう使うのかという感覚がつかめるはずだ。

Anthropicの公式ドキュメントは日本語にも対応している。code.claude.com/docs/ja/skillsにアクセスすれば、作り方が日本語で読める。英語が苦手でも大丈夫だ。

徳島でうちもやってみたいけど最初の一歩がわからない、という方がいたら、地域のIT勉強会やビジネスコミュニティを覗いてみるのも手だ。Skillsの概念はシンプルなので、一度誰かに見せてもらえばあ、こういうことかとすぐわかる。

難しいことは何もない。自社の仕事のやり方をテキストに書いてAIに渡す。それだけだ。でも、それだけのことが仕事の回し方を変える。騙されたと思って、一つ試してみてほしい。


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貝出康

代表取締役

貝出康

1963年徳島市生まれ。 1999年に楽天の三木谷社長の講演を聴き、イン ターネット時代の到来を悟る。翌年、ホームペ ージ制作会社カンマン設立に参画し、これまで のキャリアで培った営業や人事のスキルを活か しての顧客開拓や社内・労務管理を実践。2019 年〜代表取締役。